第十五章「ライオンさんの最期」
・・・。
目を開けたが何も見えない。
それとも目を開けたと錯覚しているだけで実は開けれてないのか?
どちらにしても現状としては何も見えない。
「美奈ちゃーん、どこー?」
要の声が聞こえる。
「何にも見えないよー」
見えないのは俺だけじゃないらしい。
ということは単純に暗いだけか・・・?
にしては目が慣れるのが遅い。
「ミント、いるー?」
「要?」
「照らしてー!」
「了解」
ふいに辺りが明るくなった。
要とミントが視界に入る。
「あ、美奈ちゃん」
「要」
「どこだろう・・・。ココ」
「さあな」
「夢幻世界の中でもかなり辺鄙な世界に来たようだな」
「ベルゼブ、何かわかるか?」
「いや」
俺のパートナーはどこで役に立つんだ?
ミント然りオーガ然り、パートナーは何かしら特異な能力があるハズなんだが・・・。
このベルゼブだけは一度も特別なところを見せたことがない。
小さいだけか?
とりあえず辺りを見回してみる。
ミントの光のおかげで一応は見える。
「なんだこりゃ・・・」
墓石?
西洋風の墓。
「誰のだ・・・?」
Mina
「あーミナって人ね。はいはい」
うん、どっかで聞いたことあるぞ。
「俺じゃん!?」
「どしたの美奈ちゃん?」
「何か俺の墓があるんだよ。きっと俺は死んだんだ」
「ホントに!?」
「夢幻世界は・・・死後の世界だったんだよ・・・」
「な、何だってー!?」
ぺチン!
頬を軽くベルゼブに叩かれる。
「ふざけている場合か?」
「すまん、でも要も一緒にやってたぜ?」
「それは関係なかろう」
正論っちゃ正論だな。
「あ、美奈ちゃーん!あたしのもあるよー!」
見ればその墓にはKanameと書いてある。
「お前も死んだのか・・・」
「そうみたいだねー」
何で気楽なんだお前。
「冗談はさておき・・・」
「うむ」
「ベルゼブ、何かいるよな?」
「そうだな」
横でベルゼブがうなずく。
「アレ見て!」
ミントの指差す方向を見ればオーガがいた。
「出やがったな化け物野郎・・・」
「ライオンさん久しぶりー」
まだ言ってたのか・・・。
「要、ライオンさんは何でココにいるんだ?」
「きっと動物園なんだよココ」
暗すぎだぞココの動物園。
墓とか趣味悪いしな。
ライオンさんに食われた人の墓か?
いや、それだと俺はライオンさんに食われたことに・・・
ってめんどくせえ!
関係ないしな。
「オオオオオッ!」
「ライオンさんは敵意むき出しだぞ、要」
「こないだの続きだよ」
なるほどな。
「いるんだろ?」
俺がそう言うとオーガの後ろからあの男が現れた。
「来たな、美奈」
「来たくはなかったけどな」
パチン!
男が指をならすと辺りが少し明るくなる。
月が出たらしい。
まわりは墓石だらけだった。
趣味悪いなホント。
「ココは俺の世界だ。貴様らのために作ってやった墓は気に入ってくれたか?」
「最高だぜ。無駄なのに作ってるお前が最高に笑える。自分のは作っておいたか?」
「それこそ無駄なことだ」
「かもな。お前は墓にいれてやる価値もねえ」
「口の減らない奴だ」
「お前もな」
既に俺の手には刀が握られている。
「そろそろ名前教えてくれないか?今から消える奴でも名前ぐらいは知っときたいしな」
「俺に名前はない。貴様らを殺すためだけにこの世界に生まれたんだからな」
「何・・・?」
今コイツ何て言った?
俺達を殺すために生まれた・・・?
「どういうことだ?」
「俺を倒せたら教えてやるよ」
「そりゃ助かるぜ。絶対に教えてもらえるじゃねーか」
「行くぞ要」
「うん」
俺が言うと要は大剣を出現させた。
「二対一でも結果は同じだ」
「そうだな。俺達の勝ちって結果は変わらねえ」
「殺せ、オーガ」
「オオオオオッ!」
ドォンッ!
オーガは棍棒を縦に振り下ろした。
「おっと」
俺と要は左右に避けると俺は右から、要は左からオーガに斬りかかった。
「足に気をつけろよッ!」
「うんッ!」
蹴りをいれようとしてくることはわかってる。
ただし、どちらかにだけな。
確実に片方の足は攻撃できる。
立てなきゃコイツはただの雑魚だ。
知能も低そうだしな。
「オオッ!」
右足が上がる。
糞、やっぱ俺か。
「要ッ!」
「任せてッ!」
ザンッ!
「オッ!?」
オーガの左足が音を立てて切断される。
切れ味良いじゃねえか。
切断面から血が飛び散り、返り血が要の服を汚す。
ドゴォンッ!
「何ッ!?」
オーガがその場に倒れる。
すかさず俺はその巨体に上った。
「あばよ、ライオンさん!」
ザクッ!
勢い良く刀をオーガの心臓部に突き立てた。
「オオオオオオオオオオオオオッ!!」
オーガは最後に雄叫びを上げ、息絶えた。
と思う。
どっちにしろしばらくは動けないだろ。
「次はてめえの番だ。名無し野郎」
続く