第十四章「過去と疑念」
いつも一緒
いつまでも一緒
そう思ってたのは私だけ?
別れは突然
あまりにも唐突過ぎて
時間は残酷
どんなに大切なコトも忘れさせる
私のことも
美奈
「ん・・・」
視界はぼやけている。
授業中に寝てしまい、チャイムで起きたような感覚。
「美奈ちゃーん。着いたよー」
要の声が聞こえる。
目を開くとそこは見覚えのある公園だった。
「どっかで見たような・・・・」
「どしたの?」
要が俺の顔を覗き込む。
俺はとりあえず立ち上がると適当なベンチに座った。
「この公園、どこかで見た気がするんだ」
「ふーん」
「ってか元の世界じゃ毎日見てた気がする」
そうそう通学路で。
って
「ココ俺ん家の近くじゃん」
「え!?ホントに!?」
「ああ、ホントだ」
「ふむ。興味深いな」
俺はあたりを見渡した。
確かにココは俺が住んでいる団地の公園。
昔はココでよく遊んでたなぁ・・・。
「ココでじっとしてても仕方ないし、どっか行かない?」
「それもそうだな」
ミントの提案でとりあえず公園を後にした。
とは言ってもどこに行くんだ・・・?
俺ん家か?
「美奈ちゃんの家とか行ってみたいなー」
「却下だ」
「えー」
「何が起こるかわかんないだろ」
勿論言い訳。
「確かに間違ってはおらぬが・・・」
「何だよ?」
「私も興味がある」
ベルゼブもかよ。
俺ん家の近くとは言っても微妙に違う。
公園の前に家があったハズなのだが・・・。
空き地になっている。
所々空き地が増えてるな・・・。
「増えているというより・・・」
空き地に戻ってるって感じだ。
元々空き地多かったしな。
ある時期を境に家が増えたんだが・・・。
ブブブブブブブブ・・・・
妙な音が聞こえる。
虫が飛ぶような・・・そんな音だった。
「ねえ、アレ見て!」
要が指差したのは俺の頭上だった。
見上げるとこれまた妙な生物?が飛んでいる。
タコ。
凧ではなく、タコ。
海にいるヌメヌメしたアイツだ。
しかもその頭にはタ○コプターがついている。
だから飛んでるのかー。
って何を納得してるんだ俺は。
「何だコイツ・・・」
俺の手に刀が握られる。
そして妙なタコに向かって構えた。
危険そうには見えないが・・・。
「美奈ちゃん、その子多分安全だよ?」
「俺もそんな気はするが・・・」
ミントがタコの足を引っ張る。
・・・・。
タコはまったく気にしていない様子だった。
何か、間の抜けた顔だなコイツ。
リアルなタコじゃなくて、小学生の落書きみたいなタコだ。
そういえば俺も昔こんな落書きしたなぁ・・・。
「安全だよ。コイツ」
ミントがそう言うなら大丈夫だろう。
俺は刀を収めた。
というか消した。
どうもこの表現難しいな。
消したというか収めたというか・・・。
まあいいや。
「何かかわいいね」
「まあな」
自然と笑みがこぼれる。
「あ、笑った」
「それがどうしたよ?」
「何か美奈ちゃん、あんまり笑わないから」
そういえばこの世界に来てからは余裕がなくて笑うことも少なかったな・・・。
「笑うとかわいいんだから」
「なッ・・・!馬鹿!何言い出すんだよ!」
「ホントのことだもん」
そう・・・なのか?
「まあいつもの間抜け面も笑えるけどねー」
「なんだとッ!」
茶化すミントを追いかける俺。
何かこういう時間、久々な気がする。
「んじゃそういうことで!美奈ちゃんの家へしゅっぱーつ!」
「「おー!」」
ベルゼブまで声合わせてんじゃねえ!
「ま、良いか・・・」
俺は家まで案内してやることにした。
ま、大した距離じゃないけどな。
「アレが美奈ちゃんの家?」
要が指差す方向には俺の家があった。
「ああ」
何か・・・今と違うぞ。
キレイというかなんというか・・・・。
庭もちょっと違うな。
玄関の前まで来て見る。
ほぼ正面に家があったハズなんだが・・・。
空き地?
そしてその空き地で子供達が遊んでいる。
野球か。
昔そこでやったな・・・。
「あっ!」
子供達のうち一人が声をあげる。
ボールを落としたらしい。
ボールはこっちに転がってくる。
俺はボールを拾うと走ってくる子供に手渡そうとした。
「ほら」
「ありがとう!」
・・・え?
顔を見たとき驚いた。
「昔の・・・俺?」
「どうしたの?」
良く見れば他の子供達も見覚えがある。
「祐君、良太君・・・」
「お姉ちゃん?」
ふいに涙がこぼれる。
「何でもないよ」
「変なの」
「早くしろよー」
「うん!」
過去の俺は子供達に向かって走っていく。
涙が止まらない。
アレは昔の俺。
昔の俺達だ。
山品祐、森川良太。
昔の友達。
中学にあがるまではよく遊んでたんだが・・・。
一人は学年が違い、もう一人はクラスもクラブも違った。
完全に居場所が別れてしまった俺達はもう話もしなくなっていた。
その俺達が、今、ココで・・・。
こんなに楽しそうに・・・。
「お、おい」
「何?」
行こうとする過去の俺を呼び止める。
「アイツらのこと、好きか?」
「うん!」
「大事にしろよ・・・」
「当たり前だろ!」
過去の俺はそういってはにかんだ。
また涙が溢れてくる。
「そっか・・・」
「美奈ちゃん?」
「この世界じゃ、これが当たり前だよな・・・」
懐かしかった。
これで全て納得した。
足りない家。
空き地。
ココは俺の世界の過去を映し出したようなものだ。
あの妙な生物は・・・。
小学生の頃に書いた落書きだな。
空き地を見れば野球を続けている四人の子供達。
女の子もいるな。
楽しそうだった。
俺も、昔はアイツらと・・・。
・・・。
四人?
待て。
俺は三人で遊んでいた気がする。
勿論俺を含めてだ。
計算が合わない。
おかしくないか?
それに女の子なんていなかったハズ・・・。
由愛じゃない。
由愛には見えない。
じゃあ一体・・・。
「美奈、ココには由愛はいないようだ」
「あ、ああ」
「行くぞ」
「ああ」
「えー。家はー」
「もう良いだろそれは」
そう言って俺はシーラ様にもらった鍵を使った。
そして白い扉の中へ入っていく。
一つの大きな疑念を残したまま・・・。
続く