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第十三章「シーラ」

肩にベルゼブが乗ったままでは戦いづらいので要に預けた。

「美奈ちゃん・・・」

「大丈夫だ・・・」

多分だけど。

女は俺の用意が出来たことを確認すると本棚に立てかけてあった大きめの槍を手に取り、構えた。

「さあ、来なさい!」

よく考えてみればコイツと戦う意味など微塵もない。

疲れるだけだ。

俺達はシーラ様とやらに会いに来ただけだ。

「待て、俺達はこの塔の・・・」

「来ないなら・・・」

「こっちから行かせてもらうわ!」

ビュッ!

俺に向かって槍が突き出される。

間一髪で避けることができたが・・・。

コイツホント話聞かねーな。

「人の話を・・・」

俺は刀を振り上げる。

「聞けっつーのッ!」

俺は女に刀を思い切り振り下ろした。

ゴッ!

「かはッ!」

槍だった。

俺の右に突き出された槍を横に振ることによって俺の腹部へと直撃させたのだった。

ドゴッ!

そのまま壁までぶっ飛ばされた。

「糞・・・」

俺は痛む腹部を押さえながらも体勢を立て直した。

「だあッ!」

刀を構えて女に向かって突っ込む。

「美奈ッ!つっこむな!」

「え?」

ビュッ!

危なかった。

ベルゼブの声がなかったら奴の槍は俺の身体を貫通していたことだろう。

ブン!

「同じ手は喰らわねえよ」

振られた槍を飛んで避け、槍を踏み台にして女に上から斬りかかる。

女はそれを避け、一旦後ろに引いた。

俺が着地したことを確認すると、女はもう一度槍で突っ込んできた。

「ああもうッ!危なっかしい!」

俺は槍を避けると槍に向かって刀を振り下ろす。

ザンッ!

以外にも槍はキレイに斬れた。

「な・・・ッ!?」

「武器も使い物にならなかったことだし、俺の話を・・・」

「よくもやってくれたわね・・・」

「・・・はい?」

「武器がないのなら魔術で戦うまでよ・・・」

ボッ!

女の右腕には炎が灯っていた。

「攻撃系の魔術は得意じゃないけど・・・。これで戦うしかないわ!」

「だから待てっつーに!」

半分諦めつつも俺は刀を構えた。

その時だった。

「おやめなさいッ!」

「ッ!?」

奥の扉から少女が現れる。

「し、シーラ様・・・」

「どうせまた貴女の早とちりなのでしょう?その方の話をお聞きなさい!」

「しかし彼女は武器を・・・」

「貴女が敵意をむき出しにするからでしょう!」

「う・・・」

「それに塔にかけてある幻術もやめなさいと何度も言っているでしょう!」

「しかしあれは侵入者対策で・・・」

「なら夜中だけにしなさい!少なくとも昼間には危険な侵入者は来ません!」

あの分からず屋女を簡単に黙らせたあの少女こそシーラ様・・・なのだろう。

「あの・・・」

ふいに要が口を開く。

「あたし達は、シーラ様に会いに来ただけなんです・・・」

「やっぱりそれだけですよね。ほらみなさい!この方達には悪意はありません」

「どうぞ、奥へお入り下さい」

俺達はシーラ様に連れられて奥へ入っていった。

礼拝堂のようなところだった。

「で、私に用があるのでしょう?」

「ああ、その前に一つ」

「何でしょう?」

「予知ができるらしいが、それなら俺達が来るのもわかってたハズだよな?」

「いえ、未来は見ようとしなければ見えません」

「そうか」

ならさっきの件も納得だ。

「あと、さっきの女は・・・」

「彼女は私の側近のティラ。せっかちで容量は悪いですが、忠実で素直な方です」

「なるほどな」

「んじゃ本題に入るぞ」

「はい」

「単刀直入に言う。由愛って子を知らないか?」

俺の問いを聞いたシーラ様は少し驚いた表情をした。

「彼女を、見たことがあるんですね?」

「ああ」

俺が答えるとほぼ同時に要がうなずく。

「先に言っておきますが、この世界に彼女はいません」

「・・・」

「ですが、見ることはできます」

「え?」

「この先、どの世界で会うことができるか・・・」

そう言うとシーラ様は目を閉じた。

・・・。

・・・。

「白」

「白?」

「白い世界」

最初のとこか?

「全てが混ざり合う瞬間の世界」

全てが・・・混ざり合う・・?

「向こうとこちらが繋がる瞬間」

「貴女方は彼女に会うでしょう」

向こうとこちら・・・。

「現実と、夢幻世界・・・」

ってちょっと待て!

「アイツが融合させるのは俺達が死んだ時だ。俺達が死なずに繋がるってのは重大なルール違反だ」

「どんなルールがあるか私は存じません。ですが、見えたことは真実です」

「・・・」

「ですが、貴女方の行動次第では変わることも十分あり得ます。そうやってこの世界は繁栄してきました」

「・・・。だよな」

「彼女が、由愛が現れてからこの夢幻世界は少しずつ変わってきている」

「貴女方のような向こうからの来訪者が増え、そして貴女方と同じように彼女を探している」

「俺達みたいな奴がいるのか?」

「少なくともこの話をしたのは二回目です」

「そうか・・・」

俺達だけじゃないってことか・・・。

「よし、そろそろ行くか、要」

「え、うん。どこに?」

「・・・」

どこにだろうな・・・。

「他の世界へ移動するのならこれをお使い下さい」

シーラ様は小さな鍵のようなものを俺に手渡した。

「無限に使えるわけではありませんが、世界を移動するための道具です」

「そうか、ありがとう」

「扉の鍵を開けるように回して使って下さい」

俺は言われた通りに鍵を使った。

空間に白い扉のような穴が現れる。

「んじゃ、色々ありがとな」

「いえ、これも務めですから」

「健闘を祈ります」

シーラ様のその言葉を聞いたあと、俺達は中へと入っていった。


続く

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