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第十二章「幻術」

「シーラ様・・・ねえ」

俺はこの塔の頂上にいるであろう少女の名前を口にした。

少女というだけで由愛とはあまり関係ない気がするが・・・。

とりあえず行ってみるに越したことはない。

手がかり・・・とは言い難いが数少ない可能性の一つだしな。

とは言ってもシーラ様とやらが由愛本人だとはあまり思っていない。

何かを知っているかもしれない。

この世界について、由愛について・・・。

「行こっか?」

要が塔を指差す。

「ああ」

要を先頭に、俺達は中へ入っていった。

中は単純に螺旋階段。

これを頂上までひたすら上り続けるのか・・・?

「めんどくせえ」

自然にため息と愚痴がこぼれる。

「そんなこと言わずに頑張ろうよ」

要は笑顔でそういうと階段を上っていく・・・。

上り続けること数十分間。

所々にある窓から見える景色はかなり変わってきている。

「うわー!すごいねー!」

要は窓から身を乗り出していた。

「うわッ!馬鹿!危ないから戻って来い!」

「えー!何でー!美奈ちゃんこっち来なよ!結構キレイだよ!」

「もしかしてアンタ・・・高所恐怖症?よくここまで上ってこれたわねー」

ミントが茶化すように俺の顔の周りを飛び回る。

「うっせー!要、いいから戻って来い!」

要は納得いかなさそうな顔で戻ってきた。

「何で要まで止めんのよ?」

「他の奴が身を乗り出してるのも何か怖いんだよ」

「変なのー」

俺も思う。

俺の軽い高所恐怖症がバレてから更に上ること数十分。

一向に進んだ気はしない。

「ハァハァ・・・」

流石に息切れし始めた。

「ねえ」

「ん?」

「何かおかしいよ・・・」

要が窓の外を見ながら真剣な面持ちで言う。

「何がだよ?」

「だってここから見える景色・・・」

「さっきと同じ」

「な・・・!?」

景色を見ていない俺にはわからないが要が嘘を吐くとは思えない。

「ベルゼブ!」

「うむ。第三者の力が加わっていると考えて間違いないな」

「ミント、確かめてきてくれないか?」

「え?」

「このまま進めばこの位置まで戻ってくるハズだ。確かめるために行って来てくれないか?」

「しょうがないわね・・・」

そういうとミントは進んでいった。

数分後。

「あれー!?」

ミントは下から上がってきた。

「やっぱりな」

「どういうこと?」

「俺達は何かの力でここから進めなくなってるんだ。進もうとすればこの位置まで戻される。延々と一定の場所を行ったり来たりする仕組みになってるんだ」

幻術か何か・・・か?

やっぱ何でもアリだなこの世界。

「どうするの・・・?」

不安そうな顔で要が言う。

「ベルゼブ、何か策はないか?」

「む・・・。この空間と我々に対して幻術が使われている。単純に幻術に使われている魔力を超えた魔力で破れば良い」

マンガみたいなことを真顔でペラペラと喋るこのミニマムダンディ。

大体魔力なんて俺にあるわけないだろ。

「っつーか魔力ってなんだよ。んなマンガみたいな概念がこの世界でも通用するのか?」

「呼称はどうでも良いのだ。ただわかりやすく言って魔力。別に気でも霊力でもチャクラでも構わん」

なるほどな。

「ようは現実離れした力を使う時に使うエネルギーだな?」

「そういうことだ」

とは言ったものの・・・。

理解はできた。

しかし実行に移せない。

そもそも俺にできることっつったら刀出すくらいだ。

「ベルゼブ。刀出すくらいしかできねーぞ?」

「十分だ」

「要じゃダメなのか?」

「いや、お前が適任だ」

「了解」

少し念じれば刀はすぐに出現する。

「で、どうすんだ?」

「この空間を思い切り斬れ」

「わりと簡単なんだな・・・」

ブン!

俺は刀を思い切り振った。

ブチッ!

何かが千切れるような音がする。

テレビをつけたままコンセントを抜いた時のような音。

一瞬で視界が変わった。

螺旋階段の途中だったハズが、目の前には扉が出現した。

「よし、成功したみたいだな」

「やったー!」

「多分この奥がシーラ様とやらいる部屋だ」

「うん」

俺は静かに扉を開けた。

簡易な部屋だった。

少しの本棚とベッドと椅子と机。

ベッドは二つあった。

そして椅子に誰か座っている。

「よく破ったわね」

「誰だアンタ」

「あの幻術は私の術の中でもかなり高度なものよ」

「聞けよ人の話」

「ソレを破るってことはアナタかなりできるわね」

「いや、だから・・・」

「良いわ。相手してあげる」

「聞けって・・・」

「この私がアナタより上だということを教えてあげるわ」

「聞けっつーのッ!」

「あら?」

女はやっと気づいたという様子で俺の方を見る。

「いたの?」

「なッ!?今俺に向かって喋ってたんじゃないのか!?」

「あぁ、アレは侵入者が来たときの台詞練習よ」

何だコイツ・・・。

ウェーブのかかった長い髪。

露出度の高い服装。

中々キレイだけど性格は色々と問題ありそうだな・・・。

勘だけど。

「私の知らない顔の奴がココにいるってことは侵入者ね?」

「まあな」

侵入ってほどでもない気がするんだが・・・。

「よく破ったわね」

「は?」

「あの幻術は私の術の中でも・・・」

「それはさっき聞いた」

「そうだったわね」

話せば話すほど妙な奴だな。

「なら、言わなくてもわかるわね?」

俺は出しっぱなしだった刀を構えた。

「侵入者はこの塔から即退場してもらうわ!」


続く

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