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第十章「砂漠とポーカー」

昔の夢


遠い記憶


忘れたくない記憶


忘れたい記憶


忘れてしまった記憶


思い出せない


思い出すことが出来ない


だから夢で問う


あなたは誰?



               美奈










「ん・・・」

暗かった視界が明るくなっていく。

青い空。

白い雲。

あれ?

前も似たような場所・・・

「美奈ちゃーん!砂漠だよー!」

前言撤回。

前は密林。

ココは・・・

「砂漠・・・?」

「うむ。目が覚めたか美奈」

「ベルゼブ・・・」

ベルゼブは倒れている俺の顔の横に立っていた。

「よいしょっと・・・」

俺は服についた砂を払いながら立ち上がった。

「ふぅ・・・」

要は楽しげに砂で遊んでいる。

子供かお前は。

「美奈ちゃん!砂!砂ー!」

要は嬉しそうに砂をこっちに投げてくる。

そういうのは雪でやってくれ。

「砂合戦しよー!」

だからそういうのは雪でやってくれ。

「それっ!」

だからそういうのは雪で・・・

「うわッ!」

「へへー」

「へへーじゃないッ!目に入る!髪にかかる!」

ただでさえ無駄に長い髪だ。

ついた砂を洗って落とそうものなら面倒なことこの上ないだろう。

ブンブンブン!

俺は犬のごとく頭を振った。

長い髪がうっとおしい程顔にかかる。

「ほらほらー!」

要はまだ砂を投げてくる。

「だからやめろって!」

そして俺は再び頭を振る。

何で髪にかけてくるんだコイツは。

ブンブンブン!

「蜂が飛ぶー♪」

「叩くぞお前」

その後俺は俺の髪と同じくらい長い説教を要にし、反発するミントを鎮圧してこれからどうするか話し合った。

「美奈ちゃん。砂で遊んじゃダメ?」

「俺は同じ説明をするのは嫌いなんだ」

俺がそう言うと要はションボリとうなだれた。

「で、これからどうするよ?」

「砂で遊べば・・・」

と言いかけた要を俺は軽く睨んだ。

「良いとは思わないなぁ・・・あたし」

「うむ。これ以上美奈の機嫌を損ねんでくれ。私としてもやりづらい」

気づけば俺はずっと髪の毛をいじってた。

砂がついているかどうかが気になって仕方がない。

今まで気にしていなかったがかなり長い。

一旦気にしだすともう止まらない。

砂がついていようとなかろうと髪の毛が気になって気になって仕方がない。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!うざいッ!」

俺はまた頭を振った。

そういえば暑い。

一つ気になると余計なことまで気になり始める。

汗と砂と長さのせいで髪がうざい。

「要」

「はいッ!」

さっき俺に軽く睨まれたせいか要は少し怯えた様子だった。

「何か髪結ぶもの持ってないか?」

要はポケットの中を探したがすぐに

「ごめん。持ってない」

と答えた。

「この近くに町や集落がないか探した方が良いんじゃない?」

「それもそうだな。紐とかゴムとかくらいあるだろ」

「うむ。決まりだな」

そして俺達は歩きだした。

歩くこと数十分。

どこを見渡しても砂。

砂。

砂ッ!

「砂ッ!」

「ごめんなさいッ!」

反射的に要が謝る。

「何でお前が謝るんだよ?」

「あ、いや・・・。何でだろ・・・」

要はそう言って苦笑した。

「美奈、何をイライラしている」

「別に」

俺はそっけなく答えるとひたすら歩いた。

「暑いぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・・・・・・・・・」

「美奈・・・ちょっと落ち着いたら?」

「暑くて死ぬぅぅぅぅぅ・・・・・・・・」

「まだ死ぬような暑さではないぞ美奈」

「天国でトロールが手を振ってる・・・。殺しちゃってごめんな・・・・」

「ダメだわコイツ。早くなんとかしないと・・・」

「同意権だな」

パートナー二人につっこまれまくりながらもひたすら歩く。

更に歩くこと数十分。

「あ、あれ!」

突然要が叫ぶ。

「んあ?」

要は前方を指差している。

見てみるとそれは町だった。

ココからではまだ遠いが・・・。

「町だッ!」

「町だねッ!」

俺は要とともに走りだした。

肩にベルゼブが必死でつかまっているのがわかる。

だがどうでもいい。

そんなことより水だ。

飲む水も欲しいが・・・

洗う水。

汗だらけの体を洗いたくてたまらないのだ。

勿論髪も。

走り始めてから十分後。

入り口に到着。

「ハァハァ・・・」

「つ、疲れたね美奈ちゃん・・・・」

「そうだな・・・」

俺と要は息を切らしながら町の中に入った。

「風呂のある宿を教えてくれ」

「風呂があるもなにもこの町には宿は一軒しかないよ」

その宿は酒場兼宿屋のそうだ。

店の名前は「グリーンレッド」。

矛盾した名前にイラっときたが我慢する。

中に入るとマッチョな男達が酒を楽しんでいる最中だった。

「一晩泊めてくれ」

「あいよ。4人で二千ゴールドだよ」

「ごーるど?」

「ココの通貨だよ」

勿論金など持っていない。

持っているハズがない。

「あの、ないんですけど・・・・」

「それじゃダメだね」

「・・・」

さて、どうしたものか・・・。

「どうするんだ美奈」

「ん・・・・」

俺は辺りを見回した。

「そうだな・・・」

俺はふと近くの男達を見た。

トランプ・・・。

ポーカーだな。

見たところ博打のようだ。

「おっさん」

「あぁ?」

俺は背後から男に話しかけた。

「その博打・・・俺も混ぜてくんない?」

「嬢ちゃん。これは遊びじゃないんだよ」

「それは助かる。今早急に金が必要なんだ」

「いくらだい?」

「二千ゴールド」

男はそれを聞くと机の上を見た。

他の男達の賭けたゴールドが山積みにしてある。

「今ココにこいつらの賭けた金が三千ゴールドある。嬢ちゃん。一度やってみるかい?」

「勿論」

「いくら賭ける?」

「持ってない」

そう言うと男はムッとした。

「それじゃ負けたら何を払うつもりだ?身体で払うか・・・?」

男はニヤニヤしながら言う。

「いいぜ」

男が席を空けると俺はそこに座った。

「美奈ちゃん・・・大丈夫なの?」

「ああ」

男達がカードを配り始めた。

イカサマは・・・してないな。

見た感じ。

俺のところにもカードが置かれた。

俺はカード見てニヤリと心で笑った。

俺はカードを交換しなかった。

いや、する必要がなかった。

バン!

俺はカードを机にたたきつけた。

「ロイヤルストレートフラッシュだ」


続く

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