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非常食

「周辺を見てみたが、前方の土砂崩れの先も後方も道が無くなっている。そもそも道が無かったかのようだ」


 俺が少しの仮眠から目を覚ますと社長がそう言ってきた。まだ、寝不足気味の目を擦りつつ社長を見ると膝下まで泥で汚れている。ピカピカに磨いていたイタリア製の靴が台無しだな。


「崖の下はどうなんですかね」

「……ガードレールから先はかなりの勾配で降りられないし、反対側は崖になっていて登れない」

「じゃあ、俺も周辺を散歩してみます」


 釣り用に持ってきていた長靴に履き替える。前夜に濡れたスーツを絞り、ガードレールに干しておく。ガードレールにもたれ掛かり下を見ると10m下に川が見えた。

 道路の前方に歩くと、ジープの後ろ半分が冗談のように置かれていた。それを横目に見つつ先に広がる土砂の山を登る。


 ――本当にここに道路があったんかいな


 そこには原生林が広がっていて、道路どころか人の手が入った形跡すら無い。なだらかに斜面が続き、先程ガードレールから覗いた時に見えた川が流れていた。


 ――はてさてどうしたもんかな。


 携帯を取り出すが圏外表示になっていて使えない。

 仮眠をとる前に車載してあった無線機で自衛隊基地に救援を呼ぼうとしたが、周波数が合わずに呼びかけに応じることは無かった。


 ジープの残骸を避けて、後方の道路の状況を確認しようとしたときに、黒い棒状の人工物が転がっているのを発見した。


 ――これは……銃の先っちょ?


 引き金(トリガー)部分まで残っているのでまず間違いないと思うが、これもすっぱり綺麗に切れている。後で確認するために拾っておいた。



「菱木さん。岩田さんが目を覚ましたっす」


 トレーラーの後ろの土砂崩れの様子を見ていると。佐古田が呼びに来た。


「佐古田さん。あの道路の様子見ました?」

「さっき、社長と見たっす。トレーラーをを中心に丸く切り取られたようになってるっすね。もしかしたら宇宙人が()ん丸く抜き取ってどっかの星に連れて行かれたんじゃないですかね? ハハッ!」


 ――佐古田さんアホっぽいけど意外と核心を突いてたり


 考えても分からんものは分からんので別のことを考える。


「佐古田さんさ、トレーラーの無線機試してみた?」

「それがさ。バッテリー上がっちゃって動かないんすよ」

「いつから動かなくなったんですかね……」

「あのピカって光ってからっすかね。エンストしたみたいにエンジンも止まっちゃったっす」


 佐古田さんと一緒に喋りながらベンツまで歩くと、社長がベンツに寝ている岩田さんと話をしていた。

 岩田さんは顔を歪めてこちらを見た。顔色を窺うがあまり良さそうじゃない。


「岩田さん、気分は?」

「……良くないな。手当してくれてありがとう。助かった」


 この状況だと助かったかどうかはわからないけどね。


「これを拾ったんですけど何か分かりますか?」


 さっき拾った引き金がついた銃身を見せた。


「……これは小銃の一部だな。AK47っぽい。これで撃たれたのか?」

「あっちの土砂崩れがあったところで見つけました。自衛隊で使ってます?」

「いいや。社長さんから状況は聞いたがあまり良くないみたいだな」


 俺は肩をすくめた。

 佐古田さんが空気を読まずに喋り始めた。


「いや〜。しかし腹減ったすね。飯とかどうするんすか? 俺お菓子ぐらいしか持ってきてないっすよ」

「……それでも食べてなさい」


 社長が見かねたように促した。


「確かに佐古田が言った通り、何か腹に入れたいな。雨に濡れて体も冷えてるし」


 俺はトランクを開けるとバックパックからカ□リーメイトを取り出した。


「まあ、これでも食って置いて下さい。一人一本でお願いします」


 いつの間にか車から降りてきた夏木さんがカ□リーメイトを箱ごと奪いとった。


「ちょっと貸しなさいよ」

「え〜と…… それは一人一本で……」

「まだ残ってるでしょ? 救助が直ぐに来るわよ。大体なんで貴方はこんな荷物を持ってるの? 社用車よ? 何考えてるの」

「試験機の納入後は一週間オフって言われたので沢に入って釣りでもしようかと」

「公私混同しないで頂戴。大体貴方ね……」

「おっとそこまで」


 社長が横から入ってきた。


「菱木のお陰で食べれるのだからあまり文句を言うな。菱木、助かったよ」


 社長がカ□リーメイトを口に入れた。


※AK-47

 Avtomat Kalashnikova-47、「1947年式カラシニコフ自動小銃」の意)は、1949年にソビエト連邦軍が制式採用したアサルトライフルである。第二次世界大戦後、ミハイル・カラシニコフが設計した。自動小銃の中では極めて信頼性と耐久性が高く、水に浸かったり、兵士が足で踏んで歪んだ銃弾をセットした場合でも問題なく使用できる程と言われている。 Wikipediaより



※カロリーメイト

 ご存知の通りです。カロリーが多く含まれていて非常時には頼りになる逸品です。日常的に持ち歩いているのですが、お腹が減ると食べてしまい非常食にはなってませんが……

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