表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつか見た空の下で  作者: めぐみ
Bar AQUARIUM
2/3

 俺に近寄ってくる人間は男女問わずよく『人は外見ではなく中身が大切』と言う言葉を口にする。それは自分を信用してもらいたが為に言っているのか、それとも自分は心の綺麗な人間だと言うアピールの為に言っているのかはわからないがこの言葉は真実であったためしがない。どちらにしても俺はこの言葉によって相手をよく思ったことは一度もない。

 もし外見が生理的に無理な相手でも中身が良ければいいのか?答えはNOだろう。人間と言うものは自分にとってプラスではない付き合いと言うもはしない生き物だ。女性は無意識に自分より何から劣っている友人を作り自分を際立たせる生き物だと聞いたことがある。もし先の言葉が真実だと思って発言したとしても人間は無意識に行動してしまうのだ。男性もまったく同じことが言えるだろう。俺と純粋に友情や愛情を築こうとしている人間などこの世には存在しない。

 俺はひねくれていると言う奴もいるが、これは経験から出た答えだ。経験と言っても俺は外見について悩んだことは一度もない。顏とルックスだけで言えばどこも非はないし、飲食店をいくつも経営していからお金にも不自由はない。つまり俺に寄って来る人間は男女問わず外見か金もしくは両方が目当てなのだ。中身で言えば俺は最悪だろう。つまり中身はおいてい置いて一緒にいることによってなにからプラスになることは多いということだ。

 俺の経営している店は静かな店が多い。レストランや居酒屋、バー等を何店舗か経営しているが全てシックな雰囲気でまとめているのに変わりはなく、また味も良いことから予約が取れない店もいくつかある。殆どがカップル中心だが元々は人間嫌いな俺が1人静かに食事や酒を楽しみたいと言う理由で作った。だからもちろん1人の客も多いわけで、今日も1人カウンターでラム酒を飲んでいる俺も別に特別ではない。しいて言えば顏・ルックス・身に着けているものが高価と言う外見だけは特別と言えるだろう。

 店で「オーナー」と呼ばれ高級品に身をまとっていれば鼻の良い女は頼んでもいないのに胸をこすりつけ、男はありもしない投資話を持ち掛けてくる。

 だから近寄ってきた奴らにはいつも予防線を張っている。どんなにラム酒を飲んだとしても冷静な判断だけは失わないし、友情や愛と言ったものはこの世には存在しないと信じ切っている。

 1つだけ例外があるとすればそれは弟の翔也だけだろう。あいつは俺からの見返りなどは求めていないし、俺もそれは同じだ。唯一気を許せる相手だと思っているがそれも現状の話であって未来この関係が変わるかもしれないと心のどこかで考えている…。だから100%信じている訳ではないが、翔也は特別な存在ではあるだろう。

 翔也は弁護士をしていて、大学から付き合っている峰子さんと5年前に結婚し翌年には長女の凛子が産まれ幸せな家庭を築いている。もちろん兄弟だから奴も外見はいい方でおまけに弁護士と言う職業は金も不自由しない。俺と同じようなものだが奴は俺と違って人を信じる心を持っている。誰がどう見ても犯人で間違いはない犯罪者も、そいつが無罪を主張すれば無罪を勝ち取る為に努力をするのが仕事なぐらいなのだから俺とは性格は真逆だろう。それでも兄弟いい関係を築けているのは翔也が俺のこの性格を気にかけてくれている親切心と、翔也が誰かに裏切られた時の為にそばにいてやろうと思っている俺の親切心が上手くバランスをとっていると言う証拠なのだろう。

 俺はラム酒をゆっくり口に含んでから静かに溜息をついた。別に1人でいるのが寂しいわけではない、現に今俺の両隣には露出の激しいドレスを着たミサキとユリカが座り俺に気に入られようとトークと体を触ってアピールしている。静かに酒を飲むことさえ最近は叶わぬ夢になりつつあり、この2人も勝手に俺の両隣の席を確保して慣れなれしく俺に媚を売っているのだ。俺はこの2人の名前しか知らないしそれ以外のは話しているのだろうが記憶にも留めようとさえしていない。この2人との関係は今夜始まりそして今夜終わるのだ。明日からはまた他人になる関係なのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ