エピローグ ~もうひとつ、ありえた世界で~
* * * *
ジュースの缶を三本抱きかかえ、少女が戻ってくる。
「はい、あやめ」
「え? あたしのも買ってくれたの? ありがとう!」
予想外の贈り物にあやめは驚き、そして嬉しそうだ。
「あれ? ジュースもラムネじゃん」
「ほんとだー。お姉ちゃん、ラムネ好き過ぎだよー」
「いいじゃない。欲しいものは欲しい時に貰っておくのが、楽しく生きる秘訣なんだよ」
「そういうもんかなぁ……」
時たま彼女の言う事は少し難しくて、俺にはいまいちピンとこない事が多かった。
「やっぱり、お姉ちゃんはすごいなぁー」
あやめも俺と同じ、分かっちゃいないだろうけど。
ただそれが当然であるかのように、必死で目の前の姉を褒め称えている。
「はい、たっくん」
「ありがとう、友ちゃん」
にっこり笑ってジュースを手渡してくれる。
「あ」
知らずしらずに重なった二つの手。
「どうしたの?」
「えっ……い、いや、何でもないよっ」
慌てて手を離す初心な少年。
少し手に触れただけなのに、すごく胸が高鳴った。
気恥ずさからくるもの、という事もあった。
けどそれよりも、彼女が近くに……すぐ側にいる事が直に感じられて、すごく安心できた。
ああ、この子はどこまでも俺達のお姉ちゃんなんだな……。
手に残った温もりの余韻を感じながら、幼い俺はそんな事を思った。
* * * *
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
この作品は以前、某所にて投稿させていただいた作品に、少々手を加えたものです。
ただ、本筋はほとんど変更なしで、今回は細々とした部分の修正に留めました。
今作執筆を通して、自分自身未熟な点が多く見つかりました。その経験を活かしつつ、これからも勉強していきたいと思っております。
また読者さま方からの感想、批評などはいつでも大歓迎でございます。頂いたご意見はぜひ参考にさせていただきたいです。
長くなりましたが、改めまして、お読みいただきありがとうございました!
また別の機会にお目にかかれることを楽しみにしております。