師匠と俺の初対面
師匠登場です。
「ゆ、勇者剛殿!こ、この方は先代勇者様ですぞ!それを気持ち悪いなどと…」
先代勇者だとは知ってるけど…気持ち悪いものは仕方が無いよな。
見た目と、まとっている雰囲気が違いすぎるんだよ。普通のサラリーマンみたいな奴が、まるで歴戦の戦士のような雰囲気をまとっているのだから。
そう、見た目は子ども中身は大人みたいな感じの。どちらが本当のその人なのか分からなくて、気持ち悪いだろ。
「あははは、さすがに初対面の相手に気持ち悪いなんて言われたの、師匠も初めてですよね…」
突然、先代勇者の横にいた制服姿の女が笑い出した。
「黙れ木崎」
師匠さん声渋っ、隣にいる奴は木崎って言うのか。あれ、さっき王様が言ってた弟子の中に居たよな…
「ハイハイ、でも師匠がそんなに不貞腐れるなんて珍しいじゃないですか!」
「俺だってな、初対面の奴に気持ち悪い顔だとか言われたら傷つくからな!」
「すまない。気持ち悪いのは別にあなたの顔ではなくて、その雰囲気と見た目が気持ち悪いと言うか」
やべえ、ますます酷くなって行ってる。
「見た目はと雰囲気って、ほとんど第一印象が気持ち悪いって言ってるもんでしょう!本当、勇者くん最高だよ!師匠を初対面でこんな馬鹿にできるなんて!」
「いや、本当になんかすいません」
「別に構わない。気持ち悪いと言われたのは初めてじゃないしな。それより木崎、黙れ」
「あーあ、師匠怒っちゃった〜」
「王様、ここで話すのもなんだし、俺の部屋にこいつ連れてっていいか?」
「も、もちろんじゃ、夕飯の時間になったら呼びに向かうぞ!」
今気づいたが、王様や姫様兵士たちはアホズラでポカーンとしていた。王女はクスクス笑っていたが。
「わかった、じゃあループ発動」
先代勇者がそう唱えた瞬間、俺の視界が入れ替わった。
入れ替わった瞬間、目の前にブロウが現れた。目があって、気持ち悪かったからぶん殴ってやったら、転がって行った。
「ここは、俺の部屋だ。さっきの部屋から魔法で転移した」
先代勇者の部屋は、豪華だった。それこそ王室と変わらないくらいに。
「ねえ、勇者くん。なんでいきなりブロウを殴ったの?」
「特に理由はない。あえていえば、目の前にいきなり現れてキモかったから殴った。」
「めっちゃ理不尽だね。まあ、別にブロウが殴られたってイイけどね」
「ひでえな、お前ら」
「いえいえ、師匠!きっとブロウはマゾだから殴られて喜んでますよ」
マジか、ブロウキモイな。
「勝手に、俺の性癖作るなよ。殴られて喜ぶ奴がいるわけないだろ!」
「おい、お前ら。まず俺の話を聞け。」
先代勇者が場を静める。ブロウいじりが止まった。
「勇者剛、お前は確かニッポンて所からここに召喚されたんだよな。」
ニッポン…そうだ、俺はニッポンにいたはずなんだ。俺がどんな奴で何をしてたかは覚えてないが。
「ああ、俺はニッポンからここに召喚された」
「勇者くん!召喚される瞬間、君はどういう状況で何をしていたの?」
木崎がさっきよりも、興奮した感じで俺に迫ってくる。
なぜそんなことを知りたがるのか分からないが、残念ながら俺は自分についての記憶がほとんどないので、答えることはできない。
「…覚えてない」
「エッ、どういうこと?」「覚えてないとは?」「剛、馬鹿なのか!」
俺以外の3人が一瞬驚いたような顔をした後、直ぐに質問を返して来た。
ブロウはなんかうざいから目つぶししてやった。
「目がぁ、目がぁ」
ブロウが目を押さえて、転げ回る。馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ。
「ブロウはほっといて、覚えてないってどういうこと?」
木崎の、ブロウの扱いが結構酷いな。まあ、別にイイけど。
覚えてないってどういうこと、と言われてもそのまんまの意味なんだよな。
「俺っどうやら記憶が抜け落ちてるみたいなんだ」
「っ!師匠まさか!勇者くんは!」
「恐らく、お前と同じだろう」
「何が同じなんだ?」
木崎と俺の同じ点が全く見当たらないんだが。
「私も、ここに来た時記憶が抜け落ちてたんだよね!召喚される寸前に死んだからね」
「頭大丈夫ですか?」
死んだならなんで生きてるの?意味分からない。木崎が一番馬鹿だったとは…俺の中の馬鹿ランキング1位に輝いたぞ。二位はハゲ、理由はイタズラしても全く気づかないから。
「木崎が言ったことは本当だ、木崎はここに召喚される時に一度死んでる。いや、正確には、木崎が死んだからこちらの世界に召喚されたと言った方がイイかもな」
「そうだよ、勇者くん!私頭おかしくないよ!」
「死んだから召喚された?説明プリーズ」
「前いた世界で、勇者の素質がある奴が死んだら、そいつの所に異次元の狭間的なのが現れて吸い込まれる。で、出て来たらなぜか生き返ってるが、記憶がかなり抜け落ちてる。以上。」
「その話が本当なら、先代勇者は山本さんではなく木崎さんってことだよな?」
「そうだ、俺は木崎の代わりに勇者をやっているだけだ」
……木崎がニッポンから来たなら、なんで白髪なのかとかいろいろ疑問があるが、一番の疑問は違う。
「山本さん、あなたはどうやってこの世界に来たんだ?」
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