陛下の話
俺はなんだってできた。
優秀な兄たちにだって引けを取らないほどに…
だが物心ついた時からだっただろうか?
俺はだれも信用できなかった。
優しい家族だろうが周囲の騒がしいものたちがすべて信用ならないものだった。
愛されたいと思う反面、裏切られることを恐れた。
いつも冷静さをとりつくっていたが、俺が安らぐところはどこにもなかった。
あの日までは…
「王子様、初めまして。私はエスメラルダ…貴方のエスメラルダです」
最初こいつは何を言っているのだろうと思った。
湧き上がってくるのは嫌悪感。
その感情のまま噴水へと突き落としてやったが、その後も笑って彼女は俺のそばにいた。
まるでそれが当然であるというように…
半年が過ぎても懲りない彼女の存在に俺がなれてきてしまった頃。
誤ってまた噴水に落ちそうになった彼女をまさか俺が助けることになるなんて思わなかった。
一緒に噴水に落ちて濡れそぼった俺たちは互いに笑いあった。
ああ、なんでこうも安らかな気持なのだろう?
彼女がいればいつもこのような気持でいられるのだろうか?
「私はエスメラルダ。王子様、今日もご機嫌いかがですか?」
その言葉の裏にある意味がいつも俺を和ませてくれる。