王妃の話
私が結婚した陛下は一人で立つ人御方でした。
優秀な家臣たちに囲まれていても彼は一人ですべてを成すことができた。
いつもそんな彼の威圧的な雰囲気で誰もが彼を恐れていたが、私は彼の寄り添った。
一人の彼を支えたいと思ったのだ。
そんな彼も私を頼るようになってくれた。
本当に時たまに微笑んでくれるだけで私はとてもうれしかった。
だが彼のそばには伯爵夫人の存在があった。
嫁ぐ前から夫人の存在は有名な話。
人妻である彼女と道ならぬ恋をしている陛下に嫁いでも幸せになれないと周囲から言われた。
しかし私は一度だけ会ったことのある陛下に恋をしていた。
だからそれでもそばにいたかったから結婚を承諾した。
そして噂通りに夫人は毎日やってくる。
最初は陛下と一緒に食事をとっているときだ。
突然扉が開いたと思ったら夫人が入ってきた。
その態度に後ろで夫人を止めようとしていただろう騎士やメイドが顔を青くしている。
陛下は愛しい人の訪問に喜ばれているのだろうとみてみると、陛下は夫人に目をやるがそこには何の感情は籠っていなかった。
「私はエスメラルダ。陛下、お食事中に失礼しますわ」
悪びれるふうもなく満面の笑みを浮かべながら夫人は挨拶する。
だが夫人の視界に私は映ってはいなかった。
無視しているわけではない。
ここには陛下と夫人しかいないかのようだ。
そんな夫人に陛下は「ああ」と一言もらすだけ。
恋人に対する態度には見えない。
けどその返事だけで夫人はうれしそうにうなづいているのだ。
失礼しますと騎士が入ってくると夫人の腕をとり連れて行く。
部屋を連れ出される夫人はそれでも陛下だけを見ている。
笑いながら…どこまでも幸せそうに
夫人の訪れは夫人がなくなるまで続く。
彼女の行動は常軌を逸している。
しかしなぜその行動が許されるのか?
簡単なこと。
陛下が許しているからだ…
今では陛下に愛されているのは私だけ…そう実感している。
けどそれだけに彼女の存在はとても怖かった。