お姫様の恋の話Ⅲ
まだお父様がいた穏やかの日々に私は一度だけ聞いたことがあった。
お母様も誰もいないことも確認して私はお父様に尋ねた。
誰もが口に出すことを憚っていたエスメラルダのことだ。
「ねぇお父様、どうしてお父様はエスメラルダと結婚しなかったの?」
あれほど大切な人がそばにいたというのにお父様はどうしてあの女を選ばなかったのか?
お父様は不思議そうに私を見つめた。
「エスメラルダとなぜ?」
「だって…」
言いどよむ私の代わりにそばに控えていたジーナが口を出した。
「陛下は王妃様と母が毒を飲んでしまい解毒剤が一つしかなかったらどうなさいますか?どちらか一人しか助けられませんが?」
その問いに対してお父様は考えるそぶりもなく答えた。
「王妃を助けるよ。愛する妻を助けるのは当然のことだろ。エスメラルダは分かってくれるだろう」
そう微笑むお父様に私はその答えに私はほっとした。
だが次の答えに固まってしまう。
「そして俺も同じ毒を飲みほしエスメラルダと共に逝こう」
「王妃が生きていてくれるのならば俺は嬉しい」
穏やかに微笑むお父様が急に私は怖くなった。
なぜその選択肢を選んでしまうのだろう?
なぜそこでエスメラルダを死を選ぶのか?
どちらかが死んでしまうのならばもう一人も死を簡単に選んでしまう。
このままではお父様が死んでしまうような…そのような考えが浮かんだ私はそれを振り切るようにその話を打ち切ってしまった。
けれど庭園でジーナと二人にいるときに私はまたその話題を振った。
「そこまですることができるのならばどうしてお父様とエスメラルダは恋人のように愛し合えなかったの?」
もしも二人が結婚していたのならば私たちはいないことになるのだけど知りたいのだ。
「あの二人はお互いになくてはならない存在だった。それは恋人に近いけどほど遠かった。お互いを大切にしすぎたんだよ。大切すぎて壊れやすい関係には本能的になれなかったんじゃないかな?僕の勝手な解釈だけど」
ジーナはジーナが思う答えを私に教えてくれた。
その答えに私はふとある重要な答えに含まれていることに気が付けなかった。
そして後々思い知らされるのだ。
もっとも愛する私のジーナから…
「結婚するんだ」
そう笑ってあなたが告げたのはお父様が死んで数年たったある日のこと。
私は信じられなかった。
ねぇどうして私以外の人と結婚するなんというの?
どうしてそんなに嬉しそうなの?
私は貴方の唯一なのでしょう?私を愛しているのでしょう?
じゃあその隣の女は誰なの…
貴方にとってその女はどんな存在だというの?
『僕は君のジーナだよ。』
嘘を吐かないで!!




