お姫様の恋の話Ⅰ
恋になんてしたくなかった。
貴方を愛したくはなかった。
私は貴方に出会いたくなかった。
貴方に出会わなければ恋に落ちなかったら、私は平凡に一生終えられたのに…
私たちは所詮お父様たちのようにはなれないのだ!
幼いころからお父様とエスメラルダのことで苦しむ母や周囲を見てきた私はもう恋なんてしたくないと思っていた。
そう、貴方に会うまでは…
おかしくなったお父様が以前とはまた違ったお父様になったころの話。
お父様の後ろで支えるように立つ私とそう歳の変わらない貴方を見つけた。
私は貴方と視線が合うと衝動的に視線を外してしまった。
私が外したからといっても貴方からの視線はいつまでも私に向いていることは分かった。
貴方がだれかはすぐにわかった。
あの女の息子だ。その容姿はあの女によく似ていたからだ。
なぜ息子がお父様のそばにいるのか?
周囲はそれを暗黙の了解で許している。
けど貴方のおかげでお父様は変わっていった。
お母様とも私とも過ごしてくれるようになった。
貴方はいつもいたけど…
私は貴方が嫌いだった。
だって貴方はいつも笑ってお父様の後ろから私を見ているのだ。
その優しげな笑顔にどうしてか私は胸が鼓動を早めてくるのだから…
そんな彼と私は初めて言葉を交わしたのはお父様がよく立ち寄る庭園でのことだった。
噴水のそばに座って本を読んでいるお父様のそばを離れてあなたは私が隠れているところにやってきたのだ。
「こんにちは、僕のお姫様」
そういってひざまずき私の手の甲に口づけた貴方に私は乱暴にその手を引き抜いてしまった。
「さ、触らないでよ」
顔を真っ赤にしてそう叫んだ私に貴方はただ笑っていた。
これが貴方との初めての言葉を交わした日。
そして私が人生を踏み外した日




