王妃の話
私は陛下の大切なものを壊してしまった。
そんな私が今更陛下とやり直すことなど許されはしない。
何も知らない陛下が少しづつ周囲に、私にも歩み寄ってくれるようになった。
けどこの心の中で罪悪感に際悩まされている。
それを知られればもう私たちは元の関係には戻れない。
いえ、もともと私たちや周囲との関係さえも歪んでいたのかもしれない。
だからこそ周囲だけでも修復しなければならない。
たとえ陛下が許してくれなくても…
「貴方のエスメラルダを奪ったのは私です」
やっと口に出せた罪を陛下に告げられた。
どんな叱責が罪が待っていようとももう我慢できなかった。
私は大罪を犯したのだ。
なんでもないように何でもないように陛下とエスメラルダを見ていた。
その心は嫉妬に焦がされていても…
やっと口に出せた安堵感と共にじわじわとしみだしてくる恐怖感。
それでも陛下との視線をそらすことはしなかった。
そんな私を静かに陛下は見つめていた。
沈黙は数秒だったのかそれとももっと長かったのか…
その沈黙を破ったのは陛下だった。
たった一言「そうか」とつぶやいただけだ。
その瞳には怒りも悲しみも浮かんでいなかった。
ただ静かに凪いだ瞳で私を見つめていた。
陛下はそれからも言わなかった。
問い詰めることもなければ、叱責することもない。
いつの間にか泣いていた私を抱きしめて優しく背中をなでてくれたのだ。
「やり直そう。君たちがいれば俺はやり直せるかもしれない」
陛下がそういったのは娘の誕生日。
「君たちを愛していると今なら心から伝えられるよ」
そう照れくさそうに陛下が呟いたのは家族がそろって初めてソファに座った日。
私たち家族は少しずつ歩み寄りながら確実に絆を固めて行った。
だけど数年たった冬、陛下は突然と倒れられ診察した侍医からは冬を越せるかわからないという絶望的な診断が下された。
そして、歩み寄り本当の家族になってきた私たちはまた思い知らされるのだ。
「ああ、エスメラルダ。そこにいたのか」
もう床から上がれない陛下は最後の最後に口に出したのはあの女のことだった。
もしも、もしも、私が陛下と同じようにエスメラルダを大切にできたら…そうしたらもっと違う未来があったのだろうか?
だけどこれだけはゆるぎないことだろう。
陛下をだれよりも大切に大切にしていたエスメラルダに私は遠く及ばないしあの二人のきずなを超えることはできなかったのだ。
次で最後かもう一話か!




