とある少年の話Ⅱ
「ジーナ、今度はお前が母の真似をしているのか」
僕に兄の第一声がそうだった。
この家を継ぐ兄はだれよりも体裁を気にしている。
それでなくともエスメラルダを母に持つのだ。
風当たりは強いのだろう。
二男である僕は家を継ぐ必要もない。
だからこそ好き勝手させてもらえている。
だが兄は疑っているのだ。
僕が第二のエスメラルダにでもなるのではないかと?
僕はもっとも母と過ごすことが多かったことも所以するのかもしれない。
といっても僕は母とは違う。
陛下にすべてをささげているわけではないからだ。
僕ができることは一歩前に出ることをおびえている陛下の背を押すことくらいだ。
ゆっくりとゆっくりと周囲に交わっていく陛下を見て母は喜ぶのだろうか?
これだけのために毒を飲んだ母の気持ちは僕にはわからない。
まだわからない。
「しょうがないじゃないか、兄さん。僕は母に、エスメラルダに似てしまったのだから」
僕は僕の唯一を見つけてみせるよ。
母に似た顔にあの笑顔を浮かべながら僕は今日も陛下に会いに行く。
ほらいつもの噴水のそばで彼は立っている。
僕の近づく気配に気が付いたのかこちらに振り向いた。
この光景はよく覚えている。
陛下と母はよくここにいた。
今は母がいないだけ…
陛下のどこかにさまよう視線をこちらに引き寄せようと僕は母のような声色でこういうのだ。
「僕はジーナ。まだ誰のものでもないただのジーナ、今日も陛下が幸せか確認しに来たよ」
そんな僕に陛下は苦笑する。
僕は母にはなれないけれど陛下が心から笑えることを願っている。
この時の僕はまだ知らない。
陛下がこの数年のちに亡くなること…
そして『エスメラルダの災厄』と後に言われることなど今の僕はまだ知らない。
昔書いていたエスメラルダの災厄の主人公
こちらは救いようのないバッドエンド




