王妃の話Ⅱ
アップさきまちがえて半泣きになりました。ご迷惑おかけしました
私は怖かった。
あのエスメラルダが死んだとき私の心の奥で喜んだのだ。
そしてそれと同時に罪悪感にさいなやまされ、敗北を感じた。
陛下にとってあの女の存在を様々と見せつけられたのだ。
いつのころからだろう…
あの女に嫉妬しその存在に消えてほしいと思ったのは…
「あの女がいるから私は陛下の一番にはなれない」
そう何度、彼女につぶやいただろう。
公の場ではエスメラルダに冷たく接する陛下を見て嫁いだときはほっとしたものだ。
だが見てしまったのだ。
隠れるようにあの女と二人でいる陛下を見てしまったのだ。
私にさえ見せたことのない笑顔をあの女には見せていた。
あの女が何かを陛下に囁けば、陛下が声をあげて笑った。
陛下はどこか周囲と一線を引いた関係をともっていることは分かっていた。それは妻である私でもだ。
周りからは仲睦まじい夫婦と言われているが陛下から「愛している」とは一度も言われたこともないのだ。
それから何度も二人の逢瀬を見ることになる。
周囲はエスメラルダの行動を醜聞とした。
だがそれは本当だろうか?
陛下はエスメラルダを愛しているのだろうか?
私はただの王妃のなのだろうか?
陛下を愛したい。愛されたいだけのに…
どうしようもなくて、一度だけ陛下に会って帰るエスメラルダに声をかけたことがある。
私の存在などないようにふるまうエスメラルダに陛下の王妃としての存在を知らしめたくなったのかもしれない。
「エスメラルダ夫人、お待ちになって」
呼びかけに振り返ったあの女はいつもの小憎らしい笑顔を浮かべて私に一礼した。
「あら王妃様、私に何か御用かしら?私にはないけれど」
「私にはあるのです!」
その応答に声を荒げてしまったがあの女はどこ吹く風、その視線は王のいる扉に向かっていた。
ああもう、なぜこの女はこれほどまでに私を苛立たせるのだろう…
「貴方はなぜいつも陛下に会いに来るのですか?醜聞は耳に入っているでしょうに」
「なぜそんなことを問うのかしら?いつも言っているでしょう。私はエスメラルダ。陛下のエスメラルダですもの。醜聞などどうでもいいでしょう?」
「貴方はいつもそればかりだわ!陛下には私がいるあの人の妻は私です!!」
「そうよ。なにがそんなに不安になっているの?陛下の妻はあなただけよ?」
「それがわかっているのならもうここには来ないで!あなたにも家庭があるでしょう。貴方がいなくても私が陛下を愛するし幸せにできるわ」
女は笑顔を張り付けたままだったが床に視線を落とし、私と顔を合わせた時そこには笑顔などなかった。
表情なく彼女は一歩私に近づいてきた。
私は本能的に一歩下がった。
女はどんどんの近づいてくる。
その時には私はもう下がることができず壁に背をつけた。
エスメラルダは私に顔を近づけた。
「ねぇ王妃様、何か勘違いしていない?あなたには無理よ。私はエスメラルダ。私だけが陛下を幸せにすることができるの!それだけは譲れないわ」
覚えておいてねとにっこり笑う女に知らない間に私は床で震えていた。
もう女は去った後だったが、すぐに立ち直ることができなかった。
それから少ししてエスメラルダが死んだ。
殺したのは私がいつもエスメラルダのことを囁いた侍女。
私は知っていたのだ。
侍女が陛下を恋慕っていたことを
侍女が私を敬愛していたことを
そして侍女がエスメラルダを嫌っていたことを
だから私は囁いたのだ彼女の心にあの女への憎悪が育つように
私があの女をこの手で殺さないように…
それは無意識に行っていたこと…
けど私がしたことで陛下は壊れた。
何かを探すようにさまよう陛下
心細く何かに怖がるように私たちに近づかない陛下
日常が壊れた――
1年たったころ城に王女より少し大きい子供が現れた。
あの女の子供だ。すぐにわかった。
よく似ている。あの顔もあの瞳もそっくりだ。
けどあの子供のおかげで陛下は少しずつ変わっていった。
あの頃とも違うまた違った陛下に…
周囲に私たちに歩み寄ってくれるようになったのだ。
貴方から大切なものを奪った私を陛下が許してくれるとは思わないけれど、今度は大切にしたい。
だが、あそこまで陛下の幸せを求めた女はなぜ自ら死を選んだのか?




