とある少年の話
物心つく前から僕はその空間をみていた。
僕がそこに入ることはできなかったが羨ましかった。
僕も僕だけの唯一の人が欲しくなった。
陛下とエスメラルダが一緒にいるところを僕は遠くから見ていた。
エスメラルダといれば陛下は心から笑っていた。
王妃様や王女と一緒にいる時とは違うその笑顔に王妃たちは心痛めていたかもしれないが…
「エスメラルダ」
僕に気が付いた陛下が彼女の名前を呼んだ。
エスメラルダも僕をここに連れてきておきながら僕そっちのけ陛下だ。
だけどエスメラルダが手招きし、僕を呼んだ。
初めて近くで見る陛下に恥ずかしくなってエスメラルダの後ろに隠れようとするがそれは許されず陛下の前に出されてしまった。
そんな彼女の行動に陛下は少し戸惑ったみたいだが、エスメラルダを見てから僕に視線を戻した。
そして戸惑いながらも優しく僕の頭をなでてくれた。
「ねぇ陛下、大丈夫よ。この子は大丈夫。貴方を傷つけたりしないわ。ずっと、ずっとよ。覚えておいて」
そういうエスメラルダに陛下も僕もわからず顔を見合わせた。
それからも時折、エスメラルダに連れられて陛下にあったがエスメラルダと陛下の邪魔をしないように僕は眺めているだけだった。
そしてそんな日々もエスメラルダが死んで終わった。
それは陛下の日常も壊した。
エスメラルダの最後の願いが陛下の幸せだったのならば、エスメラルダが死んだことで陛下は幸せを失ったのではないか?
否、彼女はそこもわかっている。
そう、それが僕という存在だ。
僕は仮の存在。エスメラルダではない。
ただの代役に過ぎない。
それに陛下は僕の唯一の存在ではないけれど…それでも僕は少しでも彼女の代役を務めよう。
だから陛下、もう大丈夫。僕がいるから
「久しぶりですね、陛下。僕はジーナだよ。貴方を母の代わりに幸せにしに来たよ」
そう言ってほほ笑んだ僕に陛下は弱弱しい微笑みを返した。




