陛下の話Ⅱ
エスメラルダがだれかと結婚したときはやはりさびしさを感じたものの、毎日やってくる彼女にほっとした。
信頼できない者たちに囲まれて一日を過ごすことは苦痛だ。
だから毎日彼女が来てくれるのはとてもうれしい。若干彼女の夫には同情するが…
エスメラルダは俺を裏切ったりはしない。
傷つけたりはしない。
だが、子供を宿し、臨月だろうが訪れる彼女に俺の方が心配してしまった。
それから周囲に何かうるさく言われても俺たちは二人で一つだった。
数年たって国に疫病が広まり兄二人が倒れ、俺が王位を継ぐことになった時は俺は恐怖した。
俺のような人間がこの国を守ることができるのか?
悩む俺にエスメラルダが言う。
「大丈夫」だと…
いつものように笑って何の心配もないように俺の手を握るのだ。
だから俺も「大丈夫だな」って笑って返せたのだ。
俺は国を導いていく。
エスメラルダと共に…
そんな俺が隣国の王女と結婚した。
俺にはできた人だった。
結婚することをエスメラルダに伝えれば文字通り飛び跳ねて喜んだ。
結婚する俺よりも喜ぶ姿に俺は苦笑する。
「私は王女様と仲良くなれるかしら?ああもう本当に楽しみだわ。王子様が幸せになることが私はとてもうれしいもの」
俺の好きな相手とエスメラルダが仲良くなる。
それは幸せな未来だ。
暗闇の中怖がりながら歩く俺が出逢ったのがエスメラルダだ。
彼女と手を取って歩き出した俺たちは、別にこの暗闇の中に光を見出したわけではない。
一人心細かったのが二人になって一緒に歩き出したのだ。
暗闇だって二人なら怖くなかったんだ。
けどエスメラルダは死んだ。
彼女が死んでからは仕事をこなしても無気力だった。
二人で歩くことに慣れてしまった。慣れてしまったのだ…
もう一人で歩く勇気などない。
ならだれがエスメラルダを殺したのか?
俺からエスメラルダを奪ったのはだれなのだ!
どうしようもない怒りが込み上げてきた。
それは久しぶりの強い感情だった。




