チャプター6 災厄のゆりかご
ブルースたちは感染者から逃げ惑う途中、リズだけがはぐれてしまった。
「聞こえる? 誰か返事して。」
彼女は無線で他の隊員を呼びかけるものの反応が無い。
今、彼女が居るのはさっきまでの薄暗い地下道とは対照的に、真っ白な蛍光灯の灯りが眩しい部屋だった。
先に進んでいくとショーケースがあり、試験管に入った紫の液体が所狭しと並べられていた。
「これがあのウィルスかしら・・・?」
彼女はそれらが並べられたショーケースに貼られたラベルに注目した。
``Center of the Brain Infection-Virus. Watch out when you deal with it.``
「CIB-V、脳内感染ウィルス・・・ 取り扱い注意・・・」
さらにリズは奥へと進み、そこで恐ろしいものを目の辺りにする。
実験用の動物たちの死体が、まるで捨てられたように巨大な水槽で散乱していた。
リズはデスクに置いてある書類に目を通した。
「CBIVは人間、犬、猿、及びネズミ以外には適さないことが実験の結果わかった。改良が必要だ。どうやらこのウィルスは小型の動物には適さないようだ。昆虫やクモ、蛇などはもはや使い物にならない。ネズミは最初こそ死亡した個体が多かったが、巨大化という代償を払うことにより、これを克服している。しかし人為的に操ることが難しいため、ネズミは生物兵器としては使えない。やはり人間の実験体がさらに必要だ。そして完全に我々がコントロールできる兵士として、米国の軍事市場に提供しなければならない・・・」
リズの脳内で動物の悲鳴や被験者となった人々の悲鳴が響き渡る。
彼女はデスクに力なく倒れこんだ。
そして深い眠りへと誘われていくのであった。