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チャプター5 暴露

ゾンビたちの集団から逃れたブルースたちはホテルの地下にある廊下を進んでいた。


出血の酷いボブを心配し、声をかけるケイティ。


「少し休みますか・・・?」


「いや、大丈夫だ・・・すまんな、俺のせいで足でまといになってしまって・・・」


「何言ってるんだ。仲間じゃないか? 必ず俺たちは生き残る。もう死なせないぞ。必ず・・・」


拳銃の弾倉を交換しつつ呟くブルース。


彼の言葉に黙ったまま暗い顔をして考え込むリズ。


ここに来てから大した時間は経っていないものの、何時間も経っているような錯覚が襲っていた。隊長の裏切り、仲間の死・・・ 非現実的な出来事にあるにも関わらずさっき起こったことは全て現実なのである。彼女はまだその現実を受けいられずにいた。


ブルースは彼女の心境を察し、違う話題に話を転換する。


「アーロン、一つ聞きたいんだが、なぜこのホテルの事を知っていたんだ?隊長がスパイだったことやホールに戻ってきたときあんただけ冷静だったのも・・・何か隠してるんじゃないか・・・?」


「・・・」


黙って先導するアーロン。


そんな彼を見たボブが問いかける。


「お前も・・・スパイだな・・・?」


「・・・仕方がない・・・正直に話そう。数日前、何らかの事故でこのホテルで開発、研究されていた新種のウィルスが漏洩した。バイオハザードを察知した研究員たちはガスマスクの着用を宿泊客に要請したが、ウィルスは既に空調システムを通ってホテルを汚染していた。感染者たちは生きている者を襲い、壊滅。私は調査のためBIS(Bioterorrism investigation service)からSWATに送り込まれた。」


「待て・・・調査? BISだと・・・?」


「このホテルで使用されたウィルスのサンプルを採取することだ。」


「つまり・・・残されたウィルスか?」


「いや、感染者の血液だ・・・」


アーロンはボブに視線を向ける。


「そうか。俺が皮膚をナイフで引き裂きゃいいんだな?わかったよ。だが俺はいつあいつらのようになるかわからん。血を採ったらとっとと俺から離れろ。いいな・・・?」


ボブはナイフで首を切ろうとする。


ブルースは彼に対して言った。


「なあ、ボブ。あんたが俺たちの為を思ってくれてるのはわかる。だがまだあんたは発症してない。脱出することだけを考えろ。」


「そうよ、ボブ。きっと治療法があるはず・・・」


リズも同調するように言ったが、ボブは聞く耳を持たず怒鳴った。


「治療法があるだと?ここを出たとしても撃ち殺されるか病院で隔離されるかどっちかしかないさ・・・感染してようがしてなかろうがな。ホラ、持っていけ。どっちにしろ抗体の無い俺の血でワクチンなんぞ作れるか知らんがな。家族によろしく伝えてくれ。」


「ボブ・・・落ち着け・・・家族が待ってるなら彼らの為にも生きろよ・・・早く銃を下ろせ・・・」


「・・・・・・・。」


「ボブの言う通りだ。ブルース、そっとしてやれ・・・」


アーロンが口を挟むとブルースは彼に銃を向けた。


「黙れ!彼も連れて行く。」


アーロンもブルースに銃を向けるも、それと同時にリズとケイティも銃を向ける。



「落ち着け、お前たち。彼の意思を尊重するんだ。いいから、その銃を下ろせ・・・」


「あなたが下ろせばね・・・」


「この状況で上司や部下など関係ない。あんたがボブを見捨てるなら俺がこの場であんたを殺す。」


「いいのか、それで? 私がいなければここを出られないぞ。」


「・・・」



ブルースはゆっくりと銃を下ろした。


「それでいい。」


アーロンがそう言ってボブの方を見た途端、彼に腹を撃たれた。


「うぅぅぐ・・・」


腹を抑えながらアーロンは言った。


「もうお前たちはここから出られないぞ・・・後悔するなよ・・・?」


「ちょっとはあいつらを信じてみようと思ってな。少なくともお前の言いなりになるよりは良い。」


ボブはアーロンの右手首に手錠を掛けた。


「馬鹿者めが。自分で自分の首を絞めたな・・・全て話そうか・・・BISから派遣されたと言ったろ?あれはウソだ。あんな落ち目の組織などじきに崩壊するさ。CDCや政府はこの件を隠蔽するだろうがもしもウィルスが街に漏れたら・・・どうなるかわかるか?この街はたちまち無秩序になり、大勢の人間が死にゆくだろう。最も私には関係ないことだがな。ウィルスが高値で売れればいい。」


「仮に街にウィルスが漏れようがあなたがウィルスを闇市場で売ろうが同じような結末ね。その前にCDCがワクチン製造を開始すると思うけど。」


「甘いな。CDCなどアウトブレイクが始まってから対処する連中だ。それに抗体を持つ者が現れん限りワクチンは作れん。まあ、いいだろう。好きにするがいい。この先でお前たちが求めてるものが見つかるだろう。生きて帰れるかわわからんがな・・・」


アーロンは壁にもたれて言った。


ブルースたちは地下道をさらに進んで行こうとすると、来た道の奥の入口を抑えていたドアを叩く音がした。


それを聞いたアーロンは慌てて訴える。


「あいつらが来るぞ・・・? さあ早くこの手錠を外せ。」


ブルースたちは黙って音のするほうへ銃を向けるのみだ。


「おい・・・早く手錠を外せ。」


ドアを叩く音はやがてドアを倒し、足音とうめき声へと変わった。


ボブは手錠の鍵を取り出すが、手が血塗れだったため手を滑らせてしまう。


鍵は排水口に流れてしまった。


「私を置いていくな!」


死者たちは既に彼らの近くに来ており、逃げるしか方法は無かった。


仕方なくアーロンを置いて逃げるブルースたち。


「すまん・・・アーロン・・・」


「馬鹿どもがぁああああ!! お前たちは地獄行きだぁあああああ・・・・」


一人残されたアーロンは必死にもがき、左手で腰に装備されたナイフを取り、右手首に添える。


アーロンは覚悟してナイフを手首に振りかざし、切り裂いた。


しかしサバイバルナイフの刃で一度切り裂いた程度で人間の手首が切れるわけもない。


アーロンは力なくグッタリとするが、何度もナイフを突き刺し、断末魔の叫びをあげるのだった・・・






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