チャプター2 生ける屍
やがて部隊は、女性の言っていた方角の通り進んだ末、古風なホテルを発見した。
「ここに生存者が居るかもしれない。散開して行動する。ブルースとケイティは私と。リズとボブは2人、クリスとケビンは2人、アーロンは単独で行動しろ。」
それぞれ、チームごとに別れて行動する部隊。
ブルース、ケイティ、ケネスはホテル西側、リズとボブはホテル東側、クリスとケビンはホテル南側、アーロンは北側へ向かった。
ホテル東側、一部屋ずつ確認してゆくリズとボブ。
ある部屋に入ると、血まみれになったベッドが。
「ここで何があったのかしら...?」
「リズ、俺はこの部屋をもう少し調べてみる。」
「でも、連絡は?」
「無線機だ。無線機を使え。」
「OK。注意して行くわ。」
「ああ。ホームレスには注意しろよ。」
ボブは冗談を言った。
頷いて、部屋を出るリズ。
一方、ホテル南側。
クリスとケビンはツインルームを探索していた。
「やれやれ... 電気さえ点かないなんてな... このライトが息切れしたらお先真っ暗だぜ...」
「おい、クリス。縁起でもないことを言うな。」
「よく冷静で居られるな。とっととこんな気味悪い場所からおさらばしたいぜ。見ろよこの人形。絶対俺たちを見てるぜ?」
クリスは指を指したその先には、埃を被った少女の人形が。
しかし、ケビンはその人形に疑問を感じた。
「変だな... ホテルの部屋にこんなものはないはずだが...」
「誰かが忘れて行ったんだろ。どっちにしろ、俺たちには関係ないことだ。ちょっとトイレ借りてくるよ。」
「何だよ、さっきまでビビってたくせに。」
ケビンがぼやいているのを尻目にトイレに行くクリス。
トイレへの道の途中、クリスは独り言を言いながら出口へと向かっていた。
「全く、冗談じゃないぜ。コーロスのSWATなんかに来たのが間違いだった。」
彼が走っていると、ケビンが居た方向から銃声が。
「何だよ... ホームレスでもいたのか? まあ、いいや。とにかくここから出ないと。」
やがてロビーまでたどり着き、クリスはドアを開けようと、ノブに手をかけ、開けるが...
その先には犬のような何かが数頭、闇の中で蠢いている。
「おいおい... まさか野犬か?」
やがて、それはクリスに気づき、吠えながら走って来る。
「ヤバイっ...!!」
走って来るそれは、血まみれでところどころが腐り落ち、飢えている犬だった。いや、犬ではない。化け物だ。
間一髪でドアを閉めるクリス。
「どうすりゃいいんだ... 出られないぞ...」
クリスは恐怖のあまり、ドアから離れ、うずくまってしまった。
ホテル西側のブルース、ケイティ、ケネスは食堂を探索していた。
「このホテルは長い間使われていないようですね。」
「客は最近まで来ていないのか...? それにしても広いホテルだ... ブルース、クリスとケビンたちを見て来てくれないか?」
「了解。」
ブルースはハンドガンを構えて進んで行った。
一方、リズはホテル南側を探索しに来ていた。
ツインルームに入り、警戒していると、何か音がする。
獣が獲物を貪っているような...
警戒しつつ、リズはその音がする方へ歩を進めた。
そこには、警備員と思わしき男が、何かを喰らっている。
暗くて、何を喰らっているのかは確認出来ない。
リズはライトを照らし、男が喰らっている「何か」を確認した。
SWATの装備を着た人物... そう、ケビンだ。
ケビンの顔半分は食いちぎられ、もはや見る影もない。
ケビンを喰らっているその男は、ゆっくりと振り向くのだった。
その顔は、口から血を垂らし、眼は生気を失い、呻き声をあげる生ける屍だった。
リズは驚きのあまり、一瞬固まってしまう。
しかし、生ける屍=ゾンビはゆっくりと近づいてくる。
不気味な呻き声をあげながら。
リズは、ハンドガンを向け、警告する。
「止まりなさい! 撃つわよ...!?」
だが、恐怖のあまり、後退りして、腰を抜かしてしまう。
ゾンビは、リズを喰おうと、彼女を掴もうとする。
そのときだった。
ゾンビの頭は撃ち抜かれ、リズの方へ倒れた。
腐臭に鼻を手を押さえつつ、ゾンビの死体から離れる。
ゾンビを撃ったのは、ブルースだった。
「大丈夫か?怪我は?」
彼は手を差し伸べて言った。
ブルースの手を握り、立ち上がるリズ。
「ありがとう。 でも、ケビンが...」
「気の毒にな... とにかくここから出よう。隊長たちに連絡して...」
「待って... 彼のカメラを...」
リズは彼のヘルメットに付けてある小型カメラを取った。
「よし、行こう。」
ブルースは、リズと共にホールへ向かった。