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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第3章 帝国編
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焦る彼らの旅路1

第3章スタートです。

終わりに向けて頑張ります。

1章2章よりは短いですので、できれば最後までお付き合い下さい。

帝国編なのにまだ帝国入りしてません(笑)

「いつまで待てばいいんだ!」


 アルが思わず口にした言葉は、この場の誰もが思っていた事だった。カナーン公国で足止めされてすでに2週間は経過している。急ぐ旅のはずなのに、反対派への処分とかあの事件の事後処理で時間がかかっている。


「今日櫂柚の後任が到着予定だ。問題なければそろそろのはず。到着次第出発する」


 エドは淡々と事実を口にした。表面的には立ち直ったように見えるが、櫂柚を殺してしまった心の傷は彼に暗い影を落としていた。

 櫂柚がいなくなった事で、私達を警備する責任者が不在になり、後任が帝国から迎えにくる予定なのだ。別に帝国に到着してからでもいいんじゃないか? と思うんだけど、なぜか帝国側から後任がつくまで国外で待機要請があったらしい。


「その後任は信用できるのか?」

「私が今もっとも信頼している人間だ」


 エドの言葉に反発するようにアルは口を開きかけ、言葉を発する前に口をつぐんだ。

 彼が言いたかった事は予測できる。本当にその人間は信用できるのか? 私も簡単に信用できない。

 エドが一番信用していたはずの櫂柚が裏切り、あの朱里さえも加担していたのだ。帝国の人間を信用できなくてもしかたがなかった。


 その時扉をノックする音が聞こえた。おそらくその噂の後任だろう。皆が緊張して注目する中、その人物は入ってきた。

 エド以外の皆が驚いた。私だって驚いた。勘違いかとも思ったけど、エドの安心した表情を見る限り、どうやら彼女が後任のようだ。


 彼女。そう、噂の人物は女性だったのだ。しかもエドとそう年の変わらないうら若い女性だった。

 女性としてはかなり高い身長と、スレンダーなスタイルはまるでモデルのよう。艶やかな黒髪をきつくまとめ上げ、美しく整った顔は、冷ややかな無表情のせいでまるで作り物のようだった。まさにクールビューティー。


「お待たせして申し訳ありません。エドガー殿下。帝国軍近衛隊第二所属、毬夜まりや少尉。ただいま到着いたしました」


 無表情のまま、軍人らしく敬礼をした。凛々しい軍服姿も、固い言動も、ものものしい。毬夜というのが名前だよね? 軍人というと名字+階級のイメージが強いから、なんか違和感あるな。


「ご苦労。今後の警備よろしく頼む」

「はい。殿下のために誠心誠意務めさせていただきます」


 無愛想なエドと無表情の毬夜。二人の会話は機械的でロボットみたいに固かった。毬夜が信用できる人間なのかどうかよくわからない。


「信用している人物が女か? どういう意味での信用なのか……」


 アルの嫌味が部屋の中に響いた。遠回しないい方をしてはいるが、私にだってそこに込められた意味はわかる。エドと毬夜を男女の仲ではないかと勘ぐっている。

 エドの行動にいちいち文句言うのは慣れたけど、こういう下品な勘ぐり私は嫌いだ。エドもわずかに表情を曇らせた。

 私がアルに文句を言おうとしたその間際、私よりも早く毬夜が動いた。


 無表情のまま、剣を抜き放ちアルの、のど元に突きつけていた。


「エドガー殿下。この不敬な男を切ってもよろしいでしょうか?」


 疑問系をとっているが、殺気まんまんだ。エドが止めなければすぐさまアルを殺しかねない。


「毬夜。その方は聖マルグリット王国の王子、アルフレッド殿下だ。殺してはならない」


 エドが制止しても、毬夜はいまだ剣を引かなかった。アルも初めは面食らっていたが、剣を突きつけるという挑戦的な態度に、アルがくいつかないはずがなかった。


「帝国の軍人は、他国の王族に対する礼儀も知らないのか?」


 見えない何かに弾かれたように剣が吹き飛ばされた。毬夜もわずかに驚いたような表情を浮かべた。アルの防御魔法だろう。

 毬夜の隙をつくようにアルは立ち上がって毬夜に向かっていった。しかし毬夜は眉一つ動かすことなく淡々とアルの動きをかわし、腕を掴んで床につきおとした。

 あれ関節きめられて動けないよね。というかアルむちゃくちゃ痛そう。


「毬夜。アルフレッド殿下は友好国の王子だ。手出しをするな」


 エドの言葉に素直に従い、毬夜は手を離してアルから離れた。さらに怒りをましたアルは毬夜に拳を振り上げたが、なんなくかわされた。その後アルの動きは全てかわされ、最後には足払いされた。

 うん。手は出してないね。でもやる気まんまんだね。アルも相当怒ってるし……。これ私が止めないと駄目かな。


「アルそのへんで止めておきなよ」

「このふざけた女が無礼を謝らない限り許す気はない」


 毬夜はエドに目で指示を仰いだ。エドも困り果てた顔で言った。


「毬夜。アルフレッド殿下にお詫びしなさい」

「無礼なふるまいをして申し訳ありませんでした」


 きっちり頭をさげて言ってるけど、声色は今までと全く変わらず淡々としたものだった。


「しかしアルフレッド殿下にも一つお願いがあります」

「なんだ?」


「私に対していかなる誹謗中傷をしていただいてもかまいませんが、エドガー殿下に無礼な振る舞いは見過ごせません。さきほどの邪推を訂正していただきたい」


 毬夜はずっと無表情で淡々としていたから気づかなかったけど、どうやらさっきのアルの発言にそうとう怒っているようだ。

 しかしアルも散々恥をかかされたせいか、そう簡単に謝るとは思えない。私が強制すれば謝るかもしれないけど、それでは意味がない。

 どうしようと困っていたところ、エドが口を開いた。


「毬夜。私は気にしていない。だからお前も気にするな」

「しかし殿下……」


「邪推にはなれている。本当に私をわかってくれる人が、信じていてくれれば私は気にしない。おまえも私を信じてくれるな」

「はい。もちろんです」


「ならもうこの件は終わりだ。アルフレッド殿下。我が国の兵士がした無礼、私からもお詫びをする。申し訳なかった」


 毬夜もアルも納得はしていなかったが、これ以上揉めても仕方がないと諦めたのだろう、渋々矛を収めた。

 朱里もアルとよく喧嘩したけど、あれは口だけで結構楽しんでるように見えたけど、この二人の喧嘩は見ていて心臓に悪いわ。しばらく一緒に旅するんだよね? 大丈夫かな……。

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