創造神召還の裏側2
「ろくに信じてもいないのに、創造神召還などという妖しげな魔法をして、妾が現れたから信用していないと。ならばなぜ表向き妾を創造神と敬う」
「あなたが創造神でないという証拠がまだ見つかってないからです。恐れながらあなたが召還されてから目覚めるまで1日程あったので色々と調べていたようです」
は?私が寝てる隙になんかしたわけ?
ぞっとして、思わず両腕で自分の体を抱きしめてしまった。
「ああ……ご安心ください。着ているお召し物を調べただけです。素材や形など、この世界のどの国のものか。カタリナ殿が転移魔法でどこからか娘を連れてきたと考えられたので」
確かに食べ物でどこの国の人間か図ってたみたいだった。
魔法なんていうとなんでもありな気がしてしまうが、創造神召還なんて魔法はこの世界でも常識ハズレのようだ。
「変わったお召し物で、どこの国のものかわからず、目覚めたあなたの言動も創造神らしいものだったので、疑いつつ万が一神だった時のために礼儀をつくした振る舞いをしてるのでしょう」
だいたい事情はわかった。
やっぱり創造神っぽく横柄にしてて良かった。
うっかりボロ出してたら、厄介ものとして見知らぬ世界でどんなめにあうかわからない。
「事情をわかっていただいた所で、私の話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
そうだ。この王子は私に用があったんだ。
まだ味方とわかったわけじゃない。ここは慎重に。
唾を飲み込んでゆっくりと頷いた。
「あなたは我が国の料理を好んで召し上がるようですね。そのために、今我が国が疑われています」
冷や汗が流れる。確かにあの時ヤバいと思った。けどなんとかごまかせたと思ってた。
「つまりそなたの国から妾は呼び出されたと?」
「はい。我国がカタリナ殿と共謀していると思われています。疑いをはらすためあなたとの面会を願いでましたが断られました」
苦渋の表情を浮かべる王子が可哀想になった。完璧な濡れ衣でとばっちり受けたわけだ。
しかしこれは私にとってはラッキーかもしれない。この世界で信頼できる協力者を得るために……
不幸な王子を利用する躊躇いはわずかなものだった。
頭をふる回転させて、私は笑みを浮かべた。
「そなた妾と取引をせぬか?」
「……何のお話ですか?」
一国を背負う者らしく、王子は慎重だった。
「妾が創造神だと証明されれば、貴国の名誉は守られよう。そのためにそなたの力を借りたい」
「『創造神の証明』というのはあなただけではできないと?」
「残念ながら妾に今特別な力はない。しかし神であるがゆえにこの世界の事はよく知っている」
「私に何をさせるおつもりで?」
「今この国には各国の代表が集まっているのであろう?妾が知識を授けるゆえ確認するがよい。各国の国家機密を知るものとなれば、神と信用するであろう」
正直、小説と異なる出来事が次々ある中、これがどこまで通用するかわからない。
しかし私にはこれしか方法がない。
城の隠し通路の場所、秘宝の在処、秘密部隊の存在や隊長名など、知ったが最後生きて帰れなそうな事まで話した。
「どのような方法で確認するかは任せる。楽しみに待っておるぞ」
王子の無愛想な顔は緊張でこわばった。
「私があなたに協力すると思ってるのですか?」
「そなたが協力せずとも妾はかまわぬが。こうして二人きりで密談した事で、さらにそなたの立場は危うくなっているであろうな」
歯ぎしりが聞こえてきそうなほど、王子の顔は憎々しげに歪む。
「そなたが協力せぬと言うなら、今度は聖マルグリット王国の者にそなたの国の服でも所望してみるかの。ますます妾とそなたの国が関係あると疑うであろうな」
完璧な脅しだ。
王子は我慢の限界とばかりに、音を立てて立ち上がった。
王子は遥か上から物騒な顔で見下ろすが、私は平然と笑った。
「失礼!」
全身に不愉快さを漂わせつつも、最後まで暴言も暴挙もなく立ち去った。
人のいい王子をいじめすぎたかな?とため息がもれる。
多分彼はやってくれるだろう。後は待つのみ。