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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第2章 諸国漫遊編
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眠れぬ夜の宴5

 気づかれたなら、隠れていても無駄だ。大人しく出て行くと、叫び声をあげたのは櫂柚だった。


「明様! アルフォンス殿下。よくぞご無事で」


 櫂柚は厳しい表情から一転、嬉しそうに声をかけてくれた。よかった。見つかったのが信用できそうな人で。


「エドガー殿下も大変心配されていたのですよ。早く無事の報告をしなければ」

「お前が直接、エドガーの所に行って報告してきてくれ」


「それでもかまいませんが、アルフォンス殿下が勝手にいなくなられた事、エドガー殿下は大変ご立腹でしたよ。直接会ってお話しされた方が良いのではないでしょうか?」


 櫂柚の表情からも、だいぶ困った事態になっているのは予想できた。アルとエドが今以上に仲が悪くなるのは嫌だ。


「アル。行ってきなよ。私は櫂柚さんに守ってもらいながら待ってるから」

「しかし、明の側を離れるのは心配だ。そうだ一緒に行かないか?」


 確かに無事なところをエドに見せて置いた方がいいんだろうけど、疲れのせいか、薬が残っているのか眠い。早く休みたい。


「私は部屋で休みたいから、帰って寝るわ。櫂柚さんがついてるし。ほら早く」


 アルは何度もためらったが、私が譲らないので観念したようだ。


「明。もし危険な目に遭ったら俺を呼べ。どこからだってかけつける」


 そう言い残してアルはエドの元へ向かった。アルの背を見つめていた私に櫂柚が声をかけた。


「明様。それではお部屋までお供いたします。エドガー殿下には部屋に明様がいる事はお伝えしておきますので」

「ありがとうございます」


 櫂柚はてきぱきと護衛の兵士に指示を出しながら、部屋まで案内してくれた。頼もしい人だ。無事部屋までたどりつき、ほっとした。ベットに行儀悪く寝転んでみた。

 ……ん? 何か違和感あるな。そうか部屋に侍女がいないせいかな? 私が気を使うと思って、櫂柚が気を利かせてくれたのかもしれない。

 そんな櫂柚はまだ部屋の中にいた。


「明様。少しお話ししてもよろしいですか?」


 櫂柚がわざわざ断りを入れてきたので、本当はこのままゆっくり寝たい気分だったのを、無理に起きあがった。


「いいですよ」

「帝にお聞きしたのですが、明様は他の世界からやってきた旅人なのだと。だとすれば、また祖国に帰られてしまうのですか?」


「今は『大災害』をなんとかしなきゃって思ってるけど。それが解決したら、今度は帰る方法探すわ」

「殿下がお願いしても残っていただけませんか? 殿下のそばで殿下をささえていただきたいのです」


 エドに頼まれたら? ということだろうか? 人一倍、気遣い魔のエドが、もしそんなワガママを言ったなら、それはかなり大事だと思う。彼のワガママを聞いてあげたい。

 しばらく悩んだ。エドやアルや朱里と二度と会えなくなる……。それはとても悲しい事だ。それでも決めなきゃいけないとしたら……。


「それでもやっぱり、私は自分の国に帰ります」


 櫂柚は心底悲しそうな表情をした。


「そうですか。残念です。手荒な事はしたくありませんでしたが……」


 そう言ったかと思うと、いきなり櫂柚は私に近づいてきて懐から小剣を取り出した。


「朱里殿下からは、傷つけるなというご命令でしたがしかたありません。足の腱でも切って歩けなくすれば、帰ろうなどとは思いますまい」


 怖! なんて恐ろしい発言! 忠義心もそこまでくると、危険だよ……。あれ? まてよ? 今、朱里殿下って言った?


「もしかしてさっきの殿下がお願いしたらって、朱里がって事?」

「そうです。明様の事を大変お気に入りのようですから」


「……ていう事は、櫂柚さんって反対派の人間という事よね」

「やっと気づきましたか。未来の后候補があまりにうかつで、おろかものではと危惧しましたが、最低限の知性はあるようですね」


 ものすごくバカにされた気がする。むかつくな。

 でもそれも仕方がない。だって櫂柚が初めから味方だと決めつけて、心配するアルを無理矢理引き離して、櫂柚についていったのは私だ。

 老人といっても、あきらかに剣の心得がありそうな、櫂柚と私が部屋に二人きりだ。

 勝ち目は初めからない。そこまで追い込んだからこそ、櫂柚も正体を明かしたのだろう。


 助けて! エド! アル! そう心の中で叫んでも通じない。

 当然だ。私がここにいる事は、アルの魔法でわかるだろうが、まさか櫂柚が私を襲おうとしているなどと、思ってもいないだろう。


 じわじわと近づいてくる櫂柚が、ゆっくりと手を振り上げる。一片のためらいもない、冷ややかな眼差しに凍りそうなほど恐ろしさを感じた。

 せめて最後の抵抗に、ベットの上で後ずさりながら叫んだ。


「誰か! 助けて!」

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