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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第2章 諸国漫遊編
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眠れぬ夜の宴3

 外の涼しさに肌寒さを感じたが、なぜか同時に眠気がしてきた。城の庭のベンチに腰掛け、ちょっとだけと目を閉じる。


「明様大丈夫ですか?」


 うとうとしていたら、いつのまにかそばにいたのは櫂柚ではなく、朱里だった。私の肩には櫂柚の着ていた上着が掛けられていた。気づかぬうちに寝てた?

 でもまだ眠い。


「あれ? 朱里? 晩餐会はいいの?」

「もう大丈夫です。明様がお疲れのようだと櫂柚に聞いて、部屋までお送りしようと思って」


「ありがとう朱里。大好き」


 朱里の優しさに嬉しくなって朱里の頭を撫でた。でもなぜだか朱里は寂しい表情になった。


「僕も明様が好きです」


 朱里の小さな体に抱きしめられ、私は戸惑った。なぜだろう?いつもの朱里と違う。

 その違和感に、私は朱里を突き飛ばして、一人で歩こうとした。でも数歩歩いただけで、眠気で足許がふらつく。


「薬の効きが中途半端なようですね」

「……薬?」


「先ほどの蜂蜜酒に睡眠薬を」

「……どうして?」


 信じられずに朱里を見ると、泣きそうな顔をしていた。


「ごめんなさい」


 ハンカチを口にあてられて、そこから甘い匂いがたちこめた。

 どうしてそこまでするの? なぜ追い詰められたような顔をしてるの?


 そんな疑問を持ちながら、すぐに意識が飛んだ。



 目を覚ますと私はベットで寝ていた。ただし私用に用意された部屋ではない。

 天井が高く、窓も高い位置にあって空しか見えない、石造りの部屋。調度品は上等なものが揃っていたが、牢獄のような息苦しさを感じた。

 案の定唯一の扉は鍵がかかっているのか開かない。完全に閉じ込められている。


 窓の外はまだ夜だし、服もドレスのままだった。あれからそんなに時間はたってない?



 しばらくして、音をたてて扉が開き、朱里が部屋に入ってきた。私の顔色を伺うように、怯えた表情をしていた。


「手荒なまねをしてすみません。ご気分はいかがですか?」

「どういう事? こんな場所に閉じ込めて何をするつもり?」


「明様には傷一つつけません。ただここで全てが終わるのを待ってて下さい」

「すべてが終わるって何をする気? ……もしかして……」


 朱里は反対派から次期帝に押されてる。エドを朱里が裏切るわけがない。そう思っていたけど……。


「エドと戦うつもりなの?」


 朱里は唇を噛みしめて黙った。否定しなかったのは事実だからだろう。


「どうして? エドとあんなに仲がいいのに」

「明様。さっき僕を好きだと仰っていただいたけど、僕の好きと明様の好きは違います」


 突然関係ない話をされて戸惑ったが、朱里の表情が真剣だったので、黙って聞いていた。


「明様から見れば僕は子供。恋愛の対象ではないでしょう。でも兄上は? 明様は兄上の事をどう思っているんですか?」


 言われて言葉につまった。つまり朱里は私を恋愛対象として好きで、私はエドの事を恋愛対象としてみているか? ということよね。

 エドの事は友達と思ってた。でも恋愛対象としてありかなしかで言われたら……。


「わからない。エドの事そういう意味で好きなのか。ねえ朱里。もしかして私のせいでエドと戦おうとしてるの?」


 エドに対する嫉妬から、だとすれば悲しい。私が原因で仲の良い兄弟が喧嘩しなきゃいけないなんて。


「いつか兄上と肩を並べたいとは思います。でもそれが理由ではありません。帝国の為です」

「帝国の為って、次期帝の地位を奪う事が? そんなのおかしいよ」


「兄上は優しい方です。自分から身を引いて、僕に帝の地位を明け渡そうと、してしまうくらい」

「そうよ。エドは優しくて……」


「それがいけないんです。そんな簡単に投げ出してしまってもいいものですか?帝というのは帝国の希望であり、人々の夢なんです。そこから逃げる人に任せられません」

「朱里……」


 朱里の言いたい事はわかった。確かにエドは弱気になってたし、上に立つ人がそんなんじゃ心配だって言うのもわからなくはない。でも……。


「朱里はそれでいいの? 大好きなお兄さんから地位を奪って。兄弟で殺し合ってまでする事?」


 朱里はまっすぐな瞳で私を見つめながら言った。


「もう遅いです。僕は決めて動き出してしまったから。とめられません」


 その揺るぎない目を見て、もう止めても無駄なのだと悟った。悲しいけれど、もう朱里に何を言っても無駄だ。せめて最悪の事態になる前に、エドにこの事を知らせないと。


「すみませんそろそろ戻らないといけないので」


 立ち去ろうとする朱里を引き留めた。


「ドレスのままだと窮屈で眠れないわ。着替えたい」

「わかりました。侍女に用意させます」


 そしてまた一人になった。朱里の決意に満ちた後ろ姿を見て、涙が一筋こぼれた。

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