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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第2章 諸国漫遊編
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後継者の資質3

 退屈な馬車の旅は少し変化が見え始めた。

 平原を走り続け、次第に樹木が無くなり、遮るものの無い広大な草原を抜け、今は石ぐらいしか転がっていない荒野を進んでいた。


「まずい。なんだこの水は」


 アルは用意された水を飲むなり、不満をのべた。私も恐る恐る口をつけてみる。塩気が効いていて、何か不純物が色々混じってる感じの味がした。


「いらないなら返していただこう。この辺りでは水は大変な貴重品だ。これでも何度も濾過して、状態のいい水だ」


 確かにこの所、川とか池とか水辺らしきものを見ていない。まずい水ではあるが、人間水を飲まずに生きてはいけない。特に日差しをさえぎる物の無い荒野のため、北方の国だという事を忘れるくらい、喉が渇く。

 アルは文句を言いながら、渋々水を口にしていた。そんなアルを横目にエドへ話しかけた。


「エドは何でも知ってるね。同じ王子でもアルよりずっと偉いよ」

「前にも言ったが、帝国が特殊なんだ。旅行慣れしている王族なんて普通いないぞ」


 アルが文句を言うのをわかっててこんな言い方したのは、エドに自分の力に自信を持ってほしいからだ。しかしエドの表情は変わらず無愛想なままだった。

 やっぱりそう簡単に悩みが解決するなら、初めから悩まないか……。


「今日の日暮れ前にはブアイ族のオアシスにつく。そうすればもう少しましな水が手に入るだろう」

「ブアイ族?」


「この辺りで取れる塩や石を売り買いしたり、草原まで移動して放牧したりして生活している部族だ。帝国とも交易をしている友好部族だ」


 エドの言葉通り夕暮れ時には、遠目に大きなテントの様な建物が見えてきた。

 私達一行を出迎えるように、刺繍がたくさん入った布地の服を着た部族の人々が出てきた。出迎えに答えるように、エドが馬車から出ると、歓声とともに囲まれた。

 私は驚きながら、朱里に聞いた。


「友好部族ってずいぶん仲がいいのね」

「兄上は特別です。以前ブアイ族が他の部族と牧草地の取り合いで諍いになった時、2つの部族の間にたって調停して解決したんですって。それからブアイ族の中で兄上の評価は高まる一方らしいですよ」


 誇らしげに兄を褒める朱里。なんだエドも、指導者らしい事やってるんじゃない。

 人々に頼られ囲まれてるエドもまた、彼らしく堂々と見えた。


 エドのおかげで私達は大歓迎で、特別待遇で休ませてもらえた。羊を1頭丸ごとさばいてふるまってくれたり、酒を断るのが大変なぐらいだ。

 日本では16なんてまだ未成年だけど、こちらでは結婚適齢期の成人だから、酒を飲んでもいいそうだ。

 それでもお酒を飲む気がしなくて、私は女性達が集まる場所に逃げ出した。


 男達が酒を酌み交わしている間、女達は酒やつまみの用意に忙しくしながら、合間に交代で食事を取っていた。私が手伝おうとしても、客人だから手伝わせられないと断られた。

 純粋に遠方からの客をもてなす彼女たちは楽しそうで、大災害とかそんな世界の大事などないかのようだった。

 彼女らに不安はないのか?と尋ねると、遠くの国では大騒ぎらしいが、この辺りでそんな事起こらないから実感がないというのだった。

 この辺りでは人の住む数が少ないから、確立の問題で大災害に遭遇しないのだろうか?


 そのまま私は彼女達の働く姿をぼんやり眺める事にした。西洋ファンタジーな王国と違い、彼女達は中央アジアの遊牧民のように、華やかな刺繍の布や、装飾品をたっぷり付けて着飾っていた。

 宴の山がすぎ、ひと段落した彼女達に、私は話しかけた。


「綺麗な服や飾りね」

「自分で作るのよ。刺繍が出来ないと、嫁に行けないわ。金属の細工は職人がやるんだけどね」


 私は特に彼女達の手作りだというアクセサリーが気になった。半透明の青やピンクの石が、紐で結ばれて、素朴ながら綺麗な首飾りになっている。

 ひとつ欲しいなと思ったが、手作りの品ってどれくらい高価なものなんだろう。石を買って、穴開けて紐を通せば作れるだろうか?


「その石って高価なものなの?」

「売り物にならないような安い石ばかりよ。磨いても光ったりしないし、この辺りじゃあ道端に転がってるものだから」


 半貴石の様なものだろうか?宝石ほど高価な値はつかないわけか。


「水色の石、1個分けてもらえない?」

「何に使うの?」


「首飾りにしてお守りにしようかと思って」

「お守り?こんな石が?」


「私がいた国だと、こういう石がパワーストーンって言われて色々効果があったのよ。確かこういう水色のターコイズっていう石は旅の安全や心配ごとを取り除くとか、こっちのピンクのローズクォーツっぽいのは恋愛成就とか」


 私の説明に前のめりになって聞く女性達。やっぱりおまじないとかって、どこの世界の女性にも人気あるのだな……。


「まじないの効果があるって売り文句付けたら売れるかしら」

「どうやって売ったらいいと思う?やっぱり首飾り?」


 次々と質問攻めにされた。女の子らしくおまじないに興味あるのかと思ったら、意外に商魂たくましい。


「簡単に穴開けて紐通したのもいいし、布袋に入れて皮紐で首からぶら下げられるようにしてもいいし。用は肌身離さず持ち歩く事が重要だから」


「ありがとう。いい稼ぎになりそう。欲しい石があったらお礼にあげるわ」


 そう言われたので、私は遠慮なく、大ぶりのターコイズの様な水色の石をもらった。さてどうしたもんか。本当は加工してもらった奴をもらえれば嬉しかったが、明日の朝出立だから時間がない。どうしよう。


「何だこんな所にいたのか。探したぞ」

「アル。どうしたの?」


 気づけばアルが慌てた様子で私の側にやってきた。何かあったのだろうか?


「どうしたじゃない。急にいなくなるからどこにいったのかと……」

「心配してくれた?」


「明はどんな行動を起こすかわからないからな。また深夜にこっそり抜け出されたら困る」


 まだ王国で城から抜け出した事気にしてるのか。意外にしつこいな。


「女の人達と話してたの。石もらっちゃった」

「なんだ。こんな安物の石より、もっと綺麗な宝石ぐらい、俺がやるのに」


「いいの。私はこう言う石好きなの。旅の守護石でパワーストーンなんだから」

「守護石な……。それで石だけもらってどうするつもりだ?」


 痛い所をつかれて、私は思わず言い淀んだ。


「……今考えてる所よ」

「俺が首飾りにしてやろうか?」


 アルの意外な申し出に、私は驚いた。


「出来るの?」

「凝った事は出来ないが、穴を開けて、紐を通すぐらいならな。ついでに本物の守護石にしてやる」


「本物の守護石?」

「魔力を石に込めて、魔法の力を発揮する石に変える事だ。まあその程度の石では、重傷を軽傷にするくらいの防御魔法くらいしか、作れないがな」


 そんなマジックアイテムにこの石が変身するなら嬉しい。


「じゃあお願い。アル」

「任せておけ」


 アルは王子スマイルを浮かべて、石を受け取った。

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