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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第1章 聖マルグリット編
4/99

異世界という名の夢4

 夢の中で眠りについたら、夢から覚めて現実に戻れるかと思ったが。

 見事に期待は裏切られた。



 目が覚めても異世界。

 ずいぶん長い夢だなぁ。


 なかなか覚めない夢なら、長期戦を覚悟して、創造神らしき事をしてみようじゃないか。



 ちなみに私につけられたのは、召使いのメイドさんと小太りの中年文官だけ。

 いくら疑ってるからって神相手に2名だけって、ぞんざいだな。



 召使いさんは普段『私は家具です』って感じで、無表情で部屋の隅に控えてる。

 余計な事は一切話さないし、聞いても当たり障り無い言葉しか返ってこない。

 私をバカにしてるのか?それとも召使いってみんなこんなもの?



 だから質問はオッサン文官に限られてしまう。

 この人は愛想よくニコニコしてるんだけど、ただの愛想笑いっぽいんだよな……

 その証拠に私がボロださないか、時々鋭い質問で探ってくる。



 っていうか、私何のために呼び出されたわけ?


 本当は国のお偉いさんとかがやってきて、『創造神様お助けください』とか言うもんだと思うんだけど……

 あの狂人教主は最初だけで、そうそうにいなくなったし。

 『王国』って言うんだから王様いるんだろうけど、王族どころか貴族の一人もこない。


 仕方ないからオッサン文官に聞いてみた。

「何故妾を呼び出したのじゃ」

 確か私の小説では、最初の依頼は村を襲うコボルド退治とかだったんだよな。

 そんなんで一々創造神呼び出すなって突っ込むとこから話が始まるんだよ。


 しかしオッサン文官の回答は、私の予想のはるか上をいっていた。

「この世界全体を襲う未曽有の『大災害』から民をお救い頂くためです」

「だいさいがい?」

「ご存じないのですか?」

 『創造神のくせに』という疑いの眼差しが返ってきた。


「もちろん存じておるが、なにぶん遠くから眺めていただけじゃからな。詳しい事を知りたい。『大災害』に関する詳細な資料を持って参れ」

「かしこまりました」

 笑顔でお辞儀をしてオッサン文官は下がった。

 大災害ってなんだ?そんな設定想像した覚えもないんだけど。

 まあ資料を待つか。


 ちなみにこの世界の共通言語は日本語だ。

 私が小説の中でそう設定したのだ。

 主人公が各国を巡る珍道中という話だったから、国が変わる事に言葉の壁にぶつかってたら話進まないし。

 安易に魔法に頼るのは嫌いだ。(この世界に魔法はある設定だけどね)

 だから世界中統一言語があるって事にしたんだ。

 最初はオリジナル言語を作ろうと、日本語文法をベースに、新しい単語・新しい文字で『ハナモゲタ語』を作ったんだけど……

 ついつい熱入れて凝ったの作りすぎて、読者に説明するのに10ページぐらいかかりそうだったんだよね。

 地味な言語説明に10ページってないわーって事でボツにした。

 で、面倒くさくなって、ええい日本人が書いた小説の中の話だし、日本語でいいやってなった。

 適当に書いてすみません。

 まあおかげで言葉に不自由しないんだけど、下手にしゃべったり書いたりできないから気を使う。


 しばらくしてオッサン文官が山のような資料を持ってやってきた。

「主な事例を記録した資料をお持ちしました」

「大儀であった。しばらく下がっていてよいぞ」

「かしこまりました」


 私はゆっくり目を通しながら頭を抱えたくなった。

 なんだこの鬱展開。


 『大災害』を簡単に説明すると『存在の消滅』。

 ある日突然身近な人が突然消える。

 失踪とかじゃなく、目の前でふっと消えたりするらしい。

 しかも本人だけじゃなく、その人が生涯作った物も同時に消える。

 イス職人が消えたらイスが無くなるし、作家が消えたら本がなくなる。

 さっきまで確かにあったはずのものが消えて、人の消滅を思い知る。

 想像しただけでぞっとする。


 しかもこの現象は世界各地で発生していて、大規模だと集落一つ消えてしまう事もあるようだ。



 原因不明のこの現象に人々は恐怖に怯えて暮らしてるらしい。

 まあ、こんなわけわからない事が起こったら神頼みしたくなるよなぁ……



 どうする?

 私は創造神って事になってるけど、別に何の能力もないしな……。

 私ができる事って書く事だけだし……。


 書いてみるか。

 創造神が現れてみごと『大災害』を解決し、日本へ帰りました。めでたしめでたしって感じな事を。

 日本語で書いて他の人に読まれたら厄介だな……。

 よし『ハナモゲタ語』で書こう。

 あれならボツ設定だから、この世界の人間にはわからないし、制作者の私だけがわかる暗号みたいなものだ。


 羽ペンって使いづらいなぁ……などと思いながらカリカリ書いていたら、突然声がかかった。

「さすが創造神様『神語』をお使いになるのですね」

 オッサン文官だった。

「読めるのか?」

「私はちょっとかじっただけで……神に使える物の言語ですからね。キルギス教団の聖職者達なら読み書きできますが」


 私は呆然とした。

 私の頭の中だけで、具現化しなかったボツ設定が、何故この世界で利用されているのだ?

 この世界が私の夢だからか?

 しかし『神語』などという言葉は想像もしてなかったのに……。


 何かがおかしい。

 私はまだこれは夢だと信じていたが、自分の知らない事態に恐怖していた。

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