闇色の襲撃者と戦う男達1
※注意 戦闘シーンの一部に残酷表現が含まれます
いきなりバトル展開突入
作者の乏しい文章力でバトルなんて書けるんだろうか?
読者様に伝わる様な文章になっているでしょうか?
朱里に手を引かれ、テントからゆっくりと出て行く。姿勢を低くし、テントの陰から周囲を見渡すと、まばらな灯りの中で剣を交える男達の姿があった。映画の様な光景が目の前で繰り広げられ、私は思わず膝から崩れ落ちその場に座り込んだ。
剣と剣が重なり、火花が散るような激しいぶつかり合い。相手を威嚇するように、味方を鼓舞するように、兵士達の雄叫びがあちらこちらから聞こえてくる。
敗者は肉が切り裂かれ、勝者は返り血を浴びる。その残酷な光景を目の当たりにして、私は腰を抜かして立ち上がれず。歯をカタカタと鳴らして震えた。
目をそらさずに残酷な殺し合いを見続けるだけで精一杯で、呼吸すら上手くできない。
「創造神様、明様!」
私の手を強く握りしめて、朱里が耳元で叫んでも、私の目は殺し合う兵士達から離れず、喉の奥がからからと渇いて声も出ない。
薄暗い灯りで視界が悪く、生き残っている者たちは皆帰り血を浴びていて、戦う兵士達のどちらが味方か敵かも私には区別がつかない。敵が誰かもわからない中を移動して、逃げ出すなんて私には無理だ。辺りから漂う血の匂いに反応するように、湧き上がってくる吐き気を、口を覆って堪えるのが精一杯。
今すぐ日本に帰りたい。自分の部屋のベッドで丸くなって、これは悪い夢だと割り切って、忘れてしまいたい。学校と家の往復だった日常を平凡で退屈だと思っていたけれど、今はなんて平和で幸せだったのかと羨ましく思える。
すぐ近くに気配を感じて慌てて振り向くと、私に背を向けて立っている朱里の背中が見えた。見上げれば、朱里よりずっと背が高く厳つい兵士が、朱里に剣を振りおろしている。
朱里が殺されちゃう!恐ろしくて思わず固く目をつぶってしまった。すぐに金属のぶつかる音と、朱里が食いしばる様な声が聞こえてきた。目を開けると朱里は男の剣を何とか受け流し、怪我ひとつ負わずに立っていた。
よかった!と安堵したのもつかの間、兵士の剣が容赦なく朱里を襲い続ける。朱里は一歩も引く事なく、剣を交え続けているが、呼吸は苦しくつらそうだった。
朱里が身動きできないのは私のせいだ。私がこんな所で座りこんでいるから、逃げる事もろくな反撃も出来ない。逃げなきゃ、立ち上がれ自分!そう思っても膝が笑って足に力が入らない。このままじゃ朱里も私も殺されちゃう。
いくつもの剣を、受け止め続けた朱里の剣が、耐えきれずに飛ばされた。武器が地に落ち、無防備な朱里に兵士は剣を突きつける。兵士が何かを言おうと口を開いた。幼い少年の命を奪うためらいか、憐みの言葉か。私はそんな言葉聞きたくなくて、耳をふさいで叫んだ。
「やめて!」
その時夜の闇に血しぶきが舞った。朱里の血ではない。剣を突きつけた兵士の首からあふれたものだった。血の雨が降るなんてあまりに非現実的すぎて、信じられないのだが、私の顔に飛び散った血が、これは現実だと教えてくれる。
「小僧。よく堪えた。褒めてやる」
非常事態にも関わらず、余裕に満ちたアルの声が聞こえた。どうやら兵士の背後にやってきたアルが、兵士の息の根を止めたようだ。ほんの少し前まで朱里を追いつめていた兵士は、今地面に横たわり血だまりを作っている。自分が殺した男を見向きもせずにアルは不敵に笑っていた。
「明は俺が守る。小僧はご主人様の所にでも行ってろ」
城で王子様をしていた気品のある姿や、女を口説くときの嫌らしさとも違う、血に飢えた獣の様に興奮したアルは荒っぽい声でそう言い放った。肩で息をしていた朱里は、返事を返すこともできずに頷いた。そして剣を拾い上げ振り向いた。
「明様。どうぞご無事で」
額に珠の様な汗を流しながら、朱里は優しく微笑んだ。どうしてこんな時に笑えるんだろう。私を庇って殺されかけたのに。私より幼い朱里の方がずっと強く、対する私はなんて情けないんだろう。
息を整えた朱里は、エドの元へと駆けだした。
「明。立てるか?」
アルが差し出した手に、私は手を伸ばそうとして悲鳴を上げた。アルの手は血に濡れていた。よく見れば着ている物にも、髪にも、顔にも、血が飛び散っている。綺麗なアルの顔に不釣り合いで、恐ろしくて、まるで私の知らない人みたいに見えた。
「ああ、下賤な輩の血で汚れた姿ですまない。ここは戦場だから我慢しろ」
アルはたいしたことではないと言った感じで、自分のマントで手をぬぐい、また私に差し出した。私が恐る恐る手を伸ばすと、アルは力強く私を引き上げ、私の腰に手を回し支えてくれた。支えなしに立っていられないほど、私の足が震えていた。
「……あ、あるは、怪我、して……ない?」
「大丈夫だ。俺は無敵だ」
こんな戦場で、たった今一人の人間の息の根を止めたと言うのに、アルはあまりにいつも通りで……。私は急に緊張の糸が切れたようにぽろぽろと泣き始めてしまった。涙に頬についていた血が混じり、口元へと流れ落ちてくる。塩と鉄の混じった涙の味は最悪だった。喉の奥からまた吐き気が込み上げてくる。
そんな私をなだめるように、アルは余裕の笑みで微笑んで、私の背中を撫でてくれた。
まだあちこちで戦いは続いているのに、アルはアルなんだと思っただけで、ほっとしてしまう自分が恥ずかしい。
「明は泣き顔をもすごくいい」
アルのドS発言に、反射的に飛び退ってアルと距離を取る。何考えてるのよ、野獣王子め!
「自分一人で歩けそうだな」
言われて気付いた。いつの間にか足の震えが止まっている。今の発言って私を元気づけるための冗談?冗談だよね?冗談だと言って!
「どうする?俺と逃げるか?一緒に逃げてくれるのだろう?」
アルは余裕の笑みを浮かべながら、私の心を惑わした。逃げたい。そう喉まで出かかった言葉を飲み込む。アルなら私一人連れて逃げる事は可能だろう。本音では今すぐにも逃げ出したい。
でもここにはまだエドと朱里がいる。私を庇って必死に戦った朱里と、大切な親友を置き去りにして、逃げ出したりなんてできない。
私は首を横に振ってアルの提案を拒否した。
「じゃあどうしたい?」
私は深呼吸をして気持ちを落ち着けて考えた。今私が出来る事なんて何もない。むしろ私がいるだけで足手まといだ。それでも自分だけ逃げ出したくない。
「私はここに残る」
アルはもう笑ってなかった。心の奥まで見通すような鋭い目つきで、私をじっと見つめていた。
朱里は可愛いだけじゃないのです
ショタでも男な所を見せてくれるはず