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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第1章 聖マルグリット編
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微妙な三角関係3

 クリスティーナが飛び出していった後の空気の気まずさに、私は逃げ出したくてしかたがなかった。王様思いっきりエドの事睨んでるし、エドはさっきまでの笑顔を引っ込めて無愛想な表情で淡々とお茶飲んでるし。

 アルの事聞ける空気じゃないし、私ここにいなくてもいいんじゃない?というか、初めからお邪魔虫だよね。

 立ち上がろうとした私の腕をエドが掴んで引きとめた。仕方なく私も座りなおす。


 重い、重い沈黙を破ったのはエドだった。


「陛下。そろそろ今回の本当の目的を教えてくださいませんか?」

「本当の目的?なんのことですかな?私はただクリスティーナと貴方の縁談を進めようとしただけですが」


「陛下のクリスティーナ姫の可愛がりぶりを知らぬものは他国にもいません。そんな秘蔵の姫をわざわざ手放そうなどというからには、何か理由がおありなのでしょう。なにせもし姫が私に嫁ぐとなったら、陛下は姫に2度と会えなくなりますからね」

「2度と会えなくなるとはどういう事じゃ?」



「我が国には他国に漏らせぬ秘密が多いため、他国人の入国はできない。過去に他国から嫁いできた他国の王族も、一生国外に出る事を禁じられた」



 秘密主義国家、鎖国、その異様な国と制度をすっかり忘れていた。一生国外に出れないなんて、まるで大きな牢獄に入れられるようで恐ろしい。

 この娘バカ王がいくら娘が望んだからといって、簡単にそんな国に嫁がせるわけがない。

 エドが疑問に思っているのもそこなんだろう。



「確かに私は娘を愛している。しかし父親である前に私は王だ。国のため必要であれば、娘を政治の道具にする覚悟がある」

「そこまでして我が国との結びつきを強くする理由は?まさか戦争を始めるつもりですか?」



 王は否定もせず、黙って微笑んだ。エドもその無言から何かくみ取ったようで無言だった。なんか二人の会話についてけないんだけど。なんでクリスティーナとエドが結婚すると戦争になるんだろう?

 王とエドが私をちらっと見た。その視線に他言無用という威圧が含まれていてビビった。

 言わない言わない。私この世界に友達少ないし。私は確認の意味で頷いた。そしてやっとエドが重い口を開いた。



「華無荷田国と本気で戦うおつもりですか?我が国は今事を構える気はありませんよ」

「貴国には華無荷田国を牽制していただけるだけで結構」



 華無荷田国って確か聖マルグリット王国と碧海帝国の間にある国。つまりこの王様は華無荷田国と戦争するために帝国を味方につけようと、娘とエドの政略結婚をすすめてるわけね。

 マーリオはフランツ王は戦争をしない主義って言ってたけどするんじゃん。


「失礼ながら、聖マルグリット王国1国で華無荷田国と戦える戦力があるとは思えませんが」

「正確に言うなら我が国が攻め込むのは、華無荷田国の属国となっているカプア公国。華無荷田国と全面戦争をする気はありません」


 カプア公国って私の知らない国だな。その名を聞いたとたん、エドの表情が渋くなった。


「カプア公国は確か『大災害』で主産業の宝玉の産出する山が消えたはずです。戦争をしてまで奪う価値はもはやあの国にはない」

「だからこそ今なら華無荷田国が価値のないカプア公国を手放すのです。我が国としては現在の資源価値より、悲願の達成の方が大きい。なにせ元々あの国は200年前までは我が国の領土。文化も近く、王族の血筋も我が王家の分家。200年前に華無荷田国と帝国に負けて奪われて以来の屈辱ですからな」


 200年前の帝国が他国と協力して聖マルグリット王国と戦った戦争。その時帝国と組んだのは華無荷田国だったのか。

 カプア公国の名前を私が知らない理由がわかった。私の作った小説の中に帝国はない。帝国が引き起こした戦争とその結果について私はわからないのだ。


「皮肉なものですな。200年前は帝国は華無荷田国についてカプア公国を奪ったのに、今度は我が国についてカプア公国を奪おうとしている」

「まだ協力すると言ったわけではありません。そもそも我が国に協力する利はない」


 王はタヌキおやじっと罵ってやりたいほど、老獪な笑みを浮かべた。



「実はカプア公国には華無荷田国も知らない鉄の隠し鉱山があります。我が国がカプア公国を取り戻したあかつきには、貴国に市場価格より安く独占的に販売するという事ならいかがかな?」



「もしそれが本当なら、貴重な鉱山を華無荷田国が簡単に手放すはずがない」

「だからこその政略結婚ですよ。表向きは結婚で我が国と帝国が手を結んだと華無荷田国に思わせて戦争をする。裏では鉱山の独占販売権で取引というわけです」


「政略結婚は華無荷田国を欺くための策というわけですね。では婚約だけして、頃合いをみて婚約破棄でもかまわないのでは」

「それでもかまいません。カプア公国を我が国が領有し、鉄の採掘が始まれば、鉱山の存在も時期に華無荷田国にしれる。そうなれば欺く必要もなくなりますからな」


「そういう話なら検討させていただく。本国の許可も必要なので、しばらく時間をいただけないだろうか?」

「もちろん。我が国も戦争の準備にしばし時間がかかりますからな」


 二人の話を無言で聞きながら私は苛立っていた。

 二人ともクリスティーナの気持ちわかってるよね。わかってて形だけの婚約とか、必要なくなったら婚約破棄とか言って。しかも華無荷田国を騙すための策ならクリスティーナも騙して本当の婚約と思わせるんだ。

 後から二人の共謀を知ったらクリスティーナがどれだけ傷つくか。そんな感傷なんて国の利益から考えたら些細な事なのだろうか。

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