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異世界創造神は女子高生  作者: 斉凛
第1章 聖マルグリット編
13/99

一人孤独の探索行3

 ユリアを失った寂しさを忘れたくて、夢中で『大災害』の事を考えた。


 オッサン文官がやっと碧海帝国の資料をそろえてくれたので、まずはそれを読み込む。

 どうやら『鎖国』以外でも異色の国のようだ。


 国全体で魔法がほとんど普及してないらしい。

 これは極めて特殊な事だ。

 魔法というのは強力な兵器だ。

 だから各国は特殊魔法の研究に熱心になる。強力な魔法なくしては戦争で負けてしまう。


 しかし魔法もないのに帝国は、この世界でもかなり強い力を持っている。

 帝国では魔法の代わりに不思議な力が発展しているらしい。

 それは『科学』と呼ばれている。


 科学技術が発展した国。それは剣と魔法のファンタジーな世界を根底から覆すような設定だ。

 『鎖国』のため、帝国国内の文化・技術レベルは不明だが、戦争では大砲や銃が実装されている。

 『鎖国』を行ってるのも、その技術力の漏洩を阻止するためで、他国との国交を絶っているわけではないらしい。


 外交は基本的に王族とか帝国の代表者が、他国に訪問して行い、他国の外交官は『出島』までしか入国できない。

 しかも不思議なのは帝の直系の王族はいるものの貴族はなく、代わりに実力で選ばれた官僚が帝の下で政治を行っているという。


 貴族中心の国ばかりのこの世界では、理解されない政治形態かもしれない。



 これだけ異色の国が何故出来上がったのかも謎だ。

 なんか200年前国境の辺境地に人々が集まって、気づいたら国になってたらしい。



 資料を読み終えて、私はますますわからなくなった。

 200年前にできたこの国と『大災害』には接点なんて何もない。

 でも碧海帝国が偶然できた国という事はありえない。あまりにも日本の文化や技術が入りすぎて、誰かが意図的に作ったとしか思えない。

 でもこの世界の作者である私が作ったのではないのだから、誰がこの国を作ったのだろう?



 私が考え事にふけっていたら、突然オバサンメイドに声をかけられた。

「創造神様。お客様がお見えです」

 客とは誰だろう?私は部屋に案内するように言って、応接用のソファに座った。

 部屋に入ってきたのは、まだあどけなさを残した少年だった。

 黒髪、黒い瞳に丸メガネをかけている。そういえばメガネをかけた人間をこの世界で初めて見た。


「はじめてお目にかかります、創造神様。私は碧海帝国王子エドガー・フォンの従者シュリと申します」

 丁寧な日本式のお辞儀とともに少年はそう名乗った。

 エドガーの従者か。言われてみれば、服装などもエドガーと似ていた。

「従者シュリとやらが妾に何用じゃ」

「我が主は多忙で創造神様に当分お会いできないので、私が代わりに創造神様のお相手をするようにと仰せ使いました」

 人懐っこい笑みを浮かべる少年は、裏表などない素直な人柄を感じさせる。エドガーがこの少年をわざわざ私の所へこさせた理由がわかる気がする。


 たぶん、誰にも気を許せない寂しがりな私を慰めようとしているのだ。エドガーの気遣いが嬉しかった。

 碧海帝国の人間なら、あのバカ王子がどうこうしようとしても、邪魔はできないはずだし。


「ちょうどよかった。シュリよ。妾は今碧海帝国について調べ物をしている所じゃ。そなたの国の話を聞かせてくれ」

 シュリは困ったような表情をした。無理もない。秘密主義国家では、簡単に国の話などできないだろう。

 私はシュリを安心させるように、できるだけ優しい表情と声を作った。

「そなたが話せる範囲でよい。話せないことは無理に話さなくてよいのだぞ」

 シュリはほっとしたように息をつき、頬を緩ませた。

 なんかエドガーの従者らしい、人のいい癒し系キャラだな。見てるだけで癒されるけど、できれば頭なでなでしたいくらい可愛い。


「そなたのつけているメガネは碧海帝国独自の技術か?」

「創造神様はメガネを御存じなのですか?」

 私は普段は裸眼だけど、文字を読むときはいつもメガネをつけていた。メガネがないせいで、この世界で文字を読むのはつらい。

「妾も文字を読む時はメガネをつけるゆえ、今はなくて不便しておる。そなたの国に行かれるなら、ひとつ作らせたいものじゃな」

「ぼ、僕のでよければ」


 慌ててシュリはメガネを差し出す。私は仕方なく受け取ってかけようとしたがフレームが小さすぎる上に、度もきつすぎて私にはあわなかった。

「心遣いは嬉しいが、妾にはあわぬようじゃな」

 しょんぼりとするシュリにメガネをかけてあげて、頭をなでた。さらさらとした心地よい手触りの髪が心地よい。

「大丈夫じゃ。妾はシュリほど目は悪くない。メガネがなくてもそなたの顔ははっきりわかる」

 シュリは真っ赤な顔をして俯いた。やっぱり可愛い。こんな弟ほしいな。

 癒し系ペットを手に入れて、私は久しぶりに穏やかな気持ちになれた。

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