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時間道路24号線

作者: 猫みみ

 ある日の昼さがり、私はベッドの上でゴロゴロしていた。頭上の壁掛け時計が1時を指している。アルバイトも入っていなくて、こんなにゆったり出来る日など滅多にない。開けた窓から入ってくる温かい風、そして、何よりの満腹状態にやがてウトウトし始めた。

 ふと、寝る寸前の、部屋のフラッとした揺れの感覚に襲われたとき、予想もしない事態は起きた。

 その揺れと共に、壁掛け時計が顔面へと落ちてきた。私は為す術もなく、ただ呆然と次第に視界を覆い尽くそうとする時計を眺める他無かったのだった。

 そしてついに、目の前が真っ暗になり、重いガラスの割れる音だけが耳に響いた。


 気が付けば、私はワケの分からない不思議な空間にいた。自分自身、夢だと思った。いや、思わずにはいられなかった。何せ、見渡す限り深海のような薄暗い場所が広がっていて、私の立っている所は真っ正面に続く一本の道。遠くには、振り子時計の何倍も大きい巨大な振り子がゆっくりゆっくり振れていた。後ろにもその道は続いていたが、クリーム色の道は丁度私のかかとの辺りで薄くなって、それより後ろへは行けないようになっているようだ。

 仕方なく歩き始めると、私を追いかけるように道は後から後から色を失っていった。どうやら、後戻りも出来ない。ただただ前へ進んで行くしかないようだ。こうなったら、意地でも最後まで進んでやろうと思った。だがしかし、歩けども歩けどもアクションの一つすら無いのである。

 しばらく歩き続けたところで、何の変わりも無いことに愕然としていると、突然に道の両側に大きなスクリーンが、それはまるで壁のように道に沿ってならんだ。あまりにも突然すぎて、私は驚き立ち止まってしまった。が、それもつかの間、スクリーンにはいつかの私が映し出されていた。

 まずはじめに映し出されたのは、つい最近の解雇されたばかりの私だった。がっくりと肩を落として家路に着く私。次のスクリーンに映し出されていたのは、大学受験に落ちた時の私。それから、高校受験にこれまた落ちた時の私。

 道を歩くと同時に、並ぶスクリーンには時間を遡って、私の思い出が映し出されていった。

中学校の入学式で、家族みんなが祝ってくれたこと。

小学校でいじめられた私を親が気遣ってくれたこと。

 嫌な思い出から、次第に良い思い出へと変わっていく。

 何気なく下を向くと、道に数字が書かれていた。道の先に行くにつれ、その数字はだんだん少なくなっていった。私は察した。……これは自分の年齢であると。

 そして、先を急いだ。思い出を見るのが辛くなった。歳を重ねていくうちに、嫌な思い出ばかりにになっていくのが分かった。私は走り出した。走りながら考えた。いつからこんな人生を歩むようになっていったのか。悲しくなった。どうして どうして どうして…。


 ふいに何かにぶつかった。道の最後はスクリーンだった。今まであったスクリーンよりも一回り大きなものであった。道路の表示はゼロ。そうか、0歳の時、産まれた時の思い出か。まだ何も映ってはいなかったが、何故か体が震えてきた。

 不安で押しつぶされそうになった時、ついに最後の思い出が目の前に現れた。それは、私が産まれたことを喜んでくれている家族の写真だった。

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……思わず出た叫び声はもはや抑えることすら不可能だった。心の奥底からの叫びだった。私には分からなかった。何故そこまで私が産まれたことを喜んでくれるのか、分からなかった。自分はいらない人間だと、ずっと思いこんでいた。嫌だ。こんな思い出も、「私」という名の人間も嫌だ。嫌だ。いやだ。イヤだ。頭を抱え込んで叫んだ。

 嫌だぁぁぁぁぁぁ………

 

 私は、鳥のさえずりに目を覚ました。起きあがって、はじめに顔をさすった。怪我はしていない。どうやら、悪い夢を見ていたようだとほっとした。思い出したくもない夢の中で、思い出したくもない思い出を見せられるなんて。そうだ、時計は。もちろん、きちんと壁に掛かっていた。

 しかし、ガラスのカバーが割れていた。恐る恐る周りを見渡すと、破片が散らばっているではないか。一気に寒気がして、鳥肌が私を包んだ。

 うわぁぁぁぁぁぁ………

 マンションの狭い一室で、叫びはいつまでも続いた。壊れ狂った掛け時計の針は、その後ずっと、時間が戻るかのように凄い勢いで、反時計回りにまわっていたという。

はぁ~

また短編ですか。しかも、超短編。

こんなモノしか書けなくてごめんなさい…

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