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たいらな背中

作者: 歌川 詩季
掲載日:2026/09/12

 背中、好きだよね。

 鬣(たてがみ)を奪われたライオンは

 噛(か)み痕(あと)を後世(こうせい)に残せるか

 着飾ることをやめた裸の王様の

 肉体美に傅(かしず)く物好きも居よう


 命 燃え尽きたこの先がどうなろうと

 そんなの知ったこっちゃないぜ

 翼も手にできなかった背中に

 なにひとつ恥じない生きかたをしたって

 口伝はそれを歪(ゆが)めてく


 神格化された伝説に

 疑ってかかるのは可愛気(かわいげ)もないけれど

 信じる者は馬鹿を見る

 ある種(しゅ)の教訓は正直だ



 ほとぼりを冷ましても体温は

 ぬくもりを奥底に宿してた

 威を借るままに決めた狐の嫁入りに

 横恋慕を企(たくら)む間男(まおとこ)の影が


 とうに焼け落ちたこの愛はどうとでもさ

 いまさら聞いたふうな口で

 重荷を負(お)うことなかった背中は

 たいらでも広さがのっぺりとしていて

 欠けているのは頼もしさ


 簡略化された伝統に

 忠誠を守るのは気苦労が絶えなくて

 溺れる者が縋(すが)る藁(わら)

 あるシチュエーションにぴったりだ

 指はもちろんだけど、肘、膝も多い。


挿絵(By みてみん)

制作:ひだまりのねこ先生

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