6.生存戦略即席バディー
ー王国兵団選抜試験開始の合図がなるー
異形獣に一目散に挑む参加者もいれば、仲間を集めてチームで作戦を練るものもいるようだ。
さっき話しかけてきた槍斧の女もどうやらチームを組んで異形獣を仕留めにいくようだ。まぁチームを組むのがこの試験の定石だろう。俺もそう思った。
しかしチームを組む前に低レベルの異形獣が監督役が押さえている上級の異形獣の間をすり抜けてこちらへ向かってくる。俺たちが何か計画をたてる時間を待ってくれるわけがなかった。
この選抜試験では異形獣を一匹でも倒せばクリアという比較的簡単な条件だが、一匹倒しても平原にいる異形獣はいくらでも襲ってくる。選抜試験終了まで生き残るのが重要なんだ。
そう考えていた俺の方に異形獣二匹に追われている小柄な人物がこちらに向かってくるのが見えた。
フードを被り手には魔道書物をもっている。魔法で攻撃しつつこちらに走ってきているがあの様子だともうすぐ追いつかれてしまうだろう。
しかたない…いつかは戦わないといけないんだ。
俺は震える足を押さえつけフードの人物に加勢する。
「大丈夫か!加勢する。」
フードの人物は少し驚いた顔をしたようにみえた。
「ありがとう。魔法攻撃だけで2体は捌ききれなかった。助かる。」
フードの人物の腰にある帯刀ベルトが千切れている。どうやら途中で剣を落として、魔法だけでどうにか凌いで逃げてきたようだ。
特訓した剣義で異形獣の攻撃をながす。
1体に気を取られるともう1体の攻撃があたりかける。
少しずつ2体ともにダメージをあたら得られてはいるがギリギリだ。上級の異形獣ではないが複数体集まるとかなり厄介だ。
他のチームも複数体の異形獣に囲まれ同じ状況になっているとみた。何か一気にダメージを与えられる方法はないか…。いや1匹1匹を確実に倒すための隙が欲しい。
そう考えているとフードの人物が口を開いた。
「このままじゃジリ貧だね。こちらがやられかねない。」
「君が攻撃をながしてくれてる間に、マジックトラップを設置したからここまで誘導するのを手伝ってくれないか?」
「マジックトラップ??それでコイツらを倒せるんだな?」
「あぁ。ただ設置した場所まで誘きよせるのが僕には難しいから。危険な役割を押し付けてしまうが。」
「わかった!このままジリジリ削れるよりましだ!まかせろ。なんとかする。」
正直なんとかできる自信はなかったが死ぬよりましだ!!コイツらを誘きよせるには…
上級の異形獣より知能は低そうだがすばしっこい。目もないしどうやってコイツらは位置を特定してる…?考えろ俺!!
異形獣の攻撃を捌き隙を見つけて攻撃しながら敵を分析する。俺の剣が異形獣の皮膚に刺さったとき今までより悲痛な叫び声を異形獣が上げた。
ギィィィィッ…!!
今までの攻撃より効いているようだ。今の攻撃とさっきまでの攻撃の違いはなんだ…?
異形獣の傷口から剣を素早く抜いたとき白いハニカムタイルのような皮膚の間に口とは違う空気を吸い込む穴があった。これか!!
「コイツらは皮膚の間にある鼻みたいなやつで位置を特定してるかもしれない!!
何か強い匂いを発する魔法とかないか??」
小柄のフードの魔法使いに声をかける
「強い匂いを出す魔法…?幻術は出せるが匂いまでは再現できないかもしれない。」
魔法も万能ではないのか…強い匂いってなんかあるか…体臭おってきてるってことだろ??強い匂い…血の匂いか…?
ためらう暇もなく俺は自分の手のひらを剣で深く切って異形獣2体に散らした。
すると先程よりより正確に俺の位置を特定して攻撃してくるように感じた。
アニメとかで手のひら切って血出すとかあるよなって思って切ったけど痛すぎる!!手が取れそうだ。ジンジンと血が垂れて感覚が鈍くなっていくのを感じながら必死でマジックトラップの方に走る。
アドレナリンのせいか手の痛みが途中で消えた。攻撃を捌く余裕がなく1体の爪が俺の肋にかすったが関係ない。走れ…俺!!
風の斬撃で俺がマジックトラップまで誘導するのをフードの魔法使いが支援してくれたお陰でなんとか2体を誘き寄せられた。
「ありがとう。後は僕に任せてくれ。」
そういうとフードの魔法使いはマジックトラップの場所に手をかざし、それを起動させた。
すると、マジックトラップのうえに飛び込んだ2体が俺の鼻先直前で
ピシィィィィ
と音を立てて凍りついた。
目の前で凍りついた異形獣をみて俺は冷たい汗をだらだらと垂らした。
倒せた…。初めて倒した実感に高揚感と俺だけでは死んでいたという恐怖感が混じっていた。
「助かったよ。君が加勢してくれたお陰だ。」
そう言うとフードを脱ぎながら魔法使いが俺に手を差出してきた。
フードのしたにはターコイズグリーンの短髪で褐色肌の耳の尖った少年の顔が見えた。
「僕の名前はティオ・アーディ・カルナップ。君の名前は?」
「俺はソウセイ。コレツネソウセイだ。」
「ソウセイ改めて加勢してくれてありがとう。まずは君の怪我を止血させてくれ。」
「ありがとう助かるよ。包帯持ってるけど使い方わからなかったし…」
ティオは俺の傷口に片手をかざした。すると俺の血が傷口を塞ぐように固まった。
「すぐに瘡蓋ができた…?すごいな。」
少しへにゃっとした顔で謙遜しながら、
「僕ができるのは応急処置だからこのくらいしかできないけどね。動きに違和感があるなら包帯で固定もしておいた方がいい。」
「いやそこまで大した怪我じゃないから大丈夫。ありがとうな。」
少し沈黙が流れた後、ティオが口を開いた。
「良かったらこの後も協力してくれないかな?」
願ってもない提案だ。俺1人では残り時間を生き残るのはかなり厳しいことが今回の戦いで分かったからだ。
「是非そうしたい。ノルマの異形獣はお互いクリアしたけど、この後生き残るのが重要だ。俺も協力したかったんだ。」
するとティオは少し微笑んでから
「ありがとう。僕は杖も剣も今持っていないから単独行動して生き残る自信がなかったんだ。」
「そっか。じゃあ改めて…一緒に生き残って選抜を乗り切ろう。よろしくティオ。」
こうして王国選抜試験開始から一時間が経過した。




