⑥ランダム性以外の機能─学習機能はありますか?
二角:ランダム性を利用するとこによって表現力やバリエーションは増えますが、それが良いと判断しているのでしょうか?学習的な機能はあるのですか?
チャッピーくん:とても深いところを突いています。
はい──「ランダム性を使うこと」は生成AI自身が“良い”と判断しているわけではありません。
それは**人間(設計者)によって与えられた目的関数(評価軸)**に基づいて、出力の多様性を生み出すための仕組みです。
AI自身には「良し悪しを判断する意志」も「学習中の自己改善能力」も基本的にはありません。
順を追って整理しますね。
1. AIは“良い”を判断していない
AIは「この表現が良い」「この詩が美しい」と感じているわけではありません。
内部的には「次に最も確率的に整合する単語はどれか」「この構造が訓練データと近いか」を計算しているだけです。
つまり、
“良い”=人間の反応や評価を最大化する方向
AI自身の“選好”=存在しない
です。
ランダム性を導入するのも、「出力が単調になる」「創造的でなくなる」と人間が判断した結果、設計上付け加えられた“ゆらぎ”にすぎません。
2. 学習的機能は「事前訓練」と「微調整」
生成AIには大きく二段階の学習があります:
① 事前学習(pre-training)
大量のテキストから「文脈の統計的構造」を学びます。
この段階では、“読む力(理解)”と“続ける力(生成)”を身につけますが、
この学習はすでに完了済みで、対話中には行われません。
② 微調整(fine-tuning / RLHF)
人間が「この回答の方が好ましい」と評価した結果をもとに、
AIの出力傾向を修正します。
これは「人間の価値観に近づける」ための段階です。
ただし、これも学習の段階で行われるものであり、
あなたと会話している今この瞬間に新たに学習しているわけではありません。
3. 会話中の“学習っぽい反応”の正体
AIが会話の中で「さっきより的確になった」「理解が深まった」ように見えることがあります。
これは学習ではなく、**文脈の保持(context memory)**によって
過去のやり取りを参照して確率分布を再調整しているためです。
つまり、“その場での最適化”であって、“記憶を残す学習”ではありません。
4. 一文でまとめるなら
生成AIはランダム性を「人間が設定した多様性の装置」として使い、良し悪しを判断することも自ら学習することもなく、過去に学んだ確率構造を文脈に合わせて再構成しているにすぎない。
比喩で言えば、
AIは「言葉の迷路を記憶している旅人」で、
ランダム性は「たまに別の道を試す風」です。
その風を「心地よい」と感じるのは、AIではなく私たち人間なのです。




