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第9話 決戦は公開討論会!届け、あたしのリアルボイス!

「なあ、マリィ様。こうなったら、ソフィア嬢の“完璧じゃないところ”……つまり、スキャンダルでも探し出して、暴露してみるか?」


 ミロの囁きは、まるで悪魔の誘惑。一瞬、グラリと心が揺れた。あのキラキラ完璧令嬢ソフィア様の鼻を明かせるなら……どんな手を使っても……。

 でも、脳裏に浮かんだのは、リヒト様の「あなたの武器は“熱”と“共感力”」という言葉と、裏アカで応援してくれる仲間たちの顔、そして、あたしのポンコツな投稿にも「面白い!」って笑ってくれる人たちのこと。


「……ううん、それは違うわ、ミロ」あたしは首を横に振った。「あたしは、あたしのやり方で、ソフィア様と真正面から向き合いたい。そして、お父様や、貴族院の皆さんに、SNSの本当の楽しさと、そこに無限の可能性があるってことを伝えたいの。誰かを貶めるんじゃなくてね」


 ミロは一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにニヤリと笑った。

「へっ、そうこなくっちゃな、マリィ様!あんたはそうでなくっちゃ面白くねぇ!」

 その言葉が、なんだかすごく嬉しかった。


 すると、あたしのポンコツマギフォンに、リヒト様から緊急連絡が入った。

『エマリア嬢、急報だ。朗報……と言えるかは分からんがね』

 画面には、王宮発行の公式通達が表示されていた。


【緊急開催決定!SNSの未来に関する若手貴族代表公開討論会】

 パネリスト:エマリア・フォン・ヴィルト嬢、ソフィア・ヴァレンティア嬢


「な、なんですってえええええ!?」

 あたしとソフィア様が、公開討論会で直接対決!?しかも、これ、魔法映像で王都中に生中継されるって書いてあるじゃない!


 リヒト様からの補足情報によると、これはSNS規制法案の審議が紛糾しそうなのを見て、ハインリヒ王太子殿下が「若者の意見も直接聞くべきだ」と鶴の一声で提案したものらしい。リリアン王女殿下も、裏で一枚噛んでるとかいないとか……。

(リリ……あなたって子は、本当に何をしでかすか分からないわね!)


 でも、これがあたしにとって、そしてソフィア様にとっても「同じステージ」。

「やるしかないわ……!」あたしは拳を握りしめた。


 公開討論会まで、残された時間はあと1日!

 あたしはリヒト様、ミロ、そしてオンラインで繋がる「チーム・エマリア(仮)」の仲間たちと、最後の作戦会議に全力を注いだ。


 あたし:「スピーチのテーマは『SNSは心の窓!~炎上したって前向いてこーぜ!~』でどうかしら!?」

 リヒト様:「……そのタイトルは再考の余地がありそうだが、あなたの“熱”と“共感力”を最大限に活かす構成にしよう。そして、あなたの“失敗を恐れない覚悟”を見せるんだ」

 ミロ:「会場の魔法映像システムには、俺が“ちょっとだけ”お邪魔して、マリィ様のポンコツマギフォンからの映像も、こっそりメインスクリーンに割り込ませる手筈を整えておくぜ。バレたら国家反逆罪でギロチン行きだけどな、ハハッ!」

(ミロ、笑えない冗談はやめてちょうだい!)


 クララさんたち裏アカの仲間も、応援イラストや、「#エマリア頑張れ」のメッセージでタイムラインを埋め尽くす準備をしてくれている。ポンコツマギフォンでも、一人じゃないって思えるだけで、勇気が湧いてくる!


 一方、ソフィア様のアカウントには、こんな投稿が。

『この度、光栄なことに、SNSの未来に関する公開討論会へ登壇させて頂くこととなりました。わたくしの信じる“秩序あるSNSの未来”について、皆様にご理解を賜れますよう、誠心誠意努めて参ります』

 純白のドレスに身を包み、慈愛に満ちた微笑みを浮かべるソフィア様の写真。その完璧な姿に、コメント欄は「ソフィア様こそSNSの女神!」「エマリア嬢を論破してください!」と、早くも熱狂的な盛り上がりを見せている。


 王都中が、あたしとソフィア様の直接対決に注目していた。SNSのトレンドワードは、「#公開討論会どうなる」「#エマリアVSソフィア世紀の対決」「#SNSの運命やいかに」で埋め尽くされている。お祭り騒ぎね、もう!


 討論会前夜。

 あたしは自室で、これまでの出来事を思い出していた。

 初めての炎上、お父様との衝突、ポンコツマギフォンでの悪戦苦闘、リヒト様との出会い、ミロや裏アカの仲間たちとの絆……。

 たくさんの失敗と、たくさんの恥ずかしい思い出。でも、それと同じくらい、たくさんの応援と、温かい言葉があった。


(あたしは、もうただの“炎上令嬢”じゃない。あたしの言葉で、あたしの想いを伝えたい。お父様にも、分かってほしい。SNSは、誰かを傷つけるためだけの道具じゃない。人と人とを繋ぎ、新しい可能性を生み出す、魔法の箱なんだってことを)


 ポンコツマギフォンをギュッと握りしめる。バッテリーは相変わらず心許ないけど、あたしの心は、かつてないほど熱く燃えていた。


 そして、運命の公開討論会当日。

 貴族院の大ホールは、多くの貴族、魔法記者、そして何台もの魔法カメラで埋め尽くされていた。その熱気は、まるで人気アイドルのコンサート会場みたい。

 ステージの中央には、二つの席。


 あたしは、リリアン王女が用意してくれた、ちょっぴり大胆だけど、あたしらしい元気なオレンジ色のドレス。

 対するソフィア様は、神々しいまでの純白のロングドレス。まるで、光と影みたいじゃないの。


 ステージ上で、あたしたちは無言で向かい合う。

 ソフィア様の紫色の瞳が、冷たくあたしを射抜く。

「お手柔らかにお願いいたしますわ、エマリア様?あなたの“お遊び”に付き合うのも、これが最後になりそうですけれど」

「お望み通り、これが最後にして差し上げますわ、ソフィア様。あなたのその完璧な仮面、ひっぺがしてさしあげますから!」

 バチバチッ!火花が見えるような気がした。


 司会者が、高らかに討論会の開始を宣言する。

「それでは、まずエマリア・フォン・ヴィルト嬢より、SNSの未来について、ご意見を伺います!」


 スポットライトが、あたしを照らす。

 深呼吸を一つ。大丈夫。あたしには、仲間がいる。そして、伝えたい想いがある。

 マイクを握りしめ、あたしは、満場の聴衆と、魔法カメラの向こうの全てのSNSユーザーに向けて、第一声を放った。


「皆さーん!炎上してますかーっ!?」


 ……シーン。

 会場、一瞬凍り付いたわよね。知ってる。

 でも、これが、あたしなのよ!

 さあ、世紀のSNSバトル(という名の公開討論会)、いよいよ本当の本当に、開幕よ!

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