第28話 最後のライブ配信!炎上令嬢、愛と真実を叫ぶ!
「お前たちを公開処刑し、その様子をSNSで全世界に発信する!それこそが、我々の革命の、輝かしき幕開けとなるのだ!」
セドリック子爵の狂気に満ちた声が、仮面舞踏会の会場に響き渡る。黒蝶の騎士団のメンバーたちが、じりじりと私たちを取り囲む。絶体絶命!
でも、私の隣に立つ王太子殿下の瞳には、恐怖ではなく、民を、そして私を守るという強い決意の光が宿っていた。
「エマリア様、合図を!」
イヤホンから、ミロの切羽詰まった声が飛んでくる。
私は、セドリックに向かって、不敵な笑みを浮かべてみせた。
「公開処刑ですって?ずいぶんと物騒なライブ配信ですこと!でも、残念ね。今日の主役は、あなたたちじゃない……この“あたしたち”ですのよ!」
その言葉を合図に、私はリヒト様から渡されたブローチを起動!
パァァァァン!
目もくらむような閃光がホール全体を包み込み、一時的に敵の視界を奪う!
その光の中から、王太子殿下が、お忍びの若者の仮面を脱ぎ捨て、凛とした声で叫んだ。
「目を覚ましたまえ、若き騎士たちよ!君たちが信じるその“革命”は、誰かを救うものではない!ただ、君たちの孤独と不安につけ込む、卑劣な甘い罠に過ぎぬ!」
王族だけが持つ圧倒的なカリスマ。その声は、会場の若者たちの心を、強く、強く揺さぶった。
「さあ、ショータイムの始まりだぜ!」
ミロのデジタル・オーケストラが、反撃のシンフォニーを奏で始める!
会場の巨大スクリーンに、セドリックが国際的な闇ギルドと交わした金の取引記録、そして「ウィッシュフル・ドロップ」で若者たちから搾取した金の流れが、赤裸々に映し出された!
『お前らの革命ごっこ、全部お見通しなんだよ!』というミロからのメッセージ付きで!
さらに、ソフィア様が動かした世論が、会場を包み込む!
『#黒蝶の夜会は偽りだ』『#エマリア様を信じる』『#殿下と共に真実を』
会場にいる若者たちのマギフォンに、そうしたハッシュタグをつけた応援メッセージや、デマに気づいた人々からの投稿が、一斉にプッシュ通知される!
「え……?」「嘘だろ……?」「私たちは、騙されて……?」
若者たちの間に、動揺がさざ波のように広がっていく。
混乱の中、私はセドリックの前に立ちはだかった。
「セドリック子爵!あなたの気持ち、少しだけ分かるわ!誰かに認められたい、特別な存在になりたいって思う気持ちは、誰にでもあるものよ!」
「な、何を……!」
「私だって、そうだった!だから炎上して、注目を浴びようとした!でも、それは間違いだったの!本当の繋がりは、人を騙したり、貶めたりすることじゃ生まれない!」
私は、涙をこらえて叫んだ。
「私を救ってくれたのは、炎上を笑い飛ばしてくれた名も知らぬ誰かの『いいね』や、こんな私でも『親友だ』と言ってくれるたった一人の存在、そして、どんな時も信じて支えてくれる仲間たちの言葉だった!SNSは、人を孤立させるための道具じゃない!人と人が、心で繋がるための魔法なのよ!」
私の言葉に、セドリックは「うるさい、うるさい!お前のような、生まれながらに全てを持つ者に、私の苦しみが分かってたまるか!」と叫び、最後の切り札である、王都のマギフォンネットワークを麻痺させる強力なサイバー攻撃プログラムを起動させようとした。
しかし、その手は、静かに現れた王太子殿下によって、そっと制された。
「セドリック。君の言う通り、私には君の本当の苦しみは分からないのかもしれない。だが、君のその類稀なる才能を、国を壊すためではなく、国を良くするために使うことはできなかったのか?今からでも、決して遅くはないはずだ」
王太子殿下の、どこまでも誠実な言葉に、セドリックの手から、力が抜けていくのが分かった。
その瞬間だった。
ホールの窓ガラスが、大きな音を立てて割れ、リヒト様率いる王宮衛兵の精鋭部隊が、ロープを使って一斉に突入してきた!
「全員、武器を捨てて投降しろ!」
リヒト様の鋭い声が響き渡り、幹部たちはあっという間に制圧される。
彼は、呆然と立ち尽くすセドリックの前に立つと、静かに告げた。
「君の長すぎた夜会は、もう終わりだ」
事件は、解決した。
私たちのライブ配信は、黒幕逮捕の瞬間まで、しっかりと全世界に中継されていた。
王都中が、私たちの勝利に歓喜の声を上げている。
夜が明け、朝の光が差し込むバルコニーで、私は王太子殿下と二人きりで、静かな時間を過ごしていた。
「エマリア嬢……君は、私の、そしてこの国の女神だ」
殿下は、私の手を優しく取り、その瞳で真っ直ぐに私を見つめた。
「どうか、私の妃になってほしい。君と共に、この国のSNSと、そして、その先の未来を、明るく照らしていきたいんだ」
それは、今まで聞いたどんな言葉よりも、甘くて、温かいプロポーズだった。
私は、溢れる涙を隠しもせず、満面の笑みで頷いた。
「はい、殿下!炎上上等、どんとこいですわ!あなたと一緒なら、どんな未来だって、きっと最高にバズらせてみせますから!」
少し離れた場所から、リヒト様とソフィア様が、その光景を微笑ましそうに見守っている。
私のマギフォンには、ミロからの『ミッションコンプリート!祝賀会は、王宮御用達の最高級パフェ、特盛りでよろしくな!』という、ちゃっかりしたメッセージが届いていた。
国際的な闇ギルドとの戦いは、まだ続くのかもしれない。
でも、今の私には、最高の仲間たちがいる。そして、誰よりも愛おしい、パートナーがいる。
どんな困難だって、きっと乗り越えていける。
炎上令嬢と呼ばれた私の物語は、ここで一つのハッピーエンドを迎えた。
でも、未来の王太子妃エマリアの、ドキドキワクワクな新しい物語は、まだ始まったばかり!
さあ、この恋と冒険の物語を、世界中にシェアして、みんなで一緒に、最高の「いいね!」を送りましょう!