表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/29

第25話 王太子プロデュース大作戦と、城下町の甘い罠

「よろしいですか、殿下!今回の企画の根幹は、ただ珍しいお店を訪れることではありませんわ!殿下ご自身の“共感”と“発見”の旅を通して、王室と国民の心の距離を縮めること!いわば、王室広報における革命ですのよ!」

「か、革命……!」


「王室デジタルコミュニケーション室」の初仕事は、ハインリヒ王太子殿下の新SNSチャンネルプロデュース!私の熱弁に、王太子殿下は目を輝かせ、隣に立つリヒト様は「また大げさなことを……」と深いため息をついている。これが、私たちの新しい日常。


 リヒト様からの「ただバズらせるのでは三流だ」という厳しいダメ出しを受け、私は心を入れ替えた。そう、私はただの炎上クイーンじゃない。王都公式SNSアドバイザー、いわば「バズのコンサルタント」なのだから!

 コンセプトは「王太子ハインリヒのリアル発見記」。初回配信のテーマは、城下町の人気パン屋さん巡りに決定!


「本番の前に、まずはお忍びでロケハンに参りましょう!」

 私の提案に、王太子殿下は子供のように目を輝かせた。かくして、フードを目深にかぶった王太子殿下と私、そしてその背後で鬼のように周囲を警戒するリヒト様(と、さらにその物陰に潜んでるであろうミロ)という、なんとも奇妙な一行が、活気あふれる城下町へと繰り出したのだった。


「わあ……!すごい人だ……!」

「殿下、あちらのクレープ屋さん、すごい行列ですわ!限定のイチゴクリームですって!」

「クレープ……!本でしか見たことがない……!」

 初めて見るものばかりで興奮気味の王太子殿下と、そんな殿下の姿が可愛らしくて仕方ない私。これはもう、お仕事という名のデートじゃないかしら!?

 でも、そんな甘いムードは、リヒト様の「エマリア嬢、半径5メートル以内に不審人物7名。気を抜くな」という、イヤホン越しの冷静すぎる囁きで、一瞬にして霧散するのだけど。


 ロケハンの後、ソフィア様にお茶をしながら進捗を報告すると、彼女は優雅にカップを置き、的確なアドバイスをくれた。

「なるほど、面白い試みですわね。ですが、庶民的なお店ばかりでは、一部の保守的な方々から『王室の品位を損なう』と批判の声が上がる可能性もございますわ。例えば、何代も続く伝統工芸の職人さんの工房なども訪れ、その素晴らしい技を殿下が称賛するような場面も盛り込むことで、王室が伝統と革新のどちらも大切にしているというメッセージを発信できるのではなくて?」

「さ、さすがですわソフィア様!その視点はなかったです!」

 親友の慧眼に、私は心の底から感心した。やっぱり、あなたがいなくちゃダメだわ!


 順調に進んでいるように見えた企画。でも、私はロケハンの途中、城下町の片隅で、小さな違和感に気づいていた。

 若者たちが、お揃いの奇妙な蝶の紋章が入ったアクセサリーを身につけ、特定のカフェに吸い込まれるように集まっている。まるで、秘密の合言葉を交わすみたいに……。


 ミロにこっそり調査を頼むと、すぐに返信が来た。

『ああ、それ、最近SNSで流行ってる「黒蝶の騎士団ノワール・パピヨン」って会員制サークルだぜ。表向きはただのファンクラブだけど、裏では高額な会費と引き換えに、怪しげな“限定情報”や“幸運を呼ぶアイテム”を売買してるって噂だ。……前の闇ギルドの、甘ったるくてキナ臭い匂いがプンプンするぜ』


 やっぱり、平和なだけじゃ終わらないのね!

 この件を、王太子殿下の新しい門出に水を差したくなくて、一人で抱え込んでいた、その矢先。


 企画の最終打ち合わせの日、王太子殿下が、真剣な顔で私に切り出した。

「エマリア嬢。実は、君に相談したいことがあるんだ。先日、お忍びで城下町を歩いた時、私も気になる噂を耳にしてね。若者たちが、高額な会費を払って、秘密のサークルに入っていると……。その名も、『黒蝶の騎士団』。何か知っているかい?」


 殿下も、気づいていらっしゃったなんて!

 私は、ミロから得た情報を正直にお話しした。すると、殿下の優しい瞳に、強い決意の色が宿った。

「そうか……やはり、ただの噂ではなかったのだな。国民が、特に若い人々が、そのような危険な罠に陥っているのを見過ごすわけにはいかない。エマリア嬢、私の最初の配信は、予定を変更しよう」

「えっ?」


「ただのパン屋さん巡りではない。この『黒蝶の騎士団』の正体を暴き、SNSの新たな闇から国民を守るための……潜入ライブ配信としよう。君の力を、貸してくれるね?」


 王太子殿下からの、あまりにもまっすぐな依頼。

 それは、危険な任務への誘い。でも、それ以上に、私をパートナーとして、心の底から信頼してくれている証。


「……もちろんですわ、殿下!炎上も潜入も、このエマリア・フォン・ヴィルトに、お任せあそばせ!」

 あたしたちの初めての共同作業は、どうやら、甘くてスリリングな潜入捜査になるみたい!


 次回、エマリアと王太子の潜入ライブ配信、スタート!

 甘い香りのパン屋さんの裏に隠された、新たなSNSの闇を暴き出せ!

 二人のドキドキ初ミッションの行方は、一体どうなっちゃうのよ!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ