断罪!・・の前に長い身の上話を
「黙れ。この薄汚い化け物めが!」
私、アゼラル・ヴィレッドは婚約相手である第一王子、グレン・レンデッドとその浮気相手を偶然見てしまったから、問い詰めていたら王子がなかなかどぎつい言葉を浴びせてきましたの。化け物呼ばわりって・・仮にもレディに対して失礼じゃないかしら。
でもまぁ、始まって早々にこんな展開なんてあまりにも突拍子がすぎますし、まずは私のこれまでの人生をお話しますわ。(王子については・・しばらく後になりますわね。)
名家であるアゼラル家に生まれた私は元気で活発な可愛らしい子供(といってもそう言ってくれたのは母上だけなのだけれど)でしたわ。
もちろん幼少時代は何事もなく過ごした・・ってわけでもなく、化け物呼ばわりされるルーツはここにありますわ。
まず、物心がついた6歳頃の私は森近くにある草原でピクニックをしに母上と召使として遣わされたメイドを連れて一緒に向かったの。といっても、父上はなんというか冷たいのか厳しいのかケチなのか。(後になってただただ口下手で厳格のあるだけの人って知ったのですけどね。)格安で済むからと目の見えないメイドを私の担当として付けるような性格の方なので、ピクニックには来ずに家で仕事をするって聞かなかったの。
まぁ、それは対して重要なことではなくて。そのピクニックの際に森の奥から私を誘うような声が聞こえましたの。当時の私は善悪の区別もつかないぐらい幼かったのもあってか、ひょこひょことその方角へ森の中に入っていきましたの。(若気の至りってことで厳重注意で済んだけれどね。)
声のする方に進めば、なんだか木々が開けた場所に出て、真ん中には物凄くきれいな石でできた玉座のようなものがありまして、その上にきれいな宝石のペンダントがありましたの。声もペンダントから聞こえているのにその時になって気づきましたわ。
で、私はそれに近づいてよく観察することにしましたの。小さい頃から母上には「きれいな物は無闇に触るとトゲが刺さるわよ」って教え込まれてましたから。(今になっておもうと・・きれいな花にはトゲがあるを母上が勘違いしたのかしら?)
それでペンダントを見ながら玉座をぐるぐる回ってたら声が不機嫌になって「早く取りなさい。」だの「つけてみたいでしょう?」とか言ってくるもんですから、その時私はこう言ってやりましたの。貴方はだあれ?ってね。(子供なんだもの。仕方ないわよね。)
そうしたら怒ったように「私”達”よ!」って怒鳴り声が聞こえたと同時にペンダントが黒く、しかしつんざくように光ったせいで思わず目を瞑ってしまいましたの。
その後すぐに目を開けたら・・なんというか物凄くきれいな、だけど物凄く怖くて不機嫌な女の人が三人、私の方を見つめて言いましたの。「早くペンダントをつけろ!」ってね。怪しさプンプンの三人を見上げながら、まだ幼い私は少し震えながらも「だあれ?」って返したの。その時の三人の顔ときたら面食らったような顔をしていたもんだから、今でも思い出すとクスっと笑っちゃいますの。
何者かと聞いたら、幼い私を見て冷静さを取り出したかのように不機嫌だった顔を笑顔一杯にして言いましたの。「貴方のお願いを叶えてあげれる魔法使いよ。」「ペンダントをつければ貴方の願いを一つ叶えてあげる。」「良い条件だと思わない?」と、まるで詐欺商人のような売り言葉だけれど、私はパァって興味を持ってホントに?って聞き直したぐらいですわ。そのぐらい幼かったんだから、仕方ないわよね。
さて、そんな欲求に負けてしまった私は願い事を一つ決めて私はペンダントを手に取りましたのよ。
さて、今更なのだけれど・・この世界では”魔法”というものがありましてね。誰にも平等に扱うことの出来る変わった力をそう呼ぶのですわ。火や水や風や土やその他多種多様・・あら?そういうのは聞き慣れてるようですわね。なら、必要な情報だけを説明しておきますわ。この世界では皆様がよく知られている神様や妖精や悪魔といった存在は基本として”精霊”として扱われますわ。(勿論個人や小さな集団で別の名称を使うことは珍しくないんだけれどもね。)
で、精霊と呼ばれる存在は人間と”契約”をして互いにメリットのある関係を結ぶことが多いんでしてよ。(勿論仲が大変良かったりすれば契約をしないペアもいますわよ。)精霊側は主に体の所有権の譲渡や捧げ物、人間側は魔力の共有や魔法の技術の伝授ですわね。
でも、そんな精霊相手は小さな子供、精霊側は大した条件も出されずメリット万歳で体を入手出来ると思ったんでしょうね。
私がペンダントを手に取った瞬間に「その代わりに・・」「貴方の体・・」「貰うわよ!」って言って、私の体を奪おうとしましたの。(精霊は実態のある体を入手できれば実質的に不死身の体を入手できるから、欲しがる者も少なくありませんわ)でも、多分私の願いがくだらないものだと慢心しすぎたんでしょうね。
「じゃあ、私のメイドになって!」って、その時私は願ったんですのよ。
メイドっていう、主人の言うことを聞かなければならない職業なんて、精霊達もまさかそんな事を言うなんて思わなかったんでしょう。そのまま契約が成立しちゃって、ペンダントは塵に、そして精霊たちはえ?って困惑した顔をしたと思ったら、首に枷をつけられ、その枷につながっていた縄は私の手に直接つながっていましたわ。(しかも私好みの可愛らしいリボン付き!)枷をつけられて驚いたり、焦ったり、必死に枷を外そうとする三人の精霊達を無視して、私は純粋故に喜んでいましたわ。(枷の意味は流石にこの当時はよく知らなかったわ。)
さて、そういうことで反抗的なメイドを三人引き連れて戻ってきた私を見て母上は驚愕してしまって腰を抜かしていましたわ。話を聞くとこの精霊は大昔に封印されてた邪神なんだとか・・まぁ、子どもの私には到底理解できない話でしたけれど。それからとりあえずピクニックを楽しんだ後、その三人の精霊に名前を付けることにしましたの。(精霊たちは既に名前があるって文句を言ってたけど、私にはわからない言語だったから却下しましたわ。)
まず、一人目の短髪ショートの髪型をした女の精霊にはセラ。二人目のロン毛ヘアーの髪型をした女にはレイ。三人目のポニーテールの髪型をした女にはアンと名付けましたわ。
邪神と契約をしたと聞いて母上は心配の声が多かったけれど・・父上は大して驚きもせずに「そろそろ勉学に励んでも良い頃合いだな。」といって名家に恥じぬ娘であるように努めろといっつも言ってくる機械仕掛けのおもちゃみたいになりましたわ。(まぁ、確かに勉強は大切ですけれどね・・)
さて、それから学園に通えるようになる12歳になるまで私は母上に甘やかされつつも主に精霊に関する資料と歴史の資料を読み漁りつつ、父上が手配してくれた魔術鑑定士とやらに私が最も使うのに最適な魔法を調べてもらって知った”炎”と”風”を中心に鍛える事にしましたの。
そうそう、精霊たちはというとメイドとして働くことを強制させられたのだけれど、相当力のある邪神だったようで、殆どの仕事は魔法であっさり終わらせてしまいましたのよ。で、余った時間に精霊達が何を出来るのかを改めて確認してみると、セラは瀕死の鳥を簡単に治療して飛べるようにしたり、レイは金銀財宝を生み出したり、アンはきれいな音色の歌を歌ったかと思えば草花が踊りだしたりと。私も思わず拍手をしたぐらいの凄い力を持っていましたの。「凄いでしょう?」「貴方には到底真似できない。」「羨ましいでしょ?」と精霊たちは相変わらず性格が悪かったけれど。それで私はせっかくなら出来ることをめいいっぱい考え、実行することにしましたわ。
まず、父上に与えられたメイドのシャンディ・・ガーネット・シャンディの目を治すようセラに言えば「頼み事をするときはもっとしっかりとした礼儀があるでしょう?」ってフフフとセラは私を嘲笑いましたわ。そこで父上の言葉である「人に頼み事をするときは最初は目下に、それがだめなら土下座でもすると良い。」を思い出した私は即座に土下座をして「治してあげてください!」って大声で頼み込んだら、三人とも驚きながらセラが渋々シャンディの目を治してくれてたの。それで素直にありがとうって感謝の言葉を伝えたら「べ、別に・・」って照れくさそうに言葉を濁していましたわ。(こうしてみると分かりやすくて単純ですわね。)
まぁ、そんな形で精霊たちの力を使って身の回りの問題を解決した後、アゼラル家が領地としている下町に度々降りては手伝いや治療をしにいっていたから、その度に浴びせられる感謝の言葉で浄化でもされたのか、私が10歳になる頃には精霊達はすっかり大人しく、私のために尽くしてくれるようになりましたわ。(まぁ、メイドはいくらいてもいいから死ぬまで離さないけれどね。)
さて、11歳になった頃に母上が「ヴィレッド、貴方も来年には学園に行くのだからそろそろ準備をしたらどう?例えば・・連れて行くメイドは誰にするのかとかね?」と遠回しに催促をしてきましたの。
私が住んでいた国では12歳頃になると教養と知識と交友を得るための場としてグレラッツェルという名前の学園に入ることになりますの。(国からの援助を受けてるのもあってか、在校する生徒は市民に貴族にと・・入るもの拒まずな学園ですわ。)それで、私も一通り準備をすることにしたのですけれど、学園の校則の一つに従者を連れていきたい場合は1人まで可とするといったものがありましてね。まぁ、体が弱かったり、運ぶ荷物が多いときに手助けしてもらうための校則だと思うのだけれど・・階級が貴族の生徒は自慢がてらに執事やらを付けることが多いと言われましてね。(母上も学園を出たお人ですから詳しいんですのよ。)舐められないようにするには連れて行ったほうがいいと母上から諭されましたので、せっかくならガーネットを連れて行くことにしましたの。(精霊たちはあくまで精霊、メイドではありませんわ・・なんて屁理屈かしらね?)精霊たちには”憑依”って言って、契約者である私の体に入ってもらうことにしましたの。(本来なら体の主導権を譲ることになるのだけれど・・契約のお陰であくまで私の意思がないと操る事はできませんのよ。)ちなみに軽い実験で精霊たちに私の体へ憑依させたときにたまたまその現場を見てた母上が「あら。ヴィレッド、貴方魔力が多くて抑えきれていないわよ?練習をしたにしても多すぎるし・・精霊の力を借りたんだろうけど、抑える練習もしたらどうかしら?」と言われたので、魔力の扱いの向上に加え、抑える練習にも取り組み、学園に向けての準備を着々と進めましたの。あぁ、そうそう。学園に入学する半年前に父上が魔法操作試験というのを受けるよう手配されていまして、父上いわく「そろそろ日頃の成果を目に見えるようにしてもいい頃合いだからな。」とのことでしたから、その試験に半ば強制的に参加することになりましたのよね。
さて、この試験の内容は至ってシンプル。扱える魔法をどれだけ強力にかつ精密に使えるかですの。この試験では使う魔法に制限はないけれど、基本的には適正のある魔法を使うのがセオリーで、適性が複数ある場合はそれぞれの属性を活かした魔法を使うことでも評価が上がりますの。(過去の記録では四属性全てを使いこなすとんでもない方がおられるようですの。おお怖い怖い・・)
では、試験の内容はどうだったかと言うと、1から10までの評価のうち、炎が7、風が9となかなかの高評価だったのに加え、2つの属性を炎と風を組み合わせた魔法も難なく扱ったために追加評価をもらえたの。そして総合の評価に応じて相応の資格を与えられるのだけれど、私がもらった資格は中上級魔法技能士でしたわ。(階級は主に小、中、上に分けられて、そこから細かく小、中、上の3つに枝分かれしますわ。上上以上の評価を受けた場合は最位魔法技能士として名を馳せることができますの。・・あ、後は精霊の力は精霊自身の力として扱われるので使うことはできませんわ。)試験が終わって両親に報告すれば母上は素直に褒めてくださり、父上は同じように鍛錬を積むよう励ましてくれましたわ。(その際にせっかくだからと服を買いに行きたいと伝えたら喜んで承諾してくれましたので、自分とガーネットの学園用の服、精霊専用の衣服を扱う店にも訪れて、精霊3人分の服を取り繕ってもらいましたわ。)
そうして、私は学園へ行く前の下準備を終わらせ、ついに学園入学の日になりましたわ。
はい・・相変わらず無計画なのできがるーーーーーーーーくお待ちください・・。