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夢見た世界宛ての梟便  作者: 時ノ宮怜
最終章-新たな世界への旅路-
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奪還作戦会議2

「そんな、無限のエネルギーがあれば、最初から神様になれそうな希空ちゃんなんて、この先生まれるかも分からない奇跡のような能力を探すよりも、その辺の平凡な能力のエネルギーや出力を高めて神様にすることができるかもしれない。少なくともその可能性がある天使たちがいるからね」


 そう聞けば、なんとなく俺が狙われる理由が分かる気がする。

 無限のエネルギーなんて言われてもいまいちピンとは来ないが、あの天使たちの力がさらに上がると考えれば、神様を創れるかもしれないというのも、無理ではないのかもしれないと思えてしまう。


「それは、確かに脅威ですけど...今はその脅威になりそうな力が私たちの側にありますよね?これは大きなアドバンテージでは?」


 六鹿がそういう。

 確かに、俺の力にそういった効果があるならば自分たちの力だけを大きく増幅することが出来るってことになる。

 それが出来れば大きなアドバンテージになるのは確かだ。

 しかし、きっとそれは出来ないだろう。


「うん、六鹿ちゃんの言う通りアドバンテージになるとは思うよ。でも『大きな』とは言えないだろうね。残念ながら」

「?...なぜです?」

「それはね、恐らく晴くんは能力の増幅が出来ないからだよ」


 そう、俺には多分能力の増幅が出来ない。

 なぜなら俺には能力の詳細が分からないからだ。

 何をどうしたら能力が増幅されるかが分からない。

 単純なスピードやパワーの増幅が出来るのは、なんとなくだとしても何が強化されたらそれが起こるかが分かっているから発動できる。

 それがない能力には全くイメージが湧かないのだ。


「他の皆もそうだけど、理論的に能力の発動の仕方を理解しているわけじゃないでしょ?呼吸するように自然と使い方を理解していたはずだ。それが、かえって足かせになっているじゃないかな?完全に感覚の世界だからこそ、改めてどうこうしようってするとイメージできなくなる」

「...ああ、そうだな。言葉にしたらそんな感じなのかもしれない。何と言うか、出来るって思えないんだよ」

「なるほど...」


 正直そんなことが出来るなら練習してでもやった方がいいのかもしれない。

 しかし、今までの訓練でもオウルからそういったことができるなんて聞いていない。

 それはつまり、オウル的には最初から出来ないと思われていたんだろう。

 そして、今はすぐに希空に危険があるというわけではないとはいえ、時間をそんなに掛けていられない。


「ま、出来ない事を考えても仕方ないさ。それよりも、きっと今まで以上に激しくなる晴くん狙いの敵にも対処しなきゃいけない事も考えなきゃね!」

「どういうことだ?」

「それは、きっと今まで希空ちゃんと晴くんのどちらかでもいいから連れ去ることを考えていた敵が、希空ちゃんを手に入れた。なら、あともう一つを手にすれば目的は達成するから、全力を出してくるじゃないですか?」

「そうだね、後は単純に悔しかったんじゃないかな?博士って肩書のわり負けず嫌いだし」

「おい!!」


 六鹿とオウルで、俺を狙うのが激しくなる理由について話していると九重が大きな声を上げて、話を遮る。


「それ以上はやめろ」


 それは、普段のおちゃらけた姿からは程遠く、シリアスな時の真剣な表情ともまた違う。感情に任せた激情のままの姿があった。


「...ま、僕としては全てを話すとは言ったものの、話されたくない事まで話したいわけじゃないから別にいいよ」


 オウルは小さく肩をすくませて、話を止めた。

 呆れを滲ませたその態度には話したほうがいいと、言外に伝えてきていて、それだけ何か重要な話なのだろうという事が伺い知れる。

 だけど、それに反して九重のその雰囲気もまた、絶対に話させないというような意思を感じさせるもので、なんというか微妙な空気が流れる。


「とにかくだ。希空を助けに行くのにも、晴を守りながらじゃないといけなくなったという事だな」


 その空気を切り裂いて、発言したのは意外にも天使(あまつか)だった。

 そしてそれに追従するのはやはりと言うべきか、相賀だ。


「そうか、ならちゃんと守れるように考えなければな!」

「でも、どうするんですか?今回私たちは敵の本拠地に行こうとしているんですよ?そんなところにのこのこと行ってしまったら、ネギを背負った鴨では?」

「確かに...」


 あれ?俺を守ってくれるって話はまだ、黙って受け入れられるがもしかして奪還には参加させてもらえないかもしれないのか?

 それはダメだ。

 希空は俺の妹だ。

 俺が行かなくてどうするんだ。


「おい、俺は絶対に行くぞ」

「晴くんは、そう言いますよね...」

「しかしなぁ、晴。お前が狙われてる上に、お前が奪われると敵の超強化が起きるかもしれないんじゃ、ちょっと厳しいぞ」


 六鹿と相賀は、俺の事を心配するようにそう言うが、コレだけは譲れない。

 何が何でも行くぞ。


「いやいや、絶対について来てもらうべきだよ」


 それに反対したのはオウルだった。


「どうしてですか?」

「そりゃもちろん、そっちのが安全だからだよ。向こうの戦力は僕にも正確には分からないんだよ?そんな中で戦力を分散させるのは得策じゃないんじゃないかな?」

「…なるほど」


 オウルは冷静に淡々と説明する。

 それは、それこそが唯一の答えだと言わんばかりで俺たちには有無を言わせないものだった。


「それこそ、一番の懸念点。天使が、防衛に加わらずに晴くんの確保を優先して動かれたら...分散した戦力じゃどうしようもない。晴くんは確かに色々な経験をして、訓練も積んで強くなったけど。天使との戦いはそれでも足りないし、不安ばかりが先行するのは分かるでしょ?」

「それは……」


 なんだか、俺に力が足りないと言われているようでなんとなく嫌な感じだが、事実あの天使たち相手にするのに俺一人だったらそう長くはもたないだろう。

 倒すためには皆の力を合わせなきゃいけないと、そう今までの経験が教えてくれている。


「と、いうわけで!晴くんも含めた全員で乗り込むとして、作戦を考えようね」

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