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夢見た世界宛ての梟便  作者: 時ノ宮怜
プロローグ-梟からの招待状-
1/96

プロローグ1

とりあえず書きたくなったので書き殴った作品になります。

ガチで不定期更新になるでご容赦。

 誰かが言った

 この世界はもっと広いのだと

 誰かが望んだ

 囚われることのない自由を

 誰かが言うのだ


 外へ行こう


 それが、たとえ

 自分たちを殺すことになっても

 自分で選んだのなら悔いは無いと


 それが、たとえ

 決して叶うことはないと知っても

 焦がれずにはいられないから


 誰かが言った

 無駄なことはやめておけと

 誰かが祈った

 鳥籠にもせめて救いあれと

 誰かが言うのだ


 ここにいよう


 それが、たとえ

 何も変わらない毎日でも

 終わってしまうよりはいいと


 それが、たとえ

 思考停止の虚無感であっても

 もう痛い思いはしたくないから


 決められたレールを行こう

 外れない列車に乗ろう

 生き着く駅が望んだ場所じゃなくても


 自由の翼で羽ばたこう

 体中がボロボロになっても

 その先にあるのが望んだものだと信じて


 自分が自分で自分だと言い張れるように

 胸を張れるように


 誰でもない自分だって言うために


 この溢れて飽和した世界で

 個人を象徴するために


 それが誰かと比較した相対的なものでも


 何もない自分には過ぎたレッテルで

 必要なラベルだから


 このキオクも

 あのオモイも

 そのコトバも

 いつか夢見たミライなら


 それでいいと意地を張れるなら


 その時は笑って明日に歩を進める

 そう信じてる





 空が青い。

 ただそれだけなのに、それが無性に気になる時がある。

 こんなに遠くに、こんなに広い場所があるのに。

 自分はいつまでも何も考えずフラフラとしているとちょっとした罪悪感にさいなまれる。

 人類はどんどん技術を発展させていったのに、自分は何も変わらないのに悔しさを感じる。

 それでもいつかは自分も重大な決断をする時が来るんだろう―


 キーンコーンカーンコーン


 間延びした鐘の音。


「じゃ、今日はここまで」


 そういって教卓に立っていた先生が授業を締めくくる。

 かっこつけた物思いにふけったところで現実は変わらない。

 ただ何でもない学生が将来を想い、こじらせただけだった。

 今日の授業は全て終わり、もう放課後になった教室はそれなりに賑わっている。


三船(みふね)くん」


 賑わいに参加するでもなく遠巻きにしていたらとある女子に話しかけられる。


六鹿(むつが)…」


 六鹿 恵麻(えま)

 この六鹿学園の理事の娘。

 六鹿家は特別金持ちというわけじゃないらしいが、それでも一般生徒にとってはお嬢様の部類だ。

 そんな少女が今は俺に話しかけてくる。


「何か用か?」

「うん、三船くん。まだ進路について決めてないって」

「あー…」


 耳の痛い話だった。

 ずっと考えるのを後回しにしていたため、いつかはこうして言われるのを覚悟していた。

 だが、まさか六鹿が言いに来るとは思わなかった。

 そういうのは先生とかの仕事だと思うのだが。


「まぁ、どうせ決まってることなんだからいいだろ?」

「でも、先生たちも心配していたから…」

「あー、なら早めに出すことにするよ」

「うん!お願いね」


 形だけの返答。

 いわゆる「善処します」ってのを伝えると六鹿は満足したように教室の賑わいの輪へ戻っていった。


「よう晴、不景気な顔だな」


 それを横目で見ていると、軽薄そうな男に軽薄に話しかけられる。


「そうか?普通だろ」

「いつも不景気か、金ないね~」

「うるさっ」


 この軽薄そうな男―一ノ瀬(いちのせ)羽衣(うい)と腐れ縁ゆえの適当な話をする。

 正直、学園に馴染めない俺にとってはこんなでも貴重な会話だったりするのだ。


「まだ悩んでんの?」

「まぁな」

「お前だけだぜ悩んでるの」

「わかってるよ」


 そう分かってる。

 この街で進路に悩むのなんて馬鹿らしい。


 未だに完成には程遠いと言われている超技術。

「報化技術」と名付けられたそれは、社会にどれほどの影響を与えるかが未知数だった。

 そのため確実に利益を出せる技術でありながらどの国も一定以上の研究ができなかったという。

 そして近年、産業成長が停滞していた日本がこの技術による躍進を夢見た。

 その結果、産まれたのが俺たちの住む街、超情報化実験都市「ティクティリス」だ。


 この街ではあらゆる物が情報に変わる。

 情報として完璧に処理されるのは人の人生も同じで、個人の適正や将来性をほとんど完全にトレースしてもっとも効率的な進路・職業に斡旋するシステムがある。

 そのため、この街に住む子供は将来を考える必要はない。

 自分に一番合ったキャリアが最初から用意されているから。


 だから、俺はかなり特殊な方なんだ。

 用意された将来に疑問を持ってしまうから。

 そんなちょっとネガティブな思考を羽衣が断ち切る。


「今日はどうするんだ?」

「あ~今日も行くか」

「よしよし、そう来なくっちゃな」


 そうして高校二年生という一番自由な青春を謳歌しに行くことにした。

 と言っても男二人連れ立っていく場所なんて限られているが、

 そう。若者の聖地ゲームセンターである。


 ―


 自分の人生の全てを機械によって決められる。

 なんてわけじゃない。

 国だってSFのディストピアみたいなのを作りたくて生み出した技術じゃない。

 だから進路や職業の斡旋はあっても日常生活まで縛られてはいない。

 こうして普通にゲームセンターで遊べるし、趣味に没頭することもできる。


「さて、何からやるかねぇ」


 そういいながらも、羽衣の足取りには迷いがなかった。

 向かう先は対戦格闘ゲーム。

 羽衣と二人で来るときはいつもこれだ。

 何をやるか悩んでいる時間がもったいないからとりあえず格闘ゲームをしながら考える。


「なんでもいいだろ、いつも通りだよな?」

「おう」


 そして二人対面に座って、懐から一枚のカードを取り出してゲームの筐体に差し込む。

 筐体の画面に支払いの確認画面が表示される。

 それはこの街だけの光景。

 ここがゲームセンターだからではない。

 この街ではあらゆる支払いはこうして行われる。

 いや、支払いだけじゃない。

 連絡も通信もありとあらゆる日常生活の全てがこの一枚のカードで成立していた。


 収納情報端末「ティリス」


 それがこのカードの名前。「報化技術」によって生み出された次世代の情報端末。

 これ一枚でありとあらゆる事が行える。

 また、このカードの真骨頂はそれ以外にある。


「戦いの前に水分っと」


 そういいながら羽衣はカードを一度抜いて操作すると、カードが薄く輝き空中にペットボトルに入ったドリンクが出現した。

 その現象こそがティリスの「報化技術」の超技術たるゆえんだった。


 物体を情報に変換し保存。またその逆を行うことができる技術。


 産まれたときから身近にあった技術とはいえ、どうゆう理論で成り立っているのかは全くの不明な世界最新の技術だ。

 これによってこの街では物流というものは限りなく低コストで実現できるようになった。

 もちろん、このカードにも容量はあって様々な要因で変わるものだから運送という職に需要がなくなることはなかったが。

 今も、俺や羽衣は荷物を持っていない。

 学業に必要なものは全てティリスに入っているからだ。

 この街で鞄なんて持っているのはファッション目的以外に存在しない。


「よし、やんぞ」

「はいよ」


 そして、ゲームが始まる。

 この時間は良い。

 何も考えなくて済むから。

 そんな放課後が過ぎていく。


「よっしゃ!俺の勝ち!」

「くそおおおお」


 負けた。

 完全に。


「腕上がったんじゃないか?」

「だろう?実はコソ練しててな」

「まじかよ、好きだねお前も」

「あたぼうよ」


 得意そうに胸をそらしドヤ顔を決める羽衣に少しばかりイラっとする。


「さて、次どうする?」

「そうだな……なんだかんだ格ゲーだけで結構時間使ったしな」

「だな。結構白熱したからな…それで楽しいからいいんだけど」

「違いない……あっ」


 次に遊ぶのはどのゲームにするか話しながら休憩していると視界の端に見知った少女が映る。


「あっ……兄さん」

「お!妹ちゃんじゃない!久しぶり!」

「羽衣さん、お久しぶりです」

希空(のあ)、珍しいなお前がこんなとこ来るなんて」

「ただの気分転換。学園の子達とさっきまで喫茶店でお茶してたけど気疲れしちゃって…」

「妹ちゃん、七曜だもんね。やっぱり窮屈なんだ」

「いえ、誘ってくれる子達はみんないい子なんですけど…擬態するのは疲れます」


 妹の希空が通う「七曜学園」は、俺や羽衣が通う「六鹿学園」とは違って色々と格式が高い。

 いわゆるお嬢様学園というものだ。

 妹を猫可愛がりした両親が無理して捻出した学費によってそこへ通うことになった生粋の一般人である希空は、その環境があまり得意ではないようだ。


「だから、親父たちを説得しようかって言ったのに」

「もう数年前の話を持ち出さないでよ。それに父さんも母さんも善意と好意で言ってくれるのに断れないじゃん」

「それで息苦しい学園生活ってのもなぁ」

「なんだかんだ楽しんでるからいいの!」


 意地になってんだか本心なんだかわからないが、思春期の妹にこれ以上は強く言えない小心者の兄だ。


「てか、そろそろそっちの学園寮は門限じゃねぇの?」

「うん。もう帰るとこ」

「そうか…悪いな羽衣。今日はここまでだ」

「おう今日は勝ち越したからな気分良いし、送ってこい」

「え、悪いよ」

「いやいや、可愛い妹ちゃんを守りたいお兄ちゃんの気持ちも考えてあげなって」

「なにそれキモイわ」

「うんないわ」

「流石兄妹、息ぴったりだ」

「「うるさ」」


 なんだかんだ軽口を言いつつも文句は言わないコイツは本当にいい奴だ。


「ほら希空、行くぞ」

「うん…」

「じゃ、また明日な羽衣」

「はいよ!妹ちゃん、また今度ね」

「はい!ありがとうございます!」


 来た時とは違う二人でゲームセンターを後にした。


 ―


 情報化がどんどん進み、電子的な機械が増えていく。

 その筈なのに街並みはむしろ一昔前のような姿をしていて近未来といった様子を全く見せない。

 この街は確かに実験を兼ねて様々な最新技術が導入されているが、それによってこの街に技術が集まりすぎると、災害などで被害が出たときに損害がとんでもないことになるらしい。

 そのためこの街はあくまでも情報化、電子化による技術だけが前に進み、建築などはあえてそのままにしていると何かで聞いた覚えがある。


 そんな街を二人で歩くこと数分。

 すぐに希空の通う七曜学園の寮が見えてきた。

 俺は少し離れたところで足を止める


「ここまでくれば一人でも大丈夫だな」

「せっかくなら最後まで送ってよ」

「いや六鹿学園の制服着たまま寮まで送ったら、お前が困るだろ」

「……」


 六鹿学園は周りから見下される傾向がある。そんな学園生である俺が一緒にいるのを見られたら希空には辛い学園生活に変わってしまうのは予想に難くない。

 実際、六鹿学園はこの街では一番下の学園だ。

 三つある学園のコンセプトのせいだが、何よりも学力の「三葉学園」伝統と格式の「七曜学園」幅広く自由の「六鹿学園」となっている。

 聞こえはいいが、要するに三葉学園に入るほど頭がいいわけじゃなくて七曜学園に入るほど金もないやつらが入る学校というのが一般的な常識だ。

 まぁ社会人たちはそれで態度が変わったりなどは滅多にしないが、現役学生となるとその上下関係は顕著に表れる。

 単純に俺たち六鹿学園の人間は街ですれ違えば鼻で笑われる。

 そんな兄を持っているとバレたらまだまだ沢山ある希空の学園生活は苦いものになる。


「分かってるだろ?」

「こんなくだらない思想なんていらないんだけど……」

「そういうな、所詮学生の間だけだ」

「はぁ」


 実に面倒そうにため息をつく。

 俺も面倒だとは思うが、むしろ見下される張本人は開き直れて楽だからな。


「…今日はありがと」

「おう、息抜きは良いけど程々にな」

「分かってるよ」


 そう言って拗ねた希空は寮に向かって歩き出す。

 その後ろ姿をしばらく眺めてから来た道を戻る。


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