買い出し
「……嫌です」
「いやいや言うのも嬉しい証拠だろ?」
「違います」
教室で俺は夢祢と二人っきりで話していた。
読者には何の話をしているのかわからないだろうから説明すると、学園祭(いわゆる文化祭)の為の買い出しだった。
ついでに出し物はネコミミ喫茶……という俺の発言は言い終わる前に却下されましたとさ。
最終的にはメイド喫茶になった。
……言っとくがメイドはメイドでも冥土だからな。
客を次々と冥土に送るらしい。
……このクラスはいったい客をどうしたいのだろうか?
「えと、あたしは用事がありますので。一人で行ってきてくれませんか?」
「一緒に行く運命なんだ」
さあ! 早く一緒にデートに行こうぜ!
俺の頭はそれだけでいっぱいだった。
あっ、ごめん。ちょっと鼻血が……
「……………」
鼻血を拭き終わり、夢祢を見ると……引いてました。
でも、その時の俺は引いてるとは知らずに……
「……そんなに見るなよ。照れるじゃん」
俺は恥ずかしくて顔を背けた。
「……気持ち悪いです」
この時に夢祢が引いてた事を知りました。
頼むと断れないのが夢祢だ。
「……はぁ」
「デート中にため息はどうかと思うよ?」
「……楽しくない。八神くんが一緒だから」
聞いてないのに答えてくれました。
「……暇だな」
とりあえず現実逃避してみました。
「あの……」 夢祢はそう言って俺に手を伸ばした。
え? 手を繋ぎたいって? 仕方ないなぁ。
俺はその手を握ろうと手を……伸ばさなかった。
「……何持ってんの?」
「え? サバイバルナイフです」
「何に使えと?」
「手首を切り落とすのに」
「死ねってか!?」
「えと、簡潔に言いますとそうなります」
「……またまた~、そんな事言ってホントは構ってほしいんだろ?」
「はい、ですから切ってください」
たまに夢祢が恐いと感じる時がある。
この満面の笑顔に恐怖を感じました。
俺はその後病院に運ばれました。