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死刑投票  作者: ロック
3/6

第2章

トオルは、どんなふうに彼女にアプローチすれば、振り向いてもらえるかを考えた。

トオルは、あの女の鼻を触りたかった。

鼻が触りたくてしょうがなかった。

男の死体の近くで小便を漏らしながら泣き続ける女の姿がそこにはあった。


トオルは、一旦彼女から離れ作戦を練ることにした。

彼女の容姿は、参加者の中でも群を抜いている。

北風と太陽、どちらかにならなければならない。

北風として、死刑をちらつかせ、彼女を脅すか、それか太陽になるか。


トオルは考えた末、太陽になることを選んだ。

まず透明チャットアプリ、SNSに近いものでタイムラインに投稿できたり、気に入った人をフレンドに追加できたり、通話ができたり、グループ通話もできる。

また画像投稿機能やビデオ通話機能などもあり、ラインと酷似している。


「彼氏さんの件、辛かったね」

匿名Aとして、彼女にDMを送った。

トオルは、配信の経験があり、イケボと周りから言われたことがある。

「話聞くよ」、トオルがそう続けると、彼女から電話がかかってきた。

彼女が事情を話し始めた。


「私、佐倉あいみ。

実は、彼とはできちゃったの。

突然のことで、しかも私たちまだ19だから本当にお金もなくて・・・それで」

メンタルが弱ってる時、それは女の狙い目である、そう確信していたトオルは、甘い言葉を次々と投げかける。

「誰か知らないけど、あなたに会いたい」

トオルは、「もう少し仲良くなってから」と言った。


その頃あいみは、メンタル的に病むと自分の気持ちを共有する傾向があり、タイムラインにダラダラと彼氏との思い出を語り続けた

それに対する誹謗中傷が次第に強くなり、陰湿な男や、彼氏ができない女のヘイトがわく。

あいみは、承認欲求から自撮りを投稿する傾向があり、端末内にインストールされている加工アプリで派手に加工した自撮りを載せると、男の不満は爆発し、男たちはあいみに性行為をお願いしたが、次々に男たちをブロックした。


あいみに投票率が30%を超えた時点であいみの部屋に、黒い背広を着た男が入った。

「執行室へ」

「トウマ、私もトウマのいるところに行くね・・・」


残り97人


トオルは、ただあいみの鼻を触りたかったから憤りを感じていた。

そして、トオルは、ストレスを発散するためにトレーニングルームに行き、20キロのダンベルで、ダンベルカールを行った後、150kgのバーベルで、ベンチプレスを行った。

体が細いトオルは、筋トレしてもなかなか筋肉質にならないことに憤りを感じていた。

こうして、自分の気持ちに見切りをつけた後、図書室に行った。


トオルは、学生時代からずっと1人で行動しており、他者と結局的に関わることもなく、誰が見ても孤立した存在だった。

トオルが学生時代にしていたアルバイト先の女の子に、一方的にトオルの関心ごとのドイツ空軍の話を一方的にしたら、店長に呼び出しをくらい、それ以降人間と関わることが、億劫になった。

彼は、自分の話したいことは満面の笑みで語るのだが、他人の興味のある話を選択してそれを話したり傾聴する能力が著しく低いため、友達もできず常に孤立し続けていた。


トオルは、本を手に取り席に着こうとする。最近は歴史に関する物ばかり読んでいる。歴史はいい。自身の知的探究心を満たしてくれるし何より、図書室に通う目的の1番でもある。トオルはどの歴史を学び、どのように知識を披露してやろうか、と。いつか来るかもしれないその日に胸を膨らませていた。

すると、図書室で眼鏡をかけた女が何か本を読んでいる。

女が読んでる本は小説だった。

トオルは、小説を読んでる女を内心小馬鹿にしながら、持っていた本を戻し、トルストイ全集を手にし、女の前で読んだ。目的が変わったのだ。トルストイ全集を読んだ日に抱いた理想の日、そのタイミングが来たのだ。

こちらを羨望の眼差しで見つめるのだろうか?それとも声をかけて来たりするだろうか?淡い期待を胸に抱きながらトオルは女の前の席に腰掛ける

しかし、どれだけ物音を立てても女はひたすらに本を読み続ける。


慚愧の唇を結ぶとはこういう事か、、、思わぬ形でしばらく前に得た知識が役に立ったが、そうではない。

思い通りにならず、トオルは図書室を後にした


過去の様々な出来事を思い出したトオルは、施設内のレストランで20チップの高級ディナーを音を立てて食べた。

近くに、紳士のような男と食事をする美女の姿があった。


その近くには、大皿に大盛りのライスと牛肉と玉ねぎのソテーと、3種のチーズと温玉が乗ったディナーを食べる男の姿があった。

眼鏡をかけていた彼は、ナイフとフォークでゆっくりと頬張る。

男の顔は童顔で、中学生のような容姿であった。


トオルは、眼鏡の男に声をかけた。

「名前を伺いたい」

「ワイは佐野いびる。

お兄さんあんたん名前なんや」

「俺は、トオル。

美味しいそうなもの食べてるね」

「お、お兄ちゃんわかるんかいな!

これは、店員に頼んで頼んだんや。

三色チーズ牛丼の特盛で温玉乗せや。

お兄ちゃんとオーダーしてみ?うまいで」


トオルは、隣の席で追加オーダーをした。

「すみません、三色チーズ牛丼の特盛で温玉乗せで」


トオルは、いびるのことに関心を抱き、いびるにいろいろ伺った。

どうやら、いびるは、無職で36歳らしく親によってこのゲームを紹介され、親曰くこのゲームに勝てば家に置かせてもらえるそうだ。

トオルは、何故いびるが働かないのかを伺おうとしたが一切答えない。


ただ、トオルは、いびるといると安心感を感じたため、食後居室に戻った後もいびるとずっと通話していた。


翌日、トオルは、施設の別フロアに行ってみるとそこには、コンビニのような売店があった。

売店のすぐ近くには、調理スペースもあったため、とりささみと、ブロッコリーとじゃがいも、にんじん、白ワイン、牛乳、小麦粉、ブイヨン、そしてバターを購入し、彼は、シチューを作った。


トオルが料理をしていると、昨日図書室にいた文学女がいた。

「味見していい?」

「初対面なのに、なんでタメ口なんですか?」

「だめ?」


「・・・いいですけど」


小皿に彼女の分のシチューを渡した。

「美味しい」

「マスカルポーネを隠し味に入れたんだ。

3チップしたから多分高級品だ」

女が自分から名前を名乗った。

「あたし、須藤もえ。

あなたは」

「俺は角谷トオル。」

「頭良いんだね・・・って言われ慣れてるよね」

「・・・ありがとう」

トオルは、もえに少し照れた。


「もえ、なんでこのゲームに参加したんだ」

「実は私、奨学金返したくて・・・」

「・・・だとしたら、普通に働いて返せば」

「ダメなの、あたしさ、もう寿命残ってないんだよね。

病名とかはいえないけど、だからせめて両親には借金とか残したくないし、それに産んでくれたことへの恩返しをしたくて」


トオルは、泣いていた。

なんて、綺麗な心の持ち主なんだと。

こんなにも綺麗な心の持ち主を・・・内心馬鹿にした自分があまりに恥ずかしい。


端末の通知音が響いた。

次は顔も知らないような奴だ。


同タイミングで投票率25%超え、どちらも男性で見たところ若そうであった。


残り95人

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