3-79、かたや手料理、かたやラーメン
「おぉー・・・・・・。これはもう、バッチリだよ。・・・・・・すごいよ、きょうこ!」
「スピーチだけじゃなく、文章力もすごいな。俺や敬太じゃ、こんなの書けないわなー」
「すごく、大人っぽい文章ですね。阿部先輩、これは、先生方も誉めてくれますよ!」
「やった! よかったぁ! いろんなところから文章を引っ張って、参考にしてみたんだぁ。わたしもこれなら、卒業式の送辞として、スタンダードでいいかなーってね!」
前原たちが中村の家にいるのとほぼ同時刻。阿部の家では、送辞の原稿を生徒会役員の黒川、長谷川、大南が確認していた。
「これ、たぶん、うちやまが読んだら『わーん』って感涙するかもしれませんよ?」
「『花々の蕾も開き、風に乗って、ほのかに白梅香が漂う、今日』・・・・・・か。詩人だなぁ、きょうこは! かっこいい冒頭だよな!」
「これで、もし卒業生側の答辞がダサかったり、変な文だったら、台無しだけどな・・・・・・?」
「へへー。やった! いろいろ、苦労したのよー? まっ、この原稿で、だいじだよね?」
「「「 バッチリ! 」」」
「よーかーったぁーっ・・・・・・。あー、疲れたー・・・・・・」
阿部は、こたつに突っ伏し、橙色のこたつ掛けに、もこもこと包まる。
四畳半ほどの広さである、阿部の部屋。そこの真ん中に置かれたこたつ。その上には、餡団子と渋いお茶が。
「きょうこ、テレビかけてもいい?」
「・・・・・・どーぞ。好きにして良いよ。わたし、ちょっと、また眠くてー・・・・・・」
・・・・・・ピッ・・・・・・
~~~ 本日は、ここ、沖縄! 今日も頑張る、文武両道の子を紹介します! 『ジュニアスポーツちゃんねる』、沖縄県よりお送りしております! ~~~
黒川がテレビの電源を入れると、何やら、生放送のインタビュー番組のようなものが映っていた。
「へー。見てみ、みつるー。沖縄だってよー? この時期でも、暖かそうだなー」
「おー。インターハイや修学旅行から、もう、だいぶ時間経った感じだなー。懐かしいなー」
テレビを見ながら、黒川と長谷川は沖縄について雑談中。大南は腰までこたつに潜り、ファッション雑誌や空手雑誌を見ながら、笑顔でページをぺらぺらと捲っている。
阿部も首までこたつ掛けに包まって、もこもこ、うとうと。今にも寝てしまいそうだ。
~~~ はーい、こちら、沖縄県立うるま中央高校より中継していまーす。本日はこちら。生徒会長で、なんと、空手道部主将でもあるという、糸城光羽さんです! 糸城さんは、五歳から沖縄劉景流の空手を・・・・・・ ~~~
・・・・・・がばっ!
「い、いとしろみつは? あの糸城さんじゃん! ・・・・・・生徒会長ーっ? そうなの!?」
阿部がテレビの音声を聞いて、一気に起き上がった。なんとテレビに、インターハイで一緒だった糸城が道着姿で登場。しかも、裸足で寒稽古中のようだ。
「阿部先輩、この人も、先輩と同じ立場ですよね? 生徒会長で、主将って・・・・・・」
「そうだね。びっくりしたなー。・・・・・・インタビュー、どんな受け答えするんだろう?」
「きょうこ、この子、沖縄の道場で一緒だった子だよな? 夏より凜々しくなってる!」
「そ、そうね。・・・・・・うわー。糸城さん、頭良さそうだなぁー。中村先輩みたいになってる」
~~~ 糸城さん、全国選抜大会出場が決まったということですが? ~~~
~~~ 「はい! 空手発祥の地、沖縄の代表として、精一杯戦って、空手の本場としての存在感を、魅せたいと思います!」 ~~~
~~~ すごいですねー。糸城さんは、勉強も学年トップクラスの成績で、生徒会長でもあるという、文武両道の子です。将来に活かしたいことや、想いなどは? ~~~
~~~ 「空手は、スポーツ的に今は捉えられておりますが、沖縄の歴史や、また、武術文化としての面にも大きく関与しております。私は将来、空手道を学問的に研究して、世界にその研究成果を発表し、広く発信できればよいと思っております。本校の生徒会役員は、私も含めて、みんな空手道の有段者です。文武両道については、私は特に意識したことはございませんが、みな、優秀なメンバーです」 ~~~
~~~ とてもキリッとして、かっこいいですねぇ。ぜひ、将来の夢を実現させて下さい。では、以上、沖縄からでしたー。 ~~~
・・・・・・ピッ・・・・・・
「え? きょうこ。なんで消しちゃうんだー? 俺たち見てたのにー」
「なぁんか・・・・・・負けた感じー。糸城さんはテレビで、わたしはこたつだもんー」
「先輩ー。沖縄は、きっとこたつが要らないんですよ。だから、負けてないです。てか、何言ってるかよくわかりません・・・・・・。先輩は、先輩ですから。比べなくて良いんですよー?」
「恭子だって、生徒会長なんだし、変わんねーよー。敬太も紗代も、恭子のことはしっかりと会長として、主将として、頑張りを認めてんだから。あ、もちろん、自分や真衣もな?」
「充、紗代・・・・・・。ありがと。・・・・・・そーだね。わたしは、わたしだ。みんながいてくれるんだから、ねっ。・・・・・・ありがと! お腹空いたね? わたしの部屋にいてもヒマだから、ラーメンでも食べに行こっか? すぐ近くに、美味しいところあるんだ!」
「「「 いえーい、賛成! 」」」
「真衣も、来られれば良かったのにねー。残念・・・・・・。まっ、今日は、わたしのおごりね!」
前原たちが中村の手料理を食べていた頃、阿部たちは四人でラーメンを食べていたようだ。
・・・・・・ずぞぞぉー ずずーーーっ! ぞぞぞぞーっ!
・・・・・・はふはふ ・・・・・・ずぅーっ ずぞぞーーっ!
・・・・・・ちゅるちゅる ちゅるっ ずずーーーっ!
・・・・・・はふふ はふはふ ずずーっ ずーーーーっ!
「あぁー、うまっ! 敬太ぁ・・・・・・寒い日のラーメンって、ほんと、美味いよなぁ!」
「そうだな! ・・・・・・みつるー。でっけぇチャーシューだな、この店。味噌味もうまいぞ!」
「美味しい! 阿部先輩、ありがとうございます。・・・・・・わたし、塩ラーメン派なんです!」
「(はふはふ)あったまるねーっ。今日は、みんな来てくれてありがとね。・・・・・・明日の予行が終わったら、いよいよ明後日。先輩方へ心からの感謝を込めて、送り出してあげようね!」
四人は、笑顔で麺をすする。
これで、卒業式の送辞、答辞が共に出来上がった。
卒業式まで、あと、二日。泣いても笑っても、あと、二日・・・・・・。




