3-76、中村らしからぬ・・・・・・
・・・・・・ガタタン ガタタン ガタタン・・・・・・
・・・・・・ゴトンゴトン ゴトンゴトン ガタタンゴトン・・・・・・
沈んでいます。中村が。落ち込んでおります。中村は。
「・・・・・・ったく。なにしてんだよ、陽二! 明後日の予行までに、原稿、間に合うんかよ!」
「とりあえず、明日また、みんなで考えようよ。・・・・・・中村君も、受験で疲れて目一杯だったんだしさ・・・・・・。それにしても、中村君がこんな大事なこと忘れてたなんて、珍しいね」
「す、すまん! ・・・・・・くそっ、おれとしたことが・・・・・・。答辞の文章など、どう書けばいいんだ? 生徒総代での答辞だ。・・・・・・下手なことは書けないし・・・・・・」
「蘊蓄が得意な中村も、そういうのはパッと出ないとはねぇ? ま、明日、みんなで図書館にでも集まって、考えようかねぇー。それでいいかね、中村?」
「ほんとにすまん。うっかりしていた。・・・・・・なるべく、おれが文の叩き台は考えて書くが、みんなの手直しや意見があるとありがたい。本当に、申し訳ない。・・・・・・図書館にわざわざ来てもらうのも悪いから、おれの家でどうだ? お詫びに、手伝ってくれるみんなに、おれの新作料理を振る舞いたいが・・・・・・」
「え! ほんと? アタシ、中村んち行く! なーに、たかが五分か十分程度のスピーチ文を書けば良いんでしょ? すぐできちゃうってー」
「真波ぃ・・・・・・。おまえ、答辞って、後輩たちの送辞に対する返答だぜ? 適当にゃできねーからこそ、難しいんだぜ?」
「送辞に対する、答辞かー。恭子たち後輩からの言葉に、私たちが返す形になるんだよね?」
「ま、落ち込むなよ、陽ちゃん! なーに、この同期が集まりゃ、何だってピンチは乗り越えられるって! だーいじだって! だっはっは。こんなことも、あるってばよ!」
「むむ・・・・・・。なんてことを、おれは・・・・・・。くそっ、浮かれてしまっていた・・・・・・」
「まぁ、人生、こんなこともあらぁ。気にしすぎは良くないぞぉ。中村、卒業式の生徒総代で答辞なんて、チャンスじゃんかー。ピンチはチャンスってことだねぇー」
「やれやれ。陽二って、すげーんだか、間が抜けてんだか、俺は時々わっかんねぇー。ほら、これ、飲めよー」
「イチゴみるくオーレ? すまんな、井上。・・・・・・はぁーっ・・・・・・おれは、今夜から書き始めるぞ! みんな、今夜はメールとかは返せないから。そういうことで・・・・・・」
「私が代わってあげても良いけど、やっぱり、中村が総代で選ばれたことだしねー」
・・・・・・ガタタン ガタタン ガタタン・・・・・・
・・・・・・ゴトンゴトン ガタタンゴトン・・・・・・
・・・・・・プアァーッ
沈む中村を慰めながら、前原たちは電車に揺られていった。
窓には、流れては消えてゆく街の灯りや車の明かり。時々過ぎ去る、踏切の真っ赤な明かり。
同期七人の、プチ旅行。ほっこりして、ひやひやして、笑って叫んでうっとりして、甘く楽しく暖かい想い出は、流れて消えることなく、全員の記憶に刻み込まれた。
突如話題に出た、送辞に答辞。
いよいよ、卒業式が目の前に迫ってきているのだ。柏沼高校の、卒業が。
最後まで、中村は溜め息をつきっぱなしだった。




