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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第3部・完結編  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第5章 ドリームマッチ! かしぬま武道フェスティバル!
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3-72、拳士たちの大宴会! お疲れさまでした!

「ただいま! おかーさぁん、どこー?」

「おかえり! 奥の座敷に用意したよ。みんな上がっちゃいな! 後からまた出すかんね!」

「「「「「 お邪魔します。お世話になりまーす! 」」」」」


 狭山の実家は、小料理屋と整骨院。

 割烹着姿の、恰幅の良い女性が奥から暖簾をくぐって出てきた。狭山の二倍はありそうな横幅の、貫禄がある母親だ。

 楓の一枚板だという、趣のあるカウンターが三席。小上がりが四席。前原たちが通された宴会用の奥座敷は、三十席は取れそうな広さだった。店内にうっすら漂うお香のような薫りが、何とも居心地良い感じだ。


「へーっ! アタシ、こういうお店、好き! これは居心地良いし、絶対美味しいお店だ!」

「ありがと! さぁ、みんな、適当に散らばって座って! 飲み物、なにがいい?」

「アタシ、生ビール!」

「俺、冷や酒がいいねぇー」

「ちょ、ちょっと! 田村君も川田さんも、だめだよぅ! いくらなんでも・・・・・・」

「冗談に決まってんでしょうよ! いくらアタシでも、この場でそれは飲まないわよ?」

「え? 川田は冗談だったんけ?」

「田村ぁ。・・・・・・あんたって、けっこう、ばかな時は、ばかよねぇー・・・・・・」


   わいわいわいわいわいわいわいわい  わいわいわいわいわいわいわいわい


 そして、みんなで談笑しながらの懇親会がスタート。

 畳の間にみんな座り、大きな長テーブルを囲んで、わいわいがやがや。違う学校、違うチーム、先輩後輩も関係なく、みんなで楽しく語り合っていた。話題はほとんど、空手談義だが。

 一時間以上経ち、お寿司やお肉で盛り上がっていると、だんだん空手談義から、雑談やエンタメ話など、普通の高校生らしい話題も飛び交うようになった。


「いやぁ、陽ちゃんと尚ちゃんの最後の突きは、しびれる場面だったよなぁ! だははっ!」

「あれは、俺もやばかったねぇー。中村が、思ったよりつえーんだもんー」

「ねぇ、柏沼高校はさ、バレンタインデーのチョコ、バレたらどーなる? 宇商ではさぁー、そこまで厳しくないのよねぇー? ・・・・・・さーて、今年、どーしようかしら?」

「あー。狭山ぁ、誰かにあげるのね? アタシは、そーゆーのやらないしなぁー」

「なんでぇ? 川田も森畑も、部の男子にあげたりしないの? 変な感情抜きにさ?」

「うーん。私も真波も、そう言えば、それは気にしたこと無かったような・・・・・・」

「二人とも確か、彼氏とかいないよね。恋人作る気は、ないの?」

「「 ないね! 」」

「スパッと言うねぇ。作る気無くても、部の男子くらいには、お疲れさまってあげればー?」

「そーだ! 真波も菜美も、くれよ! 毎年、コンビニでわざわざチョコ買って、親に見栄張る俺の辛さ、わかんねーべ? あー。ぜってぇ大学行ったら、俺は翡翠で儲けて、彼女作ってやっからなぁー。待ってろ富山県! この井上泰貴が春から行くぜぇ!」

「・・・・・・井上さぁ・・・・・・。バカね! アタシにチョコくれと言いながら、なんで富山で彼女作ってやるなんて言うのよ! 井上のバカ!」

「・・・・・・い、井上先輩。チョコのそれは・・・・・・自分もわかるっす! うん! 辛いっすぅー」

「みつるー。言うなよぉー。切ないからさー。俺も同じだよぅー・・・・・・」

「そーいえば・・・・・・。あの、二斗さんは、等星の大澤さんが好きなんですか?」

「(ぶぶべふぅ!)・・・・・・な! ・・・・・・なにを・・・・・・いきなり? ・・・・・・なんだとぅ?」

「紗代! 二斗がお吸い物噴き出したじゃんかぁ! 目の前にいる敬太がびしょびしょよ! 唐突に変なこと言わないの。ご、ごめんね、二斗! アタシも噴き出しそうだったけど」


 二斗は顔を真っ赤にして、てんとう虫柄のハンカチで口元を拭っていた。


「・・・・・・おぉい、前原! ばかやろう! 飲んでっか? おい、おめー。もっと飲めー」

「・・・・・・前原、篠崎をぶっとばしたりするなよ? 面倒くさそうだから。私にも振るなよ?」

「えー。諸岡さん、助けてよ。さっきから篠崎君、水しか飲んでないのに、こーなんだよ?」

「ん! ばか! 篠崎、お前! これ、水じゃねーよ。いつの間にか、酒が開いてる・・・・・・」

「え! ま、まずいよ! ほら、篠崎君! こうなったら、たくさん水飲んで!」

「えーい、うっせぇ、ばかやろうー・・・・・・。おらぁ、水ばっか飲めっかぁ。くそやろう!」

「篠崎、絡みまくってくるわけだ。アタシも、諸岡と同様。面倒くさそうだから、パス!」

「そ、そんなぁー・・・・・・」

「・・・・・・ふぅ。ちょっとみんな、篠崎から離れて・・・・・・。いいわね・・・・・・?」


 真顔で静かに立ち上がった朝香。前原たちは一瞬で危険を察知。さっと全員、篠崎から離れた。


   ・・・・・・ピシャアッ!

   キイイイィィィィーーンッ!  ドゴォォァァーーッ!


「うごぉーっ! どわぁーっ! ・・・・・・うぐ・・・・・・うぷぷ・・・・・・」


 朝香は涼しい顔をしながら、篠崎に強烈な中段突きを中高一本拳で叩き入れていた。すると、篠崎は、お手洗いへ一直線。しばらく出てこなかった。生きてるのだろうか。


「・・・・・・さぁ、みんな、食べよう? ・・・・・・美味しい料理もお肉も、冷めちゃうよ?」

「す、すごいな・・・・・・。さすが、朝香さん・・・・・・。あははは・・・・・・」


 何事も無かったかのように、朝香はまた座り、料理を頬張る。阿部はこれに、顔が引きつって苦笑い。


「あっははははッ! なんか、道場の新年会みたいさぁー。楽しいなッ! いーね、小笹!」

「お肉も、おいしーッ! 川田センパイやインテリ中村センパイのチームに、感謝だねッ!」

「うまい! ・・・・・・なるほど。小笹ちゃん、美鈴ちゃん。この肉なら、おれが開発したタレは必ず合うだろう。後で、小笹ちゃんに、レシピを教えてあげても良いのだが・・・・・・」

「えー。嬉しいなぁッ! ねぇ、教えてッ? インテリ中村センパイ、お願いー」

「う、うむっ! で、では、その時はぜひ、小笹ちゃん。おれの家に・・・・・・」


   ・・・・・・ドゴアッ!


「い、いてぇ! な、何しやがるんだ権田原!」

「中村! おまえー、そりゃ犯罪だべな! そーやって連れ込んで、いかがわしいマネを!」

「ふ、ふっざけんな! おれはその、なんだ、小笹ちゃんらに、純粋に料理人としての『中村流料理』の味付けと盛りつけ方の伝授をだな・・・・・・」

「なにが料理人だ。そんなら、このスーパー料理マスターである権田原優斗にも一緒に教えてくれよぉ! 純粋なら、かまねーよな? あ、末永小笹さんたちも、一緒にね!」

「ふざけろ! お前こそ、変な目的意識があるんじゃないのか? おれの家は、定員オーバーになると爆破されるシステムだ! 諦めろ! だいたい、なんでお前をおれの家に・・・・・・」

「ふーん。ほぉーお。ほぉぉーお? ・・・・・・なら、そこにいる崎岡や諸岡が、ファンシーランジェリー姿で来て、それで定員オーバー気味でも、お前んちは爆破されんだなぁー?」

「むむっ! ・・・・・・まぁ、その、なんだ。女性は体重が軽いから、爆破は・・・・・・ないかな?」


   ・・・・・・ゴシャアアァァッ!  ・・・・・・バキイィィッ!


 権田原は、崎岡と諸岡に両頬へ強烈な縦拳を見舞われ、その場でお潰れとなった。


「・・・・・・ったく。美味しい料理がまずくなる話題するんじゃないよ! なぁ、有華!」

「恥ずかしいっ! 清雲館のやつは品がないぞ二斗! 武道家としての品ってものが!」

「・・・・・・。・・・・・・オレも? ・・・・・・なの? ・・・・・・・・・・・・オレは今、清雲館と違うんだよね・・・・・・」


 ご立腹でお肉とお寿司を食べる崎岡や諸岡を前に、二斗が小さくなっていた。


   ・・・・・・かちり、こちり・・・・・・

   ・・・・・・わいわいわいわいわいわいわい・・・・・・


「あ! もうこんな時間ーっ? そろそろみんな、お開きにしよっか! 立って立ってー」


 狭山の一声で、「宴も(たけなわ)ですが」と言った雰囲気に。みんな一斉に立ち上がる。

 篠崎だけは、洗面所の横で死んだようになって、未だ転がっているが。


「いい? 道場の飲み会とかで見るアレ、やろう! さ、お手を拝借! 関東の一本締め!」


 ~~~ いよぉーーーーおっ! パァンッ!  パチパチパチパチ! ~~~


 楽しく美味しい懇親会だった。それぞれが想い出を刻み、各々が別々の方向へと帰っていく。

 前原、田村、川田、井上は、帰り道を一緒に歩きながら、夕月を静かに眺めていた。


「みんな・・・・・・ありがとねぇー。本当、高校三年間で集った、いい出逢いの仲間たちだったねぇー。俺たち全員さ・・・・・・」


 井上と川田が、目を潤ませ無言で頷く。夕暮れの空が、四人をそっと包み込んでいた。

 高校生活も、もう、残りあと僅かになっている・・・・・・。

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[一言] 二斗、完全にギャグキャラじゃんかwww
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