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三ヶ月
しばらくすると、陽子の気持ちも少しずつ落ち着いてきた
人間の記憶は、うまくできている
時間と共に忘れることができる
そんな頃に、夜、拓也が手を伸ばしてきた
触られたくない
本当に嫌だった
やめて!と突き飛ばした
ひどいなあ、といじけて拓也は寝た
ひどいのは、誰?と落ち着いていた心がまた強く痛んだ
なぜかわからないけど、悔しくて泣けてきた
涙が止まらなかった
次の日の朝、腫れた目をして陽子は決めた
拓也に言おう
離婚することになっても、かまわない
悪いのは向こうだ
慰謝料と養育費を取れるだけ取ればいい
覚悟が決まると、今まで押さえてきた怒りが沸々とわいてきた
我慢ならない思いで、その夜遅く拓也に切り出した
「ごめんごめん、キャバ嬢だから」
と、にやけた顔で拓也は言った
お金を払っている、割りきったプロの相手だから、という
動画を見てから、苦しんだ三ヶ月間のことを思い出して、陽子は、ほとほと拓也にあきれた
愛想がつきた
「俺が好きなのは、陽子だけだよ」
と、ほざいた
許せない、と陽子の怒りは沸点を越えた