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朝ーーanotherーー

作者: 下澤華月

ドサッ。


「いてっ」


どうやらベットから転げ落ちたらしい。

盛大に腰を打ち一人悶絶する。


涙目になりながら時計を見ると、いつもより少し早い。

今家を出ればあの子に会えるのか……。

なんだか今日は無性に会いたい気持ちに駆られいつもより早く家を出ることにした。


家を出ると微笑ましいカップルに出くわした。


「ちょっと、待ってよ〜!歩くの早いって〜」

「お前が遅いんだろ〜?」


彼氏の後を必死に追いかけている彼女。

顔を真っ赤にしながら彼氏を追う姿は可愛いものだ。

俺たちにもそんな頃があったな、と思い返してみたが彼女を追いかける俺の図しか浮かばなかった。


おかしいな……。

そんなはずないと思ったのに……。


そんなことを考えていると最寄り駅についた。

時計を見ると、次の電車がいつも彼女が乗っている時間帯のものだった。

駅のホームに着くとしかめっ面をした彼女を見つけた。

極度の寒がりで、マフラーに埋めた顔は眉が寄っていてせっかくの可愛い顔が台無しになっている。


まぁ、そういった所も可愛いけど。

つい、ニヤけてしまいそうになる顔を無理矢理何事もないような顔で歩みを進め、彼女の後ろまで来た。

普通に挨拶してもつまらないと思ってしまったのが運の尽きだ。


彼女の首元に両手をあてがう。


「うらっ!」

「うっ!」


変な声を上げる彼女を笑わないように努めようとしたがそんなのは無駄な努力だった。

口から漏れるように笑うと彼女が振り返った。

不機嫌度MAXの顔をしている。

やりすぎたかなぁ、なんて思ってると彼女が口を開いた。


「最後の言葉くらい聞いてやる」

「慈悲はないの!?」


反射的にツッコンでしまった。

さすがにやりすぎたと思ったので、反省の意を込めて平謝りする。

チラりと目線を上げると、彼女は不機嫌な顔をしておらず、幸せそうに笑っていた。


この子は気づかないでそんな顔してるんだからずるいよな……。


これは俺の密かな楽しみでもあるので、彼女は全く気づいていない。


「もう、いいよ…」

「でも、怒って……」


不安そうな顔を作って彼女を見る。

すると、苦虫を噛み潰したような顔をしてしまった。

周りからしたら、あまりいい印象を与えないような顔だが俺は知ってる。

この顔の時は割と好感触なことを。


「怒ってないからそんな顔しないの」

「ホント!?」


ほらね。

こんなちょろい彼女が可愛くて仕方がない。

つい顔が緩んで、勢い余って手を繋いでしまった。


「ちょっ、外でそういうことは!」


彼女はハッとなにかに気づき気まずそうに目線をそらした。

チラリと見るとおじさんがこっちを見てたみたいだ。

まぁ、俺には関係ないけど。


彼女と目が合う。


「なんでもないよ……」


手に力が入れられるのが分かる。

握り返されたことが嬉しくてニヤける。


「そういえば、今日は早いね?日直?」


話題を急に逸らされた気がする。


「ううん、会えるかな?って思って」


真っ赤になってしまった顔を見て、くくくっと笑う。

バカって言われた気がするけど気のせいだろう。と信じたい。



電車が来たことが彼女との時間が終わるカウントダウン。


たわいもない話をしているうちに彼女が降りる駅に着いてしまった。


「じゃあね!頑張って!」

「ん、ばいばい」


彼女が繋いでいた手をゆっくりとほどく。

名残惜しそうな顔をしながら扉の前に向かっていく。


次はいつ会えるかな……。


そんなことをぼんやりと考えていると彼女が俺の方を振り向く。


「今日、そっちまで行っていい!?」


彼女からそう提案されたことに驚きはしたが嬉しくなって笑顔で答える。


「いいよ!俺待ってる!どれだけかかってもずっと待ってるから!!」


彼女は微笑むと電車を降りた。



一人電車に揺られながら思う。

なんなんだあれ。反則だろ……、可愛すぎ。

4年も付き合ってんのにあんな……はぁ。

今日の授業は頭に入らないんだろうな……。



あー!早く会いたい!


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