八十三話 大人が全うすべき使命
放課後の話で~す。
夜真砥が魔人族のエレンと話します!
リリムの泣き顔を見れて意気揚々と寮に戻っていくサディスト夜真砥だったが途中でエレンに呼び止められて再び教室に戻ってきた。
「どうした急に呼び止めて」
「夜真砥先生、こんな俺でも勇者になれますか?」
「どういう意味だ?」
「俺の祖父は魔王です。五百年ほど前に倒されたと聞いております」
五百年ほど前…ああ、あの魔王か。
確か悪逆非道の限りをつくし勇者に倒れたという。
「つまり、俺は魔王の血筋です。俺は困っている人を助けたい。それをしている魔王を倒してやりたいと思っています。でも、そんな奴がギルドに入ったらどんな目で見られますか」
「嫌な目で見られるのは確かだ」
「そうですよね」
「でもな『そんなの関係ねぇ』と言ってくる奴もいるしそういった目をする奴を殴り飛ばす奴もいる。現に俺は魔王の娘の師匠をしてるぞ。勇者の俺がだ。最初の質問に答えよう。気持ち次第だ」
夜真砥は鋭い目つきをしてエレンに答える。
「気持ち次第」
「そうだ。俺が勇者の称号を得たのもつまんねぇ理由だ。単純に倒した魔王のやってることがムカついたから。そんで討伐隊に入ってボロボロになりながら倒した」
「知ってますよ。ボロボロになりながらも討伐隊を庇いながら倒したんでしょ」
討伐隊を庇いながら?
さすがにあの時の俺では無理だぞ。
どっかで誰かが盛りやがったな。
「別に魔王の孫が勇者になれないっていう法律なんてねぇし」
「でも、変じゃないですか?」
「変?面白いの勘違いだろ?魔王の孫が勇者の称号を得るとか無茶苦茶、おもしれぇじゃねぇか!」
何せそんな奴、ギルドにいないからな。
「確かに面白いですね」
「…エレン、最後に俺から質問する。本気で勇者に…利益、報酬目的を請おうとしないバカげた奴になろうと想っているか?」
「想っております」
「わかった。残りの二週間で俺が持つ技術をお前に教える。他のモノは盗み取れ。ガキの夢を応援し支えるのは俺達、大人の全うすべき使命だからな。死ぬ気で付いて来い。ヌルくはねぇからな」
夜真砥はそれを言うと教室を後にした。
そしてエレンは椅子に座り自分のノートに今日まで夜真砥が教えた全てのことを思い出し綴った。
「あらマスター、遅かったね」
「ちょっとガキの背中を押してただけだ。で、朧と宿に泊まっているお前が何のようだ」
朧と月夜は学園の近くの宿に泊めてある。
月夜がもしこの寮を出入りしてたら俺がヤマト・ツケカゲだとバレる可能性があるからだ。
「報告をしにきただけ」
「結果は?」
「いなかった。デマなんじゃないの?」
デマの可能性はないだろうな。
何せジュダの仲間が脱獄したって新聞にあったし。
それにこの島がある方角に飛んでいく竜が目撃されている。
可能性は充分ある。
しっかしどこに潜伏しているんだ。
まさか!
「月夜、お前」
黙ったな。
よし確定だ。
「おい、こっち見ろ」
「…イヤよ。あそこだけは絶対にイヤ!」
「下水道を調べろ」
月夜は下水道が嫌いだ。
まあ、女の子だからな。
でも、嫌いという区分に入れていいのか?
かなり前に下水道に魔物討伐をしに行った時、入り口近くで首もとに剣を突き立てて抵抗してきたからな。
あの時は死ぬかと思った。
「お願いマスター!あんな汚らしい場所に行きたくない!」
「病原菌を持ってくるなよ」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」
前ほどじゃないけど全力で抵抗してくるな。
「無理でも行け」
「絶対に行きたくない!」
「ご褒美に煎餅やる」
「…煎餅…でも、下水道、煎餅、下水道、煎餅…やるわよ!」
煎餅作戦成功!
月夜の好物の煎餅は母国にしか売ってないから俺が商人ギルドを通じて取り寄せている。
しかもその煎餅がすぐになくならないように俺が管理している。
つまり、月夜は俺の許可がないと煎餅を食えないのだ。
「サディスト」
「それはお前だ」
下水道に行くことが決まった月夜は渋々、宿に戻っていった。
ということで月夜は渋々、下水道に行きます(^0^;)
それではまた次の話で!