七十五話 終わりを知らぬ罪深き炎
第五章のキーとなる話です。
時はさかのぼり日の本の国で宴が行われていた頃、アルジア大陸の下にある大陸、オルストリア大陸の渓谷にある監獄に収容されていた一人の男がタルタロスに護送されることになった。
「乗れ」
タルタロスまでは飛空艇で送られる。
「そうせかすな。煙草、吸っていいか」
「中で吸え」
「吸わせてくれるのかそりゃあありがたい」
護送されるのはクーデターを起こした犯罪者である。
年は四十代前半で髪は赤毛だ。
男は飛空艇の中央にある牢屋に入れられた。
「ほらよ」
「ありがとさん!」
護送する騎士は男に煙草をくわえさせ火をつけた。
「最後の煙草だ。ありがたく味わえよ」
「ああ、そうするよ」
騎士は船首の方にいる仲間の騎士のもとに行った。
この飛空艇には騎士が三十名乗っている。
「どんな様子だった?」
「陽気に煙草を吸ってるよ。これから自分が収容されるところがわかってんのか?」
「だから陽気でいるんだろ。見張りはいるよな?」
「交代で三人だ。俺、ショックだぜ。あの人に憧れて騎士になったのにまさかクーデターを起こして王国を裏切るなんて」
男は有名な騎士だった。
その騎士に憧れて騎士になった者は多くて騎士の業界では彼の王国の裏切りは一大ニュースとなり今でも騒がれている。
そしてあのジャックも彼に憧れてたと言っても過言ではない。
「俺もだ。例えどんな英雄でもこうなったらおしまいだ」
「そういえばヴォルカン島に封印されていた魔物が動き出したって知ってるか?」
「マジか!俺にも召集がかかるのかなぁ」
「お前、弱いからないだろ」
「あるかもしれねぇぜ」
一方、牢屋の男は、
「まだ鼻歌をやってるのか?」
「陽気なもんだよなぁ」
「騎士さん、今ってどこら辺だ?」
「オルストリア大陸を抜けた頃だ」
「その辺か」
「天気が荒れないといいですね」
オルストリア大陸、近辺の海域はよく嵐が起こり荒れやすいのだ。
そして騎士の不安は現実となり天気は崩れて嵐となった。
「急いでドームを出せ!」
飛空艇には嵐が吹き荒れる空を通らなければいけない時のため乗員や乗客を守るために飛空艇の甲板を覆うドームがある。
「まさか本当に荒れるとはな」
もちろん、何かあるといけないので牢屋の見張り番は増やされ五名となった。
「何かあったのか?」
「嵐だよ」
(いつまであの煙草の火はついているんだ?)
「もう嵐が起こる空域に来たのか」
(そろそろやるとするか)
「おい、何かこの部屋、暑くないか?」
「気のせいだろ」
「確かに暑いな。鎧を脱ぎたい」
騎士は兜を取って部屋の温度計を見た。
「四十度だと!?」
「おいおい!どこか故障したのか!」
「なあ…あれ」
騎士が急激な温度変化に慌てふためく中、一人の騎士が男の方を指差した。
すると驚くことに男がくわえていた煙草の火が勢いを増して男の顔ほどの大きさになっていてた。
「そんなにこの部屋が暑いのか?」
「お前、何をしているんだ!」
「テメェらと過ごした時間、結構、楽しかったよ。でも、あめぇなぁ」
男が座っていた床から火の手が上がる。
「すぐに水属性魔法で鎮火を!」
「やってるけど出ないんだ!」
「なに!?」
「じゃあな」
「…脱獄だ!!」
男が座っていた床は燃えきり男は飛空艇の外に落ちた。
そして男は飛空艇に乗っている騎士にバレないよう下を飛んでいた竜の背中に着地した。
「ありがとうございます王子」
「ずいぶんと手こずっていたようじゃな」
「それで我の任務はどのような」
「この島に行き暴れてこい。気をつけろよ」
男はジュダからバツ印が付いた地図を渡された。
「承りました。ジュダ様も気をつけて」
男が起こしたクーデターとはサルディア事変のことであった。
つまり、男はジュダの同胞である。
男は収納箱から取り出した召喚石を割って竜を出しそれに乗ってある島に向かった。
もうおわかりだと思いますが第五章のラスボスと呼べる者はジュダの同胞です!
それではまた次の話で!