7話 サンドリア防衛戦前編
タイトルどおりサンドリアで防衛戦が始まります!
いつも通りヤマトが無双していきます。
依頼の終了報告して、リリムさんの家に戻ってきた数時間後にヤマト達が帰ってきた。
個別に戻ってきた様子から、途中で別行動を取っていたのかな?
「お帰りなさい!師匠」
「ちゃんと生きてたか。良かった良かった」
「何が『良かった良かった』ですか…。他に言うことないんですか!」
戻ってきて早々うるさいなぁ。
まあ、それぐらいの元気があるってことか。
「怠らず精進するように」
「そういうの求めてません…」
じゃあ、何がほしいんだよ。
とりあえずそんな事は置いといて。
「師匠、例のヤツ」
「ああ、ティナのステータスじゃな。ほい」
ギルドのカウンターの横にはギルド登録する際に使用した魔具が据え付けてある。
故に登録をした時のように手を置けばステータスの確認ができる。
受付嬢を通さずに自分で行うのでティナが魔族であることがバレないので便利だ。
「これがその紙」
「ありがとさん。何で震えてるんだ?」
「気のせい」
絶対何かあるな。
ポイントが二十で攻撃力が三百、防御力が三百五十、魔力が六百になっている。
魔法が十個使えるようになっているし言語理解が発動しているじゃないか。
「もう見終わったじゃろ?ティナにまだ見せてないんじゃ。そろそろ返してくれんか?」
何でそんなに焦ってるんだ?
まあ、良いけど。
「ちょっと待て…。魔法でスキルが一つだけ消されているぞ」
「げっ!?」
悪いが隠していた時点で問答無用で解除する!
脅えてた原因はこれかマジかよ…。
隠されていたスキルを見て驚愕した。
絶対に発動してほしくなかったスキルが発動したからだ。
「おい、師匠…。頭出して歯を食いしばれ!」
「嫌だ!お主、儂に拳骨を落とす気じゃろ!」
「当たり前だ!」
リリムさんは拳骨の衝撃で地面にうつ伏せになる
私は師匠の持っていた紙を横取りして確認した。
「師匠、この飛翔ってスキルなんですか?」
「飛翔というのはな竜人や鳥人等の飛行機能を持つ種族が発動できる名前の通り飛べるようになるスキルだ」
「何か問題でも?」
ヒルデが話に入ってきた。
ヒルデは、半分竜人だから飛翔に食いついたのだろう。
興味ないので訊いたことはないが竜で移動しているだけでヒルデも使えると思う。
「大ありだ!魔族も飛翔が発動できるんだよ!」
俺がずっと心配していた事が現実になってしまった。
魔族の翼ってかなり特徴的だから誰でも見抜けるっちゃあ見抜けるんだよなぁ。
「ティナ、マント取って背中をこっちに向けろ」
「とうとう発情しましたか!」
「するか!」
話の流れから背中に翼が生えていないか確認するためだと理解する事ができないのか?
「ほんとだ翼が生えてる!」
ティナの背中には小さな黒い翼が生えていた。
正直、これで飛べるのか疑いたくなる。
「ティナちゃん、ちょっとだけ飛んでみて」
「はい!」
返事をしてみたが飛べば良いのかわからないな。
魔法も出すつもりでやってみよう。
「うーん…」
少しずつであるがティナの体が浮いてきた。
「本当に飛んでる!」
ジャックさんに言われるまで気づかなかった。
私の体は宙に浮いていた。
「やったー!飛べたー!」
「喜ぶな!」
「ヤマト、そんなに怒らなくても良いじゃない」
いや、怒るに決まっている。
これからその黒い翼をどう隠していったら良いか考えなければならないからな。
とりあえずは、
「封印するから降りてこい」
「やだ!やだ!」
「降りないなら破門だ」
「はい、直ぐに降ります!」
封印すると言ってもスキルを発動できなくするだけだ。
魔法能力封じを使えば対象者のスキルを一つだけ封印することができる。
「茶番も終わったのでお前さん達に言いたいことがある」
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「儂のせい」
「「「わかってるなら自分で言うな!」」」
また、ヤマト達の言葉が重なった。
スゴく仲が良いなこの人達。
「これからサンドリアに向かう」
「何で」
ティナの武器も防具もそろえたのになぜ今更サンドリアに用があるんだ?
まさか『忘れもんしたから一緒に取りに来い』とか言うんじゃないだろうなぁ。
「緊急クエスト『サンドリア防衛戦』じゃ」
防衛戦だと色んな意味でヤバい!
ジャックがでしゃばる。
「騎士の出番きたー!」
「『防衛戦』ってなんですか?」
そういえば緊急クエストについては説明してなかったな。
「大規模の魔物の軍勢が攻めてくることだ。要するに対象地域の存亡を決めるクエストってこと」
「大変じゃないですか!」
「うむ、儂の転移の穴に入れ」
私達はリリムさんの転移の穴を使ってサンドリアのギルド内部にやってきた。
「随分と慌ただしい光景だな」
「それもそうだよ。僕が知る限りサンドリアに魔物の軍勢は一回も攻めてきてないんだ」
「魔物に襲われていない街なんて珍しいな」
ジャックは冒険家派遣会社の社長だからよく防衛戦にも冒険家を派遣しているのだろう。
「そんな事より少なくないか?」
「師匠、この数でも少ない方なんですか?」
ギルド内にはざっと百人ほどの冒険者や衛兵などがいるがヒルデの言う通りだ。
この人数は、
「少ないな。魔物にもよるが二倍は必要だ。普通は自警団も参加するのだが…この街は居ないようだな」
二倍!そんな数の冒険者どうやって集めるの!
でもよく考えたらこの人達って、
「師匠達だけで充分でしょ」
「当然」
わかっていたけど頼りになる。
その言葉だけで荷が軽くなります。
「それでは緊急会議を始めます!」
中央の台に受付嬢が立った。
どうやらこれから緊急会議が始めるらしい。
「えっとまずは魔物の軍勢を目撃した冒険者からお話をさせていただきます」
「私が魔物の軍勢を見たのは先日です。おそらくどこかの魔王の幹部クラスの者が率いているのかと思います。それらしき魔物が居ましたので」
「魔王の幹部…」
「大丈夫だ。おそらくお前の父親を殺した奴ではないだろう」
ティナの父親は魔王で家臣達に殺されてるから魔王の幹部というワードに食いつくのは無理もない。
「大丈夫だよ。万が一、何かあったら僕が君を守ってやるから」
「そうだよ!あたい達が守ってみせるよ!」
二人はティナの事を思って言っているが万が一など絶対に起こさせはしない!
師として絶対にティナには指一本触れさせん!
「みなさん、ありがとうございます」
「話は変わりますがこの中で序列が一番、高い人はどなたか判りますでしょうか?」
序列が一番、高い人って師匠だよね。
さて、ここは胸を張って名乗り上げて皆さんを安心させましょう!
…で、その肝心の師匠が見当たらないけど緊張してトイレにでも行ったの?
「離せ師匠!この流れは絶対に『司令塔として動け』っつう流れだろ!面倒くさい!」
あっ、ギルドの入り口の前でリリムさんと揉め事をしていた。
ああ、なるほどそれは師匠が嫌いな内容ですね。
「こんな時だけ師匠と言うな!さっさと名乗り出やんか!それと離さん!お主の嫌がる顔が見たいからな!」
「さっきの仕返しか!良い性格してんな!」
「師匠ってとことん面倒くさい事は嫌いですよね」
「確かに昔からヤマトの面倒くさがりは尋常ではなかったね」
「例えば?」
「僕に長距離のお使いを押しつけた」
うわっ、それは酷い。
それと長距離のお使いを頼むリリムさんも酷い。
「受付嬢さん、ここに序列一位のヤマト・ツキカゲが居ますよ!」
「本当ですか!?それではヤマト様、冒険家の方々の指揮をお願いします!」
戦闘に出るのは良いがこんな大勢の冒険家の指揮をするんて最悪の状況だ。
何故なら自分だけに集中できないからだ。
逃げてリリムに押しつけようとしたのに。
「頼んだぞー!ヤマト!」
「これなら安心だ!」
ギルド内の冒険者からヤマトに声援や拍手が贈られる。
それに対してヤマトは不機嫌そうな顔をしながら考え事をしている。
自分が如何に楽して魔物を倒せる作戦を考えているのだ。
「師匠ー!がんばってくださーい!」
最悪なことに指揮をとることになった。
俺は作戦を伝えるために台の上に立った。
「今、考えている作戦を実行してみる。だが、その前に聞きたいことがある」
「何でしょうか?」
「魔物の軍勢は第何波まであるか東西南北どこから出現するかそれとどんな魔物が組まれているか聞きたい」
「出現する場所は北門の方角です。それ以外はわかりません」
「わかった。とりあえず北門に移動する」
俺は北門の地形を知るために冒険家達と一緒に北門に移動した。
北門は平原に大きな石や木が少しあるだけである。
これなら作戦が実行できる。
「作戦って言っても魔物の軍勢をこれだけの冒険家で相手できるのか?」
ヒルデが疑心暗鬼になりながら質問してきた。
大丈夫、この戦方なら必ず勝てる。
悪知恵を働かせて練り上げた作戦だからな。
魔物にとっては気分の悪い作戦だろう。
「任せておけ必ず成功する。ヒルデはシルビィアで偵察にいってくれ」
「その言葉、信じるよ。そんじゃ行ってくる」
「で、どんな作戦をするんだ」
ジャックはやたら張り切ってるな。
それなら、そのやる気を利用させてもらう。
作品を伝えてジャックには冒険家の半分を指揮してもらおう。
「ここは要塞都市だからこの砦と目の前に広がるこのだだっ広い平原を使う」
「どう使うんだい」
「砦の前に魔法で壁を作り、その壁の後ろに堀を作るそしてその堀の中には杭を打ち込み平原にはトラップ魔法を仕掛け第一波はこれで防ぐ」
「なかなか良い作戦だね」
この様子なら快く引き受けてくれる筈だ。
「もちろん、砦の上から魔法などで攻撃を行う。何ならジャック、半分の冒険者を指揮してくれないか?その分、目を配れるからさ」
「承った!」
はい、これで半分だけ楽ができます。
「師匠は氷属性魔法の詠唱、準備を頼む」
「トラップ魔法に引っ掛かった魔物を動けぬよう凍らすんじゃな」
「正解!」
トラップ魔法に引っ掛かった魔物は流石に魔力の無駄になるから魔法での攻撃は行わない。
第一波が収まった時点で凍らせて倒す。
ついでに第二波も凍らせれば上々だ。
これが第一波の作戦。
作戦の準備をしているうちにヒルデが偵察から戻ってきた。
ちなみにヒルデが戻ってくる間に壁は完成した。
後は堀を掘って杭を仕込むだけ。
「どんな感じだった?」
「第二波まであったよ。それと第一波に幹部の直々の手下と思う魔物が三体、第二波には魔王の幹部と思われる魔物が一体、第一波は約二千体第二波はその約三倍の約六千体が居たよ」
それぐらいの数なら問題はないが少しこの作戦を行うために訊かなければならないことがある。
「飛行する魔物は居たか?」
「居たらシルビィアで撃墜させてるよ。それと残り三十分で平原に出現するよ」
「あの~師匠、私の役目は何でしょうか?」
師匠の横で話は聞いていて理解できたが少し気になる点がある。
私の役目はなんだろう?
魔法を撃っても倒せないよ。
「俺の近くで戦い方の勉強」
それなら良かった。
仮に何かの作戦に組み込まれていたら足を引っ張るだけになるもんね。
「ヤマトさん、壁と堀の設置は終わりました」
「ご苦労さん」
「こっちも終わりました」
後はトラップ魔法を設置するだけだな。
「よし!さっさとトラップ魔法の設置しますか!」
「こんなに広いのに三十分までに間に合うの?」
「ヤマトなら可能よ。一瞬で終わる」
一瞬で終わる?
そんな魔法でもあるのかな?
どんな魔法を発動させるのか考えている間に平原全体が光り出した!
「何なのこれ!」
そうとうパニクってるな。
とりあえず説明するか。
後ろの冒険家も騒ぎだしているし。
「今光ってるのは全部トラップ魔法だ。何で平原全体が光ってるのかというと拡散魔法を一つをトラップ魔法に組み込んだからだ。要するに複製して展開してるだけ」
「トラップ魔法ってこんな使い方できるんですか?」
「できる。てか、常識だろ」
「常識だと思ってるのはヤマトさんだけだろ!」
何でティナ以外の冒険家に突っ込まれなきゃならないんだ?
おまえ達にだってできると思うんだけどな。
三十分経つとヒルデの予想通り魔物の軍勢が平原に進軍してきた。
「街の中には絶対に魔物は入れるなよ!それと、第二波は俺達五人だけで受け持つ!お前達は死なない程度に魔力を存分に使ってくれ!」
「了解!」
「それでは戦闘を開始する!攻撃開始!」
「おおぉぉぉぉ!」
師匠の号令と同時に冒険者達は自分を鼓舞するかのように声を上げて魔物の軍勢に魔法の一斉射撃を開始した。
そういえば『第二波は俺達五人だけで受け持つ』って師匠言ってたけど私は入ってないよね?
特になし!
それではまた次の話で!